「アジア会議」2017年6月26日(月) 講師/武貞秀士 拓殖大学大学院特任教授

2017年06月26日
  

「朝鮮半島情勢を読む」

 今年初めから朝鮮半島では緊張が高まった。1994年の核危機を上回る20年に一度の危機だった。米朝が相手を誤解、誤判をして軍事衝突が始まり、核を使った衝突に拡大する危険もあった。

 金正男氏暗殺事件や、北に拘束された米国人学生の死などのハプニングによって米朝間の緊張が米国の軍事オプションを招き、米国がアサド政権と同様、北朝鮮に軍事制裁を加える可能性もあった。

 北朝鮮のミサイル発射は、「不安定な金正恩体制の強がり」ではない。統一のために米国の軍事介入を阻止する条件作りをしているのだ。北のミサイル技術は弾頭の小型化、弾頭の再突入技術、巡航ミサイル技術など、日本にはない軍事技術がある。自信をつけた北朝鮮が、今後、さらに挑発的な軍事行動に出る可能性もある。

 朴政権との違いを明確にしたい文在寅政権は、南北交流を再開し、中韓関係を修復させたいと考えている。北との関係悪化の要因となった開城工業団地の再開始め、大胆な南北交流を発表する可能性がある。

 初めて行われた米中首脳会談で、トランプ大統領は習近平総書記に北朝鮮への影響力行使を促した。ただ、米国は米朝対話の機会を探っている。駆け引きを好み、外交を取り引きと考えるトランプ氏にとって、北朝鮮は簡単になびかないゆえに、闘志をかき立てる格好の相手だ。米朝協議はやがて再開されるのだろう。

 韓国が南北関係の改善を最優先するとき、日韓関係は膠着状態に陥り、日本の外交は袋小路に陥る可能性もある。米国が“アメリカファースト”を掲げている。わが国も発想を転換し、“日本ファースト”で考えていかねばならない。

 武貞氏は、「様々な事実をミクロの視点で見る虫の目、全体像を把握する鳥の目、潮流の変化を察するサカナの目が必要」と前置きし、南北統一の可能性についての様々なシナリオ、北朝鮮による中国のネットワークを活用した韓国企業へのサイバー攻撃の実情、そこから考えられる中朝の密接な関係などについても詳細に解説した。