「アジア会議」2019年5月27日(月) 講師/古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派委員・麗澤大学特別教授

2019年05月27日
  

「トランプ大統領は北朝鮮をどうする気なのか」

 本来の外交手法からすれば米朝首脳会談はありえないプロセスであり、伝統的な外交手法に精通している専門家ほどトランプ政権の見方を誤ることが多い。政権全体としてのスポークスマン的存在が少ないために、トランプ政権の考えがわかりにくいことも確かだ。しかし、トランプ政権の北朝鮮の非核化に向けた政策は、実現できるかどうかはともかく、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」で一貫している。北朝鮮は反発するだろうが、リビア方式を視野に入れていることにも変わりはない。金正恩は非核化に応じるだろうが、あくまで経済制裁の一部解除が条件であり、“朝鮮半島の”非核化にしか言及していない。自国の憲法に記載されている核保有を放棄する姿勢を示したのは、トランプが2017年に国連で行った「北朝鮮がいまのような軍事挑発を続ければ完全に破壊する」との演説だった。自分自身の生存への恐怖がきっかけとなったのだろう。米国議会では、どうやったら北朝鮮の現在の体制が崩壊するか、サイバー攻撃、金正恩暗殺など、様々な可能性について専門家の見解を聞き、詳細に分析してきた。トランプ政権は、制裁は緩めずに最大限の圧力をかけながら、非核化に向けて北朝鮮を追い詰めていくだろう。
 古森氏はトランプ政権発足後のブレーンの推移、顔触れについて詳細に解説し、「型破りなトランプ大統領ゆえに政権中枢に人材が集まらなかったが、2年経って見識ある保守派が集まりだした」と分析。「色々意見はあろうが、安倍首相とは仲が良く、トランプ政権は日本にとって相性のいい政権であることに間違いない」との見方を示した。このほか、安倍首相が金正恩と無条件に会うと方向転換した契機は金氏のトランプ大統領への言葉だったことを指摘した。質疑応答では金正恩の真の狙い、米中関係の行方など様々な質問が出た。トランプ大統領にとっての韓国の位置づけについては、「朝鮮半島の非核化に米韓両国の連帯は不可欠。米韓軍事演習の再開はありえる」としながらも最近の米韓首脳会談の短さを皮肉った。