「アジア会議」2018年8月28日(火) 講師/山田惠資 時事通信社解説委員長

2018年08月28日
  

「自民党総選挙と日本の行方」

 自民党総裁選は安倍首相の勝利が濃厚だが、仮に圧勝したとしても憲法改正は険しい道になるだろう。むしろ来年の参院選の山場に向けた権力闘争の幕が開けたとみるべきだ。「地方重視」「正直・公平」を掲げる石破氏だが、政策的には安倍氏と大きな差はなく、特徴も十分に出せておらず、結局は政治姿勢に回帰するしかない。

 昨年の大臣任命直後に直近の総裁選への出馬への意欲を示した大臣は野田聖子氏が初めてだったが、最終的には推薦人が集まらず、出馬を断念せざるを得ないだろう。総裁選に向けて石破氏を徹底的に叩きたい安倍だが、党内には石破氏支持層も多く、仮に接戦となった場合に露骨な石破はずしを行えば党内基盤が脆弱になる恐れがあり、竹下派が石破氏支持に動くなど、地方の動きが加速すれば今後安倍おろしもある。総裁選後も党内融和を優先した人事にするなど気遣いが求められることになるだろう。

 これまで自民党総裁選は改憲派対非改憲派の戦いが常だったが、今回は実質、改憲派­­­­同士の戦いといえる。憲法改正を次期国会で発議したい安倍氏だが、公明党の存在ゆえに険しい道のりになることは間違いない。憲法改正は9条と切り離して発議するというのが現実的なのではないか。

 安倍氏は、野党に政権を奪われるとは思っていないが、総裁選で圧勝できなければ政権基盤がぐらつく可能性はあると考えている。来年の参院選で野党が統一候補を多く擁立すれば、苦戦する可能性もある。共産党が選挙で現実路線にいくことも踏まえ、野党共闘に注目したい。

 山田氏は安倍内閣、各政党の支持率の推移、自民党各派の相関図や各紙の世論調査、憲法9条に対する安倍氏、石破氏の考えなど、豊富な資料を用いて自民党総裁選の行方をさまざまな角度から分析。米国のトランプ大統領が失脚した場合の拉致問題の行方や米中関係についても言及した。そのほか、オフレコとして小泉進次郎氏の本音や親子の絆、菅官房長官の野心、野田聖子氏が総裁選に出馬した場合の決選投票で果たす役割や、岸田氏と石破氏に共通する点などについても語った。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。