
「時局講演会」
ついに自民党幹事長・森山裕氏が語った——いま日本が直面するコメ問題、消費税、そして国家の未来。会場の空気は熱気に包まれ、参議院選挙直前の緊張感が漂う中、幹事長は静かに、しかし力強く口を開いた。
「今こそ、政治の真価が問われる時であります」。冒頭から森山氏は政治家としての原点と覚悟を語った。昭和50年に鹿児島市議に初当選して以来、半世紀以上の政治人生を振り返り、「正直な政治」を貫くことの難しさと意義を滲ませた。
特に印象的だったのは**「事前防災」の話**である。平成5年の鹿児島豪雨を契機に防災政策に取り組み、大災害を未然に防いだ経験は、「政治の使命は国民の命を守ることに尽きる」という信念を植え付けたという。その精神は今も変わらず、国家財政やコメ政策に向き合う姿勢に表れている。
コメ問題については、氏は極めて冷静かつ現実的な見方を示した。「備蓄米は国家の財産。今回、一定の価格で市場に放出したが、農家・消費者双方にとって納得のいく形を模索せねばならない」と語り、品質維持の技術力を誇りに思う一方で、「平地と中山間地の政策は分けて考えるべきだ」と新たな農政の在り方を提示した。
さらに「広い圃場で生産コストを抑えつつ、棚田の国土保全機能を守る政策が必要」と述べ、未来志向のコメ戦略に意欲を見せた。食料安全保障の観点からも、日本は「国内生産を柱に、信頼できる同盟国との調達ルートを堅持すべきだ」と強調。ロシア・ウクライナ戦争を例に、農政と外交の密接な関係を鋭く指摘した場面では聴衆の頷きが広がった。
一方、消費税に関しては「今の財政状況で減税は無責任」と断言。「国債依存を減らし、未来の子どもたちにツケを残さない」とする氏の姿勢は、耳触りの良いポピュリズムとは一線を画す。「歳出改革にも取り組むが、社会保障の財源は必要不可欠。格付け低下や市場の信頼失墜は絶対に避けねばならない」と、イギリスのトラス政権の失敗例を挙げ警鐘を鳴らした。
参院選に向けても、「自民党は堂々と現実を語る。消費税下げを争点にする考えはない」と明言。むしろ「成長と分配の好循環を確かなものにし、物価高に負けない賃金を実現する」ことが政権の責任だとした。
外交では、日中関係の実態に踏み込み、「尖閣問題、反日教育、水産物や牛肉問題など、正面から中国側に意見を述べた」と明かした。「媚びる必要はない。事実を伝え、国益を守る交渉を続ける」との毅然たる姿勢は聴衆の胸を打った。
地方創生についても熱い言葉が飛び出した。「東京一極集中は難題だが、地方から新しい社会を築く努力は全国各地で始まっている」。大学の地方展開や移住促進を一歩一歩進め、「地域の力が日本の未来を支える」との信念を語った。
森山氏の語りから滲んだのは、国民を信じ、真実を語り抜く政治家の矜持である。問題を隠さず、耳障りの良い言葉に流されず、未来世代に誇れる政策を貫こうとする誠実な姿勢だった。「今こそ政治の責任を果たさねばならない」——その一言に込められた覚悟は、聴衆の心を深く揺さぶった。
講演の最後、森山氏はこう語った。「政治は一人で成すものではない。国民と共に歩むことこそ、真の政治の使命である」。とりわけ若者や地方の未来に強い思いを寄せ、「地方の中にこそ、日本再生の芽がある。皆さん一人ひとりの行動が新しい日本を創る」と呼びかけた。拍手の嵐が起こり、参加者は皆、今この国が抱える難題に、ともに立ち向かう覚悟を新たにして会場を後にした——森山氏の言葉が、深く心に刻まれた瞬間だった。