「アジア会議」2020年2月19日(水) 講師/黒井文太郎 軍事ジャーナリスト

2020年02月19日
  

「2020年の国際情勢 冷戦激化の深層」

 米国とイランは今年に入って緊迫した状態が続いていた。両国の対立は1979年に遡る。ホメイニ師を中心とするイスラム革命で政権を追われた前国王を支持していたのが米国であり、この40年間両国は敵対関係にあり、何度か緊迫した状況が訪れた。核兵器の開発を勧めたいイランに対し、国連が経済制裁を科した時期も長く続いた。しかしイランは2000年代に入って堂々と開発に突き進んだのだ。
 イランの核武装の一番の問題は、イランが核武装することでライバルであるサウジアラビアなどとの緊張が激化するだろうし、イランが「地上から消滅させる」と敵視しているイスラエルは間違いなく攻撃に打って出るだろう。中東での大規模な戦争に直結しかねない。
 オバマ政権時、イランの核武装を止めるべく経済制裁の緩和で合意に達したが、それに意を唱えたのがトランプ。トランプはイランが核をつくる力を放棄させたいと考えている。
 両国の緊張は相変わらず続いているが、両国も本気で戦争を望んでいるわけではない。しかし今後もイランは、手下であるイラクのシーア派の民兵を使うなどして、何かしら米国に対する敵対行為を続けるだろう。ハメネイとトランプがツイッターで悪口を書きあい、世界的に注目を集めていた時期もあった。
 米とイランの喧嘩の舞台はペルシア湾と三日月地帯の二ヵ所。イラン国内で反政府デモが起こるなど、いまはペルシア湾の大きな緊張状態は収まった。緊張が続けばホルムズ海峡が危ないが、いまのところその懸念は小さい。三日月地帯も米軍に対するテロは続くだろうが、今年は両国間の戦争は起きないだろう。
 黒井氏はこのほか、シリア情勢、ロシアが世界中で仕掛ける情報戦、北朝鮮の情勢などについても詳細に分析。「イラン、ロシア、中国、北朝鮮が我々の安全安定に対する障害であり、冷戦の感覚で考えるべきだが、ロシア、イランに対しても仲良くするという感覚で果たしてよいのか」と疑問を呈し、「日本はイランに対して忖度し過ぎだ。友好的な態度をとってもイランは牽制できず、逆に利用されてしまうだけだ」と日本政府の対応を強く批判した。