「全人代(国会)を終えた4年目の習近平政権」
習近平体制以降、中国では言論統制が強化される一方だ。中国の国会議員が唯一自由に発言することが許される場であった全人代も例外ではない。これまでは戸籍制度や不動産価格の高騰など、国会議員が忌憚なく意見をぶつけてきた全人代だが、今年は全メディアに政府との協調を要請されるなど厳重なメディア戒厳令が敷かれ、面白味の欠けるものとなった。中国では憲法によって表現の自由は保障されているはずだが、“党が国家を指導する”の憲法前文が凌駕し、いまの中国に言論の自由は失われ、まるで毛沢東時代に回帰したかのようだ。主要メディアは確信犯的に誤植と見せかけ、習近平を“中国最後の指導者”と報道するなど、ある種覚悟を持って政権批判を行う報道関係者も出現した。毛沢東の後継者と自負する習近平総書記と鄧小平路線を踏襲したい李克強首相の、極めて微妙な関係も、かつての中国ではありえなかった。江沢民、胡錦濤が闘病中という現状下、ますます習近平の独裁化が進む。
近藤氏は、習近平の後継者問題、抵抗勢力、G20、APECでの李克強の行動に秘められた動きの意味、習近平と李克強との駆け引き、李克強の権限を貶めていく経緯などについて詳細に分析。このほか、次期中国大使に起用されたチャイナスクール出身で駐トルコ大使の横井裕氏のプロフィール、氏とのエピソードについても言及し、「トルコから中国を見る経験をしてきた、いわば中国的な視点を身に付けた“遅れてきたエース”の起用により、今後の日中関係の発展に期待したい」と語った。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。