「政民合同會議」2019年1月16日(水) 講師/細川昌彦 中部大学特任教授・元経産官僚

2019年01月16日
  

  「米中経済冷戦にどう向き合うか」

 昨春から米中関係への認識は大きく変わりつつある。オバマ政権末期から米国内で対中警戒感はあったが、同政権の対中融和政策もあって表面化してこなかったものが、トランプ政権以降、鮮明になってきた。

 米中貿易戦争については関税による貿易戦争、ハイテク技術の覇権争いとの見方もあるが、その本質はそれらに加えて制度間競争にあるのではないか。中国の国を挙げての動きは戦後、欧米を中心に日本も含めて70年以上にわたって積み重ねてきた戦後の国際社会の秩序に対する挑戦とみられており、英国から米国に覇権が移った100年前とは状況が異なり、もはや米中二国間だけの問題ではない。欧州も技術管理、投資規制含め、対中警戒感を強めつつあることにも注目だ。中国がグローバル経済に取り込まれたいま、ヒト・モノ・カネをどうコントロールして技術流出を防ぐかには限界もある。

 昨年8月に米上下院で可決された2019年の米国防権限法では対米投資規制の強化、量子コンピュータの技術など、まだ製品化されていない新興技術の輸出管理の強化までも盛り込んだ冷戦仕様のものとなっている。超党派で決議されたものである以上、単に関税合戦に留まらず、今後も冷戦仕様の手段が米国から繰り出され続けることを意味する。また、その中に盛り込まれた米国独特の輸出管理・再輸出規制には米国の技術が20%組み込まれているものも対象となっており、日本企業も巻き込まれる恐れは十分にあり得る。日本企業、グローバル企業は供給網の抜本的な見直しを迫られることになろう。

 米中貿易協議は3月にある種の合意がなされる可能性は十分にあるが、米国の対中警戒が続くことは間違いない。

長年にわたって安全保障の観点から経済を分析してきた細川氏は、「戦後培ってきた価値観が大きく揺らぐなかで、日本は欧米と協調しながらどう立て直していくことがカギとなる」「日中間の大学・企業間の研究も活発に進められている現状で、日本企業としても安全保障の感覚を研ぎ澄ましていくことが不可欠」と警鐘を鳴らした。