「政民合同會議会」2018年10月10月(水) 講師/李相哲 龍谷大学教授

2018年10月10日
  

「金正恩は核を捨てるだろうか-第5回南北首脳会談後の朝鮮半島情勢と展望」

 北朝鮮の核を巡る情勢は刻々と変化している。非核化交渉でポンぺオ米国務長官が4度目の訪朝を行ったが、小さな効果も喧伝したい両国から何の発表もないところからみると進展は全くないものとみて間違いない。 “非核化”の定義が曖昧であること、韓国・文在寅大統領の唱える“朝鮮半島の非核化”を目指す限り非核化は不可能だ。米国は「北朝鮮の体制を保障する」というが、これは米朝で解釈が異なる。米が考える安全保障に対し、北朝鮮にとっては米国が北に対する経済制裁を解き、攻撃を行わないのはもちろん、「体制の保障」の定義を広げ、米へ要求を拡大し続けるだろう。体制保障をどこまでにするのか明確に定義するべきだ。

 世界で150位程度の経済力しかない北朝鮮が世界で存在感を示すには核兵器しかない。しかし、北朝鮮は金日成以来、力しか信じない国家、テロも辞さない『ならず者国家』であり、ならず者国家が核兵器を持つのは世界にとって脅威である。北朝鮮が核兵器を持つことが許されれば金のために他国に技術を売却することは確実で、さらにイラン、サウジアラビア、UAEとまたたくまに世界で核が拡散する。そうなれば日本の安全保障政策も大きな見直しを迫られることとなり、米国にとっても好ましくない状況となろう。

 北朝鮮が経済支援によって核を廃棄するというのは幻想に過ぎない。金正恩が望むのはあくまで金ファミリーの安全、現体制の存族であって経済支援によって経済が好転するのは統制が難しくなるため望んではいない。体制維持には核が生命線。だから手放すはずがない。

 李氏は韓国の歴代大統領、政権が北朝鮮の政策に大きな影響を及ぼしてきた事実を指摘。「北朝鮮の情勢を知るには韓国の情勢をチェックすることが不可欠」とし、「文在寅が非核化の対話ムードをミスリードしている印象を払拭できない」とも語った。北朝鮮の将来的な核放棄の可能性については「保有したままでは国際社会、とくに米国に受け入れられないことは明白であり、非核化の意志を示すだろうが金正恩は20~30年かけて行うかもしれなず、長い軍縮会談になるだろう」との見解を示した。