中国の対日最大目標は領土と領海の収奪にある。具体的には尖閣諸島を自国領土とすることだ。最近、中国筋から2011年6月17日に海外の華僑が中心となって1000艘規模の船団が尖閣諸島を包囲し、上陸・敢行するとの情報がまことしやかに伝わって来る。
2010年7月、アメリカ、カナダ、台湾、香港、マカオ在住の華僑がワシントン、ニューヨークで一堂に会し、尖閣上陸に気勢を上げた。これらの規模を考えれば民間団体だけで容易に行えるものではない。中国政府が後押しする官製デモと同様、人民解放軍の主導であることは明白だ。
今年1月2日、香港で尖閣諸島(中国名:釣魚島)の保全を訴える「世界華人保釣連盟」が結成された。台湾中華保釣協会秘書長の黄錫麟氏が全世界の華人に保釣活動に参加するよう呼びかけ、氏主導のもと、本年5月~6月に客船を使って尖閣諸島周辺を取り囲むと息巻いている。黄氏らは6月17日を「民間魚釣島の日」に制定すると発表した。
高まる日本人の反中感情
これまで、中国の対日強硬政策には歴史認識問題や靖国参拝問題があった。公的教育を通じて自国の正しい歴史を学ばず成人した日本人には、中国が喧伝する南京大虐殺事件や旧日本軍の中国侵略説などに対して反論の余地がなかった。しかし尖閣諸島問題は、歴史的にみてもわが国固有の領土であることは明白で、いまその領土、資源、主権が中国に侵されようとしている。そのことにいまや若者やサラリーマンをはじめとした多くの日本人が危機感を強めている。
北方領土問題では民主党政権になり、ロシア側がこれまでにない調子で中国、韓国を巻き込んだ経済特別区域にすると発表した。一方、竹島は事実上韓国領土として定着しつつある。わが国周辺の島々が隣国から狙われている。
わが国経済が停滞し、格差社会や雇用不安が増大する中で自分たちの将来への危機感が芽生えている。中国の度重なる反日デモには多くの国民が嫌悪感を強めている。しかし、中国側には日本を諸悪の根源と扇動し、人民のいらだちを「反日」にぶつけざるを得ないお家の事情がある。
中国の反日デモは人民統合策
中国国内で起こる反日デモは、格差拡大や政治の腐敗に対する国民不満のはけ口になっているのが実情だ。多くの若者は雇用不安や高給役人たちの汚職と腐敗に対する反発を強めている。中国政府や関係者らも天安門事件以降、一党独裁政権の維持に危機感を持ってきた。しかも人民を直撃するインフレはさらなる不満を爆発させている。インフレを打開するには賃金を上げるしかない。賃金上昇は生産原価にはね返り、製造業が逃げていく。すでに中国各地で年間8万件以上起こっている暴動の根源は賃金上昇とインフレも原因だ。中国政府が人民統合を図る政策として愛国主義を掲げ、尖閣を攻撃目標として生き残りを賭けている。
どこかのコマーシャルに中国人タレントが「嘘でも嬉しい」という表現があったが、嘘は中国人の生活の中に溶け込んだ価値観である。それを外交にまで持ち込み、「尖閣は中国固有の領土」だと言い出すのは国民性である。中国の愛国主義教育は愛党教育であり、人民統合を図る手段に他ならない。江沢民元総書記は1998年8月、「日本への歴史問題を終始強調し、永遠に言い続けるべきだ」と指示し、国民の不満を反日にぶつけて来た。
嘘で自らの首を絞める中国
中国は日本、台湾のみならず、南シナ海などの領土を主張して来たのは嘘と泥棒を美化する国民性にあるからだ。このような外交政策を続ければ世界から孤立するのみならず、まもなく自らの首を絞めることになろう。現に中国は世界から資源を買い漁り、バラまいて自らが住めない環境汚染を生み出しているが、自業自得だ。
中国はこれまでなんとも思ってこなかった地域の領海や領土を突然「わが国固有の領土」と主張し、周辺諸国の驚きは顕著だ。それらはほとんど根拠のないもので、嘘も何百回と繰り返すと本当のように思えてくる。嘘がばれたらまた新しい嘘を持ち出すお国柄だが、明白な嘘が一人歩きすると真実が見えなくなり、嘘が本家になることもある。
石垣市議会は昨年末、「1月14日を尖閣諸島開拓日」に制定した。それに対し、中国共産党機関紙・人民日報は「1月14日は倭国(日本)が釣魚島(尖閣)を盗んだ日」にしようと社説に掲載。さらに「釣魚島と周辺の島々は昔から中国の領土であり、尖閣は日本軍国主義の横暴で奪い取られたものだ」と世界に呼びかけている。
尖閣は石油の宝庫
中国が尖閣は固有の領土であると主張するのであればその根拠を説明すべきだ。中国・清の乾隆帝(1711年~99年)の勅命で編纂された地理書「大清一統志」に台湾の北東端に基隆市がある。その近くに尖閣諸島があるので、これらは台湾に属すると勝手に主張している。
中国が指摘する台湾の基隆市から尖閣は300キロも離れており、清代から「台湾の一部ではない」と認識されていたのは既成の事実である。これは拓殖大学の下條正男氏(日本史)の調査で明らかとなる。下條氏は「尖閣諸島が台湾の一部という事実はこれまで一度もない」と指摘した。
1953年1月8日付人民日報の記事によると、「琉球群島には尖閣諸島が含まれる」と記載されている。つまり、中国は尖閣諸島が沖縄の一部であると認めていた。
尖閣問題を先送りし続けた通産省の大罪
尖閣に関する資料によれば、1960年代まで中国と台湾の教科書には尖閣は琉球領と明記されている。明治18年(1885)年に同島が無人島であり、清国統治の事実がないことを確認して明治28(1895)年1月に琉球領として組み入れた。それまで中国が尖閣を琉球の一部として認知しており、一度も自国領として主張した記録もない。
しかし1968年、国連のECAFE(アジア極東経済委員会)が尖閣諸島周辺海域で調査を行った。翌69年、尖閣は漁業、鉱物資源、石油など豊富な資源の宝庫であると発表したので、突然中国は領土の主張を始めた。それ以来、軍事目的、資源探査という目的で尖閣近海で勝手に情報収集を続けて来た。
わが国政府は、本来であれば、将来の紛争を避けるため、尖閣諸島内に観測所や水産加工場などで島を実効支配すべきであった。これまで島の所有者である古賀氏らのかまぼこ工場はあったが、日本政府は一切タッチしてこなかった。また試掘権を保有する東洋石油が何度も通産省に試掘申請を行ったが、いずれも却下されてきた。
尖閣は竹島の二の舞か
中国ネットを中心に騒がれている「中華保釣協会」主導による尖閣突入計画は、実際に行われるのであろうか。1月20日には香港でも協会が結成され、尖閣に上陸すると気勢を上げている。それに対してわが国の防御体制はどうなっているのか。
関係筋の話によると尖閣に塔を建てた大日本青年社が200艘の船団をチャーターして中国尖閣上陸を阻止すると外務省に申し入れたが、断られたと聞く。中国が上陸する「千船保釣」宣言は事実上日中戦争を始める第一段階だとは、中国関係筋の話だ。
「日本の漁船が尖閣に近付けば要注意船舶として記録され、船の持ち主も要注意人物としてチェックされる」から島には「近寄るな」というのが、海上保安庁の態度である。石垣の漁師が尖閣に上陸したら海上保安官に連行され長時間拘束のうえ始末書を書かされると聞く。海上保安庁は先の中国抗議船事件で神経を尖らせている。次は6月17日、もし1000艘が尖閣周辺にやって来たら島を守れるのか。
早急な憲法改正を
既に中国の漁船はわが国の領海である尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に体当たりしたではないか。他国の領海に突入し、巡視船に体当たりすることは事実上の武力行使であり、他国ならすでに戦争態勢に入ったと見る。中国は尖閣を大量の漁船で包囲、上陸し、建造物を建てたり、人間を住まわせるなど事実上の実効支配が目標だ。わが国の外交不在、弱腰外交が続けば、尖閣が韓国に実効支配されている竹島の二の舞になりかねない。
しかし、憲法改正によってわが国自衛隊が自由に国防を担うようになれば、中国軍と対等以上に対峙できよう。法的な環境が整えば、完成間近の中国空母や艦船も海上自衛隊が得意とする対艦ミサイル攻撃によってピンポイント破壊攻撃が可能になる。そうなれば東シナ海で中国は身動きできなくなろう。核武装とともに、早急な憲法改正議論が進めば尖閣周辺は平和な海に戻ろう。平和と繁栄は軍事力の均衡によって成り立つものに他ならない。
次回は3月10日(木)です。