「政民合同會議」2019年5月13日(月) 講師/遠藤誉 筑波大学名誉教授・理学博士

2019年05月13日
  

『「中国製造2025」の衝撃ー習近平の狙いとは何か』

    米中貿易戦争に対して中国側は、米国がそれまでの合意内容を撤回したためであり、「トランプ政権のやり方には慣れた。米国の焦りでしかなく、中国は制御できる」と諦観しつつ、徹底抗戦する構えも見せている。貿易相手国の多元化を目指し、日本に秋波を送るようになったのもその一環であろう。中国から撤退する日本企業は増えつつあるが、中国は米中貿易戦争を見据え、新興市場とも交易を強化するなど着々と準備し、米国なしでもグローバル経済を成立させようとしている。将来的にはグローバル経済は米国と非米国の二極化になる可能性もある。これに対し、日本政府は安倍首相が「トランプと100%共にいる」というのに対し、二階氏は「米国の顔色を窺って日中の問題を考えるものではない」とダブルスタンダードの姿勢を見せている。1992年の天安門事件で経済封鎖を受けていた中国を助けたように、今回も日本が中国の瀬戸際に手を差し伸べてしまうのか。

   「中国製造2025」のきっかけは尖閣問題の際に反日デモが起き、反日デモが反政府デモに向かうことを恐れた中国当局が、製造強国を目指して推し進めているものだ。独自の宇宙ステーション建設など、宇宙の実効支配計画も着々と進行中だ。

    米中関係が悪化すると中国は日本に接近するが、それを日中関係改善の契機と捉えるのは危険この上ない。中国の常套手段だ。安倍首相が「一帯一路への協力を強化する」というのは是が非でも撤回すべきだ。

    遠藤氏は、中国国営のZTEを差し置いて民間企業のファーウェイに力を入れる側面について詳細に解説したほか、中国が周到に開発を進める一帯一路のデジタルシルクロード構想や月面での資源基地建設についても言及。北海道で民間の中国人が土地を買い漁っている現状も指摘し、「一帯一路を北極圏まで伸ばしたい中国は、ロシアに日本に北方領土を返還させまいとあの手この手でプーチンを操っている」と分析。日本の外交方針について「日本の外交はあまりに近視眼的。日本のGDPの3倍になった中国に、また手を貸してしまうのか」と警鐘を鳴らした。その後の質疑応答でも活発なやり取りが行われた。