「政民合同會議」2018年1月10日(水) 講師/植草一秀 政治経済学者

2018年01月10日
  
「2018年政治経済金融の展望」
 
 昨年は大方の予想に反して米大統領選でトランプ氏が勝利し、NYダウ平均株価は大幅上昇、それに連動して日経平均株価も2万3千円を超えた。株価上昇を支える最大要因は、10年間で1兆ドルのインフラ投資、1.5兆ドル規模の減税を掲げるトランプ政権の経済政策への期待だ。トランプ政権はメディア攻撃を受け続け、ロシアゲート疑惑も囁かれるなか、いまだ健在だ。
 わが国の株価上昇の背景は好調な企業収益にある。上場企業は史上最高益更新中で絶好調だが、第2次・第3次安倍内閣下での実質GDP成長率平均値は1.5%に過ぎず、民主党政権下の実質GDP成長率平均値より低い。国内の全法人のわずか0.1%に過ぎない上場企業だけが利益を拡大しており、労働者にその恩恵はない、アベノミクスの本質は格差拡大の推進であり、「働き方改革」も聞こえはいいが、実態は解雇の自由化、残業代ゼロ制度の導入などにつながるだろう。
 10月の衆院総選挙前に森友、加計問題が起き、自公の大幅議席減が目されていたが、蓋を開けてみれば与党が3分の2勢力を確保。希望の党は結果的に反自公票を分断し、自公勝利の最大の立役者となった。安倍政権は、今年はいよいよ憲法発議に進むのではないか。
 中国は5年に一度の共産党大会を開催し、習近平が長期政権を築く布石を敷いた。
 FRB人事に自分の色をつけたいトランプ大統領は次期FRB議長にイエレン路線を踏襲するパウエル氏を指名。新体制下で、米国の金融政策が難しい局面に対処しなくてはならないことは2018年の最大のリスクとなるのではないか。
 植草氏はこの30年の日経平均株価、直近2年の日経平均株価、NYダウの推移を詳細に分析。米朝間の軍事的衝突の可能性について「可能性は低いと思われるが、偶発事態が起こらないとも限らず、注視が必要」と語った。また、2019年に消費税の引き上げが予定されているが、1996年の橋本政権時に消費税を3%から5%に上げた際に日経平均株価が暴落に転じた過去の事例などを指摘。「今年下旬以降の閣議決定が株価に大きく影響するのではないか」との見解を示した。