2023年4月28日「アジア安保会議」講師/古森 義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員・麗澤大学特別教授

2023年04月28日
  

「アメリカのアジア戦略とは」「台湾では米中開戦 前夜か?ーワシントンからの最新報告」

 ワシントン最大の関心事はいまや対中問題であり、次いでトランプ、ウクライナ、ロシア、バイデンといったところだ。トランプ政権とバイデン政権では政策が大きく異なるが、中国の認識については「軍事、政治、経済面で米国の立場を揺るがす唯一の脅威」という点で一致しており、いまでは “米中新冷戦”という認識も定着してきた。米国内の一部勢力の間では、ウクライナへの過度な支援によって中国への軍事対策が不十分になるとの危機感が強まっている。中国資本による米国内の農地買収、孔子学院への警戒感が強まるなか、さまざまな民間機関による対中国への具体的な政策提言も取りまとめられている。わが国の、中国を脅威と認識しつつも、「遺憾である」「言語道断」としたコメントしかできず、民間機関で中国軍事への研究がなされず、具体策も検討されていないのとは大違いだ。

 今後米中の対立はますます険しくなるが、同盟諸国が団結していた旧冷戦と異なり、いまは中国との経済面での相互依存が断ち切れない。一帯一路やアジアインフラ投資銀行を掲げる習近平政権は、台湾、東アジアのみならず、グローバルな統治を目指していることは明白で、米中の強硬姿勢が続けばわが国にも大きな影響が及ぶだろう。

 ワシントンを拠点に報道活動を続ける古森氏は、台湾有事の可能性について、中国が台湾侵攻に踏み切らざるを得ない台湾独立や台湾への米軍駐在などのレッドラインについて解説。「そう簡単には攻撃しないだろう」との見方を示した。

 このほか、先の米韓首脳会談で韓国が米に同調し、中国に批判的な姿勢をみせたことにも言及。米の歴代政権は90年代以降、朝鮮半島の政策用語に“北の非核化”を掲げていたが、バイデン政権以降、北朝鮮に対する主だった言及はなく、「北朝鮮が核保有国であるとの認識に変わっているのではないか。そうなれば日本の国防にも大きな影響が及ぶ。わが国政府はバイデン政権に対北朝鮮政策を確認すべき」と危機感を募らせた。また、これからの米大統領選の見どころの一つとしてハンター・バイデンスキャンダルを挙げた。