山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     中国への見方を変える

2011年02月17日

前回の当コラム「世界に羽ばたけ中小企業」では、国内市場に限界が見え始めた昨今、中小企業がアジア成長市場への進出を検討すべきではないかと述べた。海外ビジネスの絶対条件は、進出先の政治的安定だ。国内ビジネスと異なり、他国への経済交流の成否は、わが国との国防・外交関係が健全であるか否かにかかっている。

日台間の経済関係を成功させるには、共通の仮想敵国である中国の軍事拡大にどう対応するかが最重要課題だ。それには、日台間で若い議員を中心とする次世代日台安全会議の創設が肝要である。次世代を担う若い議員らの正義感と国家愛に期待するとともに、周辺諸国との国防安全問題を真剣に取り組んでもらいたい。

昨年は尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりを敢行し、挑発する事件があった。これは日中間の武力衝突につながる第一歩との懸念が拡がりを見せている。これを機会に憲法改正と核問題を国民の声として政治家に要請する時が来たようだ。

中国の懐柔策に高まる台湾住民の警戒感

中国は2012年までに台湾統一を戦略目標に掲げて来た。中国は台湾メディアの大勢を買収もしくは資本投下し、台湾民衆に違和感なく統一を受け入れられるイメージと大甘経済政策を続けている。

中台のECFA(経済協力枠組み協議)とCEPA(経済貿易緊密化協定)はやがて台湾の主権と独立を脅かす存在になるとの見方が有力だ。すべてが中国市場を舞台に台湾が多大な経済的恩恵を受ける中で台湾の中国化が侵食されている。たとえば2010年の中国の対台湾製品買い付け成約額は計200億ドル(約1兆7千億円)に達した。台湾経済がこれ以上中国依存を強めれば、さらに「一つの中国」に溶解していこう。

様々な意見が飛び交っているが、二つの考え方がある。一つは、中国側の狙いは経済的な恩恵を与えることで中台統一への警戒感を和らげ、台湾経済はやがて中国なしでは成り立たない時点を見計って、統一を促進する。もう一つは、台湾人はたとえ経済で恩恵を受けても中国とは兄弟にはならない。台湾の「主権独立」「主権在民」は既に李登輝時代に達成されている。台湾の世論調査は「現状維持」が依然87%と高い数値を示している。

日台政治家に求められる教養

中国共産党はあらゆる手段を用いて2012年迄に台湾を統一するとの情報が飛び交ってきたが、これは中国側の考え方だ。台湾人は経済の恩恵と引き換えに台湾を中国に売り渡すことはしない。台湾国民党の連戦氏らの中台統一推進派とは異なり、馬英九総統はあくまで台湾国民党主導による「一つの中国」が本音で、これには中国は困っている。馬氏にとって台湾は一つの中国による地域であって台湾はあくまで国民党による中華民国の領土に他ならない。

一方、野党・民進党も党内紛争ばかりに明け暮れて、だらしがない。民進党議員らは思考と教養に欠け個利個略の発想しか見えてこない。これはわが国の政党政治にも言えることだが、国のあるべき姿というビジョンを持ち合わせておらず、これでは台湾国の未来は不安定になるばかりだ。前回の五大市長選の投票数では民進党が国民党を上回った。民進党議員は国家を代表する議員としての資質を高めてもらいたい。

政治は言葉が生命である

教養とは文化、歴史、思想、科学に至るまで、あらゆる情報・知識を一通り身に付けることだ。新聞で自分に必要な個所ばかり目にする人はリーダーとしての資格に欠けると言われる。最近の企業経営者も自らのビジネス以外に日本を取り巻く国際情勢に学び教養を高めようとする人が増えているのは、本物でないと生き残れないからだ。

バブル時代に人気を博した経済評論家のほとんどが姿を消している。彼らの多くは経済には詳しいが、政治、文化、歴史、思想、科学など経済以外の分野には全く無知な人たちであった。教養なくして経済の見通しを語るとしたら、経済評論家としての資格が問われよう。

今や日本の危機は国と国民を代表するリーダーの大局観なき教養の衰退である。政治家は日々の雑事に追われて勉強を怠っている。教養なき政治家が発する言語ほど虚しいものはない。政治は言葉が命である。

中共の「米国殲滅」計画

2005年、海外のウェブサイトに掲載された中国共産党、人民解放軍の前国防部長・遅浩田氏の発言が西側諸国に衝撃を与えた。遅浩田氏の発言を要約すると以下の通りだ。

「我々は、台湾、尖閣、南シナ海その他の国々に侵略しても米国が立ちはだかれば、手の打ちようがない。我々の生存空間を増やすには広大な土地と資源を持つアメリカ・カナダ・オーストラリアであり、そこに大量の人民を移植させることだ。それゆえ、中国人民の最大目標は我々の行く手を邪魔する「米国」を殲滅することがわが国の最大目標である。
本来、米国は中華民族が発見したところであるが、コロンブスによって米国は白色人種が占拠することになった。我々は非常手段を使って米国を殲滅し、占領する準備を着々と実行に移していく。もうひとつの中国を建設することで中華民族は安泰だ。この米国を倒すには飛躍的に発展したバイオ技術を使った化学兵器より生物兵器による大規模殺人が有効的だ」

これが人民解放軍国防部長の発言だ。今や人民解放軍は米国を殲滅して米国の利権地域を占領する政策の実行に移っている。

喧伝、展示用に過ぎない国産空母、ステルス戦闘機

しかし現実には人民解放軍の兵器は旧ソ連の旧式兵器が大半で米軍の最新鋭の潜水艦、空母、戦闘機に対して足許にも及ばない。のみならず、海軍力は海上自衛隊よりも劣るのだ。

現在、人民解放軍は2012年習近平主席就任までに自国空母の完成を目指している。中国は空母建造の技術は皆無であり、ウクライナから技術者を招聘している。そして、これはわが国のODAとアジア開発銀行の出資によるものだ。しかし、実際にはこの空母は実戦向けというより、単に中国の存在感を喧伝するための展示用だとの見方が有力だ。

一方、日本のメディアが「国産エンジンを搭載するなど高い技術力が窺える」と報じた『殲20』ステルス機だが、これも外見だけの「展示用」に過ぎず、中国特有の嘘で塗り固められた単なる政治宣伝に過ぎない。別の見方として贋物ステルス機を発表するに及んで、人民解放軍の研究費増額要求との声もある。

中国との付き合いは台湾人を見習え

わが国の中国報道は中国側の発表をそのまま受け入れて報じているが対中情報は誤解と錯覚に陥り易い。それを情報不足の知識人や専門家がさらに誇張して書き立てるので実態とは異なる中国脅威論が増大する。とにかく中国人は嘘に始まり嘘で終わる国民性である。中国情報はすべて嘘であるとの前提で中国と付き合えばちょうどよい。日本人も台湾人と同じように中国人の嘘に合わせた付き合いテクニックを訓練すべきだ。

中国人の嘘を理解したうえでビジネス展開する台湾人は中国にとってしたたかで不気味な存在だ。台湾人は中国人に似ているという人もいるが、半分以上は日本人流だ。台湾は自由と民主主義国家であり、彼らは中国の法と人権無視は絶対許せないと考えている。

こうした台湾人と共通する価値観を尊重しながら日台関係を軸としたアジア戦略は、我々が選択する有効な手段となろう。台湾も中国に傾き過ぎているが、次は民進党から総統が選ばれ、修復すべき段階を迎えていよう。

民間からアジアの新しい流れを創ろう

わが国は政治が機能不全に陥っているが、政治が国防・外交・経済でリーダーシップを取らない限り、国民はどうしたらいいかわからない。そんな日本人の弱みに付け込んで中国の脅威、経済大国、軍事力増大が誇大に喧伝されている。こんなことではわが国がますます衰退していくのは自明の理だ。

政治がだめなら民間の力でアジアの新時代を切り拓いていこう。明治時代は立派な政治家がたくさんいたが、それ以上に国を愛し、国を想う民間人が日本の基礎をつくってきた。民間人の力で新しい流れをアジアでつくるべきだ。今後は民間の力が問われる時代であり、知恵と工夫の時代である。

わが国は国難の時代を迎えているが、若い力ある政治家の発掘とアジアンビジネスでリーダーシップを取れる有能な経済人をたくさん輩出すべきだ。アジア新時代を迎えて有能な政治家がいないわけではない。国家国益を考える政治家に対して叱咤激励する国民の力が必要だ。そんな政治家の登場を期待して止まない。

次回は2月24日(木)です。