「政民合同會議」2017年2月8日(水) 講師/古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員・麗澤大学特別教授

2017年02月14日
  

「トランプ新大統領はアメリカをどう変えるか、そして日米関係は?」

 

 トランプ政権が誕生した最大要因はオバマ政治への反動だといえよう。アメリカらしさをなくしていく超リベラル政策への反発、行き過ぎたグローバル化への反発が激しかった。国際情勢の悪化も背景にある。経済成長よりも環境保護を優先し、“皆平等”を掲げ、「一つのアメリカ」をうたったオバマ政権下でかえって人種間の対立が深まったのは皮肉だ。中国の南シナ海への進出、ロシアのクリミア併合など、紛争や戦争の危険が増大したのはオバマ政権のせいだという思いが米国民の間に広がっていた。

 トランプ新大統領の政策はオバマ政権の完全否定だ。オバマケアの撤廃、不法移民に寛容な聖域都市への規制、違法難民の取り締まりのために大統領令を連発するのもすべてオバマ政策への反発とその大逆転に他ならない。

 入国禁止を米国メディアは “非人道的”と批判するが、そもそもその対象の7カ国は「テロ懸念国」としてオバマ政権からも危険視されていた。その種の入国制限は対テロ防止策としてオバマ政権下でもなされていた。米国内の世論調査でも実際はこのトランプ政策は賛成が反対を圧倒的に上回る。

 米国の主要メディアは伝統的に民主党支持が多く、それらメディアの論調はトランプ政権への憎しみ、怒り、悔しさが滲み出ている。対してトランプはメディアの攻勢に一歩も引く気配はない。日本での報道は、だいたいはその米国主要メディアの後追いだといえる。オバマ政権の8年間に、米国内では共和党支持層が伸び、民主党=リベラル派は少数派になっていたが、このことに日本のメディアは一切触れてこなかった。

 トランプ政権は対外的には、“力による平和”を目指し、軍事力の行使も辞さない姿勢を示す。孤立主義でもないが、世界の警察官にもならず、選別的な対外介入策だといえよう。対中強硬姿勢を取るトランプ政権下で米中が対立を深めれば深めるほど日米同盟の重要性が増し、日本の安全保障にとっては有利となるだろう。

 米国の歴代政権を報道し続け、米国の様々な事情に精通する古森氏は、「日本のメディアはトランプの片言隻句に過剰に反応している。トランプ政権の誕生を “チャンス”と捉えるべき」「ジャーナリストは謙虚であるべき」と述べ、メディアの在り方を改めて説いた。当日はマスコミ関係者も多数出席し、その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。