2026年2月13日(金)「政民東京會議」講師/兼原 信克 安倍内閣で内閣官房副長官補

2026年02月13日
  

「米中関係と日本」

 本講演では、兼原信克氏が、米中関係の変化と台湾情勢、そして日本の安全保障環境について、歴史的背景と現状を踏まえて解説している。冒頭では、台湾有事が起きた場合、日本が巻き込まれる可能性が高いことが指摘された。米軍が台湾防衛に動けば日本の基地が使用され、与那国島が台湾から百キロしか離れていないため、日本は「武力行使の一歩手前」まで関与せざるを得ない構造にあると説明された。
 中国の対外姿勢については、威圧的な外交を展開しつつも、経済状況の悪化もあり、その強度は「三合目程度」に抑えられていると分析される。一方で、外交上の摩擦は続き、中国総領事の発言が日米同盟を揺るがすとして問題化した事例も紹介された。
 講演の中心は台湾問題の歴史的経緯である。日本は戦後、台湾を「中国の一部」と明確に認めたことはなく、米国と同様に「中国は一つだが、その代表が誰かは平和的に決めるべき」という立場を維持してきた。1971年の国連代表権交代、1972年の日中国交正常化は、米中接近と冷戦構造の変化の中で進んだものである。
 しかし、1990年代の台湾民主化は中国にとって大きな誤算となった。国民党政権が崩れ、台湾人としてのアイデンティティが強まり、民主主義が定着したことで、中国が想定していた「国民党さえ倒せば台湾は戻る」という構図が崩れた。これが現在の緊張の根本原因となっている。
 同時に、中国は急速な軍拡を進め、海軍力や核戦力を大幅に増強した。軍艦数は約400隻に達し、日米を合わせた規模を上回るとされる。核弾頭も急増し、2030年代には米露に迫る可能性があると指摘された。
 台湾社会では、日本統治時代の遺産がインフラや教育の面で肯定的に評価されることも多く、台湾人の多くが「自分は台湾人であり中国人ではない」と認識するようになった。これは台湾の民主主義の成熟を示すと同時に、中国との対立を深める要因にもなっている。
 総じて講演は、台湾問題が歴史・政治・軍事・社会が複雑に絡み合う構造的問題であり、日本がその渦中にある現実を強調する内容となっている。