「政民合同會議」6月13日(水) 講師/古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員・麗澤大学特別教授

2018年06月13日
  

『トランプ政権は「北朝鮮の非核化」を実現できるか』

 史上初の米朝首脳会談は、平和、友好と謳ってはいるものの、非核化以外、ミサイルなど通常戦力について具体的な言及は一切なく、非核化の内容についてもはっきりしない。わが国にとっては懸念材料だ。

 米国内では会談自体への批判は少なかったが、「歴史的な前進」と共和党が一定の評価をしたのに対し、民主党は「人権問題、非核化の具体的内容に言及していない」「無法国家と民主主義の超大国が対等に並んで握手をするのはおかしい」と揶揄する向きもあった。

 トランプ政権がCVIDを揺るがさずに北朝鮮に非核化させることができるのか、わが国でも専門家の意見は分かれているが、トランプ大統領はCVIDを「なるべく早く」進めていくと断言しており、その方針が揺らぐことはなさそうだ。

 しかし、「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」には明らかな違いがある。「朝鮮半島の非核化」には米の核の傘を除去し、米韓同盟をなくす意味合いも含まれる。

 北の脅威が薄れれば米韓同盟は自然に収縮していき、そうなれば日米同盟への影響も避けられない。

 また、「体制保証」とは言うものの、実際の共同声明では北朝鮮に対して「国家のセキュリティを保証する」という文言に留まっており、金正恩の独裁体制を保証するものではない。拉致問題はわが国自身が解決していかなければならない問題だ。歴代米政権の中でもトランプ政権はかつてない協力姿勢を示してくれ、国連の後押しもあるが、「解決済み」との北朝鮮の建前のもとで解決の目途は立っていない。

 1994年から北朝鮮問題を見続けている古森氏は、今回の歴史的会談に至った経緯を「経済制裁で北朝鮮経済が疲弊し、このままでは体制を保てないと恐怖を感じた金正恩が望んだからこそ実現した」と指摘。北朝鮮が核を放棄することはありえないと長年思ってきた古森氏だが、会談直前の米朝のやりとりで、これまでとの大きな違いを感じたという。氏は「あくまで予測だが、CVIDに近い形で核放棄するかもしれない」「最悪のシナリオとして、親北の文政権と核を温存した北朝鮮が統一され、反日の新朝鮮が誕生する可能性もあり、そうなればわが国の安全保障は日米同盟への全面依存では済まされない」と危機感を示した。