「トランプ後の米中・日米関係の行方」
戦後、米国は軍事的、経済的に、核の不拡散やテロ対策などの議題設定においても、自由・民主主義のモデルとしても唯一の超大国として世界のリーダーシップを発揮してきたが、“アメリカファースト”を掲げるトランプ政権誕生後、米国のリーダーシップ、理念の力が落ちてきたのは世界にとって深刻な問題だ。
わが国はこれまで例外なく米国と緊密な関係を築いてきた政権が長期政権を維持してきたが、本来、外交とは同盟関係を強くすることが目的ではない。同盟国として米国と対外政策を一体化することは、わが国の外交の柔軟性を損なう恐れがある。
わが国が今後少子高齢化で国内需要が減り、労働力不足も懸念される中で、近隣諸国の需要をどう捉えるかは重要な課題だ。中でも訪日観光客の3割を占める中国との関係は、米中関係と切り離して考える時期に来ている。アジアの国々と正しい関係を築くことがわが国外交の究極の目的であることを改めて考えるべきだ。
日米安保条約が健全に機能すれば、軍事的に中国を恐れる必要はない。現在の日本の行動は米中関係を睨みながら、対中牽制という側面があるが、中国と共存していく環境を整えることが日本の国益にもつながる。わが国が様々な局面で中国にアドバイスできることは多く、長い目で日中関係を捉えなければならないだろう。
朝鮮半島の有事に際しても、米国や韓国と危機管理計画の策定に積極的に取り組む必要がある。今年はオランダ、フランス、ドイツで総選挙が行われ、EU対反EUの構図がますます鮮明になるだろう。わが国はこれまでの外交戦略の議論の前提条件を見直し、好ましい状況を作り出していく必要がある。
田中氏は、欧州や行動が先鋭化する北朝鮮の現状、米国の情報機関の監視状況などについても詳細に分析。「北朝鮮の有事に際しては米中韓との連携が不可欠」として、対中韓関係の改善を強く訴えた。