「政民合同會議」2018年12月12日(水) 講師/柯隆 東京財団政策研究所・主席研究員

2018年12月12日
  

「米中貿易戦争の行方と新たな日中関係の在り方-2019年の中国経済動向」

 これまで米国は中国が経済発展すれば民主化が進むものとして対中投資を推進し、国際社会のルールに則って行動してもらうために中国のWTO加盟を受け入れた。中国はいまでは世界第二位の経済大国となったが、民主化どころか習近平の独裁化が進み、毛沢東時代に逆戻りしている有り様だ。米中貿易戦争の本質は米国が中国の技術、経済成長、独裁政治を敵視していることから起こったものだ。ファーウェイCFO逮捕も中国の5Gの技術に量子コンピュータの技術を持ってすれば国家安全上のリスクを侵されることを警戒してのことだ。貿易不均衡というのは米国にとってあくまで口実に過ぎない。しかし、中国国内ではすでに主要都市で訪中商用客の激減、出稼ぎ労働者の解雇など影響が出ており、治安の悪化も懸念されている。貿易戦争が一刻も早く終わってほしいというのが市民の本音だろう。

 2000年以降、人件費が上昇し続けている中国では貿易戦争以前からすでに経済は減速していた。打開するには技術力をつけることが必要だが、アリババ、ファーウェイにしても強いのはビジネスモデルに過ぎず、独自の技術力があるとは言い難い。中国政府は電気自動車の時代が到来するとして車載電池で世界的に圧倒的なシェアを占める中国の強さを喧伝するが、昨年生産された中国内の自動車のうち電気自動車は2%に満たず、リサイクル問題などもあり、今後10年は普及は進まない見通しだ。

 こうした難局のなかで習近平は“中国の夢”を実現させようとしている。強国の条件として経済力、軍事力、文化力の3つが挙げられるが、中国では文化力が育っていない。その国の民族の魅力だけが人を惹き付ける力を持つが、統制された社会では創作する力は生まれてこないのだ。また、信用のないところに市場経済は育たず、スマホ決済が急速に普及したのも信用と秩序が確立されていない証左でもある。国民の納税意識も低く、このままでは行政も社会保障も成り立たなくなることは確実だ。

 柯隆氏は、「日本が経済大国になるのに数十年かかったように、中国が技術力を上げるにはあと百年かかる。マナー、道徳を身につけるにもまだ時間がかかるだろう」など、中国社会、中国人気質についてさまざまに分析、解説を行った。