「政民合同會議」2019年10月11日(金) 講師/黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員

2019年10月11日
  

「史上最悪の日韓関係のこれから」

 日韓の貿易問題は半導体素材を発端に、韓国内では日本製品の不買運動が続いている。しかし、日常生活に多くの日本製品が浸透しており、韓国が高いシェアを占める電気自動車の電池も今回の日本のノーベル化学賞受賞で素材を日本に頼っていたことが明らかになったのは皮肉であった。
 日韓対立がこれまでと大きく異なるのは、日本の堪忍袋の緒が切れ、制裁・圧力に及んだことだ。「徴用工問題を解決するための外交圧力」と韓国内で説明するも、韓国側は反発し、論点をすり替え、文政権は反日運動を盛り上げて求心力の回復をはかろうとしている。対して韓国の保守勢力は「文政権の反日スローガンに騙されるな」と冷静だ。法務大臣の使命問題で与野党は対立。市民のデモも文政権支持の数十万に対し、保守派の方が多い印象を受ける。文政権の支持率は40%とされるが、コアな支持層が離れ、一般市民が政権批判に傾いているのだ。政府・メディアが反日を扇動した際、韓国は常に一枚岩になったものだが、これも過去にはなかったことだ。
 文政権がチョ法務大臣の任命にこだわるのは世論の圧力で退任させればなしくずしに敗北する、という判断からで、文政権には、いまや日本のことは眼中にない。文大統領の頭にあるのは、在任中に金正恩をソウルに連れてきて南北の平和共存を定着させたいということだけだ。保守派にとって政権奪回の絶好のチャンスだが、保守派も分裂しているのが実状。保守が政権を奪回できるかは来年4月の選挙次第だが、朴槿恵問題が影を落としており、保守政権が文批判で一本化できるかにかかっている。
 韓国在住40年の黒田氏は、「韓国がGSOMIAを破棄した背景には、国際協調派と民族自主派のせめぎ合いがある」と指摘。このほか、韓国で数十万規模のデモが行われる背景や、政権支持派を支援する民主労組、保守派を支持する親米反北の教会について解説。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われ、「韓国はこの40年で強くなった。慰安婦問題を女性の人権問題として普遍化させるなど、国際世論を味方につける外交力は無視できない」などと語った。