「アジア会議」2018年10月29日(月) 講師/興梠一郎 神田外語大学教授

2018年10月29日
  

『習近平「一強」体制下の中国』

 

 中国のすべての問題は日中関係、米中関係然り、すべて一強体制に端を発している。習近平は、江沢民VS胡錦涛という先代の2トップが対立している合間に虎退治で権力を確立し、名実ともに恐怖政治でトップに昇りつめた。鄧小平ですら党規約に理論しか言及できなかったのに対し、『習近平思想』として党規約に明記し、合法的に一強体制を築き上げたのは画期的な出来事だった。

 しかし、「中国民族の偉大なる復興」を目指し、一帯一路を掲げる中国に対し、米国のみならず、欧州、豪、インドなどで中国脅威論が巻き起こっている。「偉大なる復興」は中国内でも批判され、米国を本気にさせるに至った。一帯一路は、巨大債務に陥る可能性のある参加国の間でも見直しの動きが出ている。EU諸国も警戒感を強めている。

 中国に友好的だったドイツが、中国政府による議員買収を発端に、技術流出への危機感を募らせたのをはじめ、欧米では法制化によって中国による技術流出を食い止めようと動きだした。フランスも中国資本が農地を買収しようとする動きに危機感を持ち、英仏は南シナ海問題に関与し始めた。

 「中国製造2025」を何としても達成したい中国。欧米での技術流出を阻止するための法制化が進み、身動きが取れなくなったため、イスラエルや日本などにアプローチし始めている。最近、中国が日中関係の改善に積極的なのは、そうした背景があるからだろう。今後、日本でも欧米のように技術流出や中国資本による買収に対する警戒心が高まる可能性がある。

 興梠氏は、中国情勢、人事を分析する材料として中国『人民日報』に掲載される写真の配置や大きさを挙げた。「中国の現実を正確に把握するには、“親中”“反中”“左翼”“右翼”といった色分けをしないほうがよい。イデオロギーではなく現実を直視すべきである」「しがらみがなく感情移入が少ない欧米人のほうが中国に対して率直な見方をしている」「リークされる意図が曖昧な“機密情報”より、むしろ中国の官庁の公式HPの方が役に立つ」など、中国分析の楽しみ方についても語った。