4月23日「アジア安保会議」講師/古森 義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員

2024年04月23日
  

アメリカ大統領選の現地最新報告

 4月上旬の米国の世論調査によれば、接戦7州でトランプ氏がいずれも僅差でリード。前回、前々回の大統領選でも僅差で勝敗が決定していたことを考慮すれば、現状のまま大統領選を迎えればトランプ氏優位と言える。統治能力や経済政策への不満からバイデン現大統領に不満を持つ民主党支持者は多く、現時点で副大統領候補も決まっていない。

米国主要メディアの多くが民主党寄りで、バイデン大統領の息子ハンター・バイデン氏の不正疑惑は決して報じないなど、民主党に関する悪い情報や出来事は大々的に報じない、ときには無視する傾向がある。日本の米国政治報道はそうした民主党寄りのメディアに依るものであり、日本の報道に頼ると情勢を見誤る。これは11980年に二期目を目指す当時現職のカーター大統領をレーガンが大差で勝利したときに痛感したことだ。

 米国内のLGBTや中絶、不法移民などを巡る保守とリベラルの対立は、この数十年の中でも最も険悪になっている。バイデン政権の寛容政策が破綻を来たしているのに対し、トランプ氏が内政で取り組もうとしているのは規制緩和と不法移民の取り締まり強化だ。

 トランプ氏の発言が日々大手メディアに針小棒大に取り上げられ、四つの裁判を抱えても、そのたびにトランプ氏の支持率、寄付金は増えている。同氏がこれだけ絶大な人気を誇るのは、米国の保守主義を体現する強烈な個性もあるが、オバマ政権が推進した行き過ぎたリベラリズムへの反発が大きい。一方、民主党の岩盤支持層と反トランプ勢力、郵便投票次第でバイデン大統領にも利はある。現在進んでいる裁判でトランプ氏の有罪が確定すれば、トランプ支持層は揺るがなくとも無党派層に影響する恐れはある。

 ワシントンにオフィスを構え、日米を行き来し、40年以上にわたって米大統領選を取材してきた古森氏。バイデン政権とトランプ政権時代の国防費の比較、民主党か共和党で180度見方が変わり、トランプ支持層には実際には良識ある若者や女性も多いことなどに言及。またトランプ氏が掲げる政策についても、「日米同盟堅持に変わりはなく、米国第一主義ではあるが、孤立主義ではない。『軍事力を重んじ、何をしでかすかわからないマッドマン』と思わせることが抑止力になるとの考えを持っている」と解説した。