「政民合同會議」2019年7月9日(火) 講師/石平 評論家

2019年07月09日
  

「米中貿易戦争の背景・問題点と今後の行方」

 米中貿易戦争の背景は、米国の長年にわたる対中貿易赤字の蓄積もあるが、単なる貿易不均衡の問題ではない。中国による知的財産権の侵害や中国進出企業への技術移転の強要、不当な手段による先端技術の盗用、先端技術で中国がトップになり、世界をリードしようとする「中国製造2025」や一帯一路、南シナ海の軍事支配化、アフリカを含めた金融支配戦略の脅威もある。米国にとってアジアは世界大国であるための砦であり、そのために建国以来、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争と国家を挙げて大きな犠牲を払ってきたのだ。だから中国の企むアジア支配を許さない。習近平政権発足以来、中国の傍若無人なやり口を見て、米政界エリートは中国が経済成長すればいずれ民主化して米国の価値観を受け入れるという幻想から目覚め、反中に転じた。
 中国との対峙を公約していたトランプ大統領だったが、2017年当時に高まった北朝鮮危機を回避するため、北朝鮮との交渉を最優先して米朝首脳会談が実現。米朝関係改善により、対中交渉に本腰を入れ始め、7月以降の制裁関税発動によって米中貿易戦争は起こるべくして起こった。中国が米国に勝てる見込みは全くない。最大の理由は両国の貿易額に差があり過ぎ、米国が内需依存型であるのに対し、中国が外需依存型であることだ。中国は応戦せずに対話に持ち込むのが賢明であったが、応戦姿勢を見せたため、米国は第3弾の制裁発動に踏み切った。中国に進出する海外企業の撤退や対米輸出に依存する中国企業が多数倒産するなど中国経済にも影響は及んでいる。危機感を覚えた習近平は米国に対話を申し込み、4月に米中貿易協議は合意に達するかに見えたが、中国側の関税の即時撤廃要求で両国の間に大きな溝が生じ、協議は失敗。現在に至るまで米中貿易戦争は続いている。第4弾の経済制裁発動に対しては米国内でも反対意見があり、トランプは再選に向けて慎重な姿勢を見せている。いずれにせよ、米中対立は長期化するであろう。
 石平氏は、このほか「永田町界隈には中国への幻想が覚めていない輩が多い」「習近平が野望をむき出しにしたおかげで米国が目覚めた」と皮肉りつつ、トランプ再選後の米中関係のシナリオについて持論を述べた。