「政民合同會議」2018年11月12日(月) 講師/山尾志桜里 立憲民主党・衆議院議員

2018年11月12日
  

「立憲的改憲とは対米自立改憲である」

 安倍総理の加憲案の目的は自衛隊違憲論に終止符を打ち、自衛官に誇りを与えることにあると考えられるが、憲法の本来の機能として「自衛官に誇りを与える機能」は憲法の本来の機能ではない。「安倍加憲案」の問題点は国家ビジョンがなく、現代の日本が抱える課題を最高法規である憲法を通じて解決していくという動機がないことだ。

 戦後数十年もの間、9条をめぐる憲法議論自体が「護憲」か「改憲」かの二択で先鋭化していた結果、わが国では国民的議論が全く成熟してこなかった。「自衛権」という最も先鋭化しうる国家権力対して、国民の意思の集約がまったくなされていない。したがって、すみやかにかつ丁寧に議論を行うべきであり、自衛権の発動要件など実体的統制とあわせて、国会による事前承認や司法制度の構築など、手続き的に統制する仕組みを規定することが必要だ。あわせて日米地位協定の正常化も対外的な国家主権を確立するためには必要不可欠だ。憲法裁判所創設の必要性についても提言しておきたい。憲法の規律力の弱さが違憲状態を生み、違憲立法や違憲状態を是正できない原因となっている。自衛権を憲法で統制すると同時に、統制に反する国家行為が行われた際に、是正する制度設計が必要だ。

 「立憲的改憲」の立場からの憲法改正とは、国家の明確なビジョンに基づき、社会の課題を提示し、憲法の規範を用いて解決していくための手段であって、憲法改正そのものを目的化する思考は立憲的ではない。

 山尾氏はこのほか、三権分立の歪み、子育て支援、皇室継承問題についても持論を述べた。とくに憲法改正、少子高齢化時代に向けての子育て支援、女性宮家も含めた皇室継承問題については、「この国の根幹を揺るがす三大問題」と強調。「この3つの問題に本気で取り組んでいる国会議員があまりにも少ない」と危機感を示し、議員として取り組んでいく強い覚悟を述べた。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。