「政民合同會議」2017年11月6日(月) 講師/朱建榮 東洋学園大学教授

2017年11月06日
  

「習近平政権の内政外交一党大会と北朝鮮政策から見えるもの」


 日本での中国共産党大会の報道は人事に集中しがちだが、大切なのは習近平主導の下で今後5年に何が行われるかだ。今回、習近平は党規約を改正し、「習新時代の中国の特色ある社会主義」思想を明記した。後継者人事よりもあえて名前を刻むことで不退転の覚悟で改革に全力を注ぐことを広く明言し、周囲にも緊張感を持たせたのだ。今後5年間の業績如何で、3選もしくは鄧小平のように院制を敷く、あるいは党主席として残りながら国家主席からは退く可能性などがある。また、中国軍の2020年までに機械化、情報化を進め、2030年に先進国に追い上げ、2050年までには米国と並ぶ「世界一流」の軍になるという目標を掲げた。過度の軍事化については近年、中国国内でも論議が起こり、南シナ海については「中国の庭ではなく、沿岸国の共通の庭にすべき」として、軍事化をこれ以上は進めず、スカボロー礁も埋め立てるべきではないという流れになっている。中国は過ちは認めずにひそかに軌道修正するのが常だ。世界の大国として温暖化などでリーダーシップを発揮し、「一帯一路」戦略に取り組む中国はこれ以上の南シナ海での緊張は不利に働くとの読みがあったのだろう。

 一党独裁は、現時点では中国社会、経済の発展にとって積極的な役割を果たしているが、発展するほどそのマイナス面も出てくるだろう。その臨界点は2025年ごろに来るのではないか。韓国と台湾のように民主化するか、選挙制度をうまく使って与党の地位を固定化するシンガポールモデルになるか、いずれにせよ大混乱、大分裂とはならないだろう。

 北朝鮮に関しては緩衝材として残したほうがよいというかつての考え方も変わりつつある。中朝条約よりも中国東北部の安全と安定が最優先との方針の下、米国と協力して北の核を阻止する方向になっており、国連安保理の厳しい制裁決議は実際は米中の協議で決められている。中国が北の核を阻止する代わりに、米軍に朝鮮半島からの引き揚げを求める可能性もありうる。

 朱氏はこのほか、中国の技術開発の新しいモデルやネット社会でマナーやルールに目覚めた中国の若者の姿などにも言及。先ごろ来日したトランプ大統領が日本との同盟強化を強調したことについて「背景には米国の国力低下、中国の台頭で、太平洋の覇権を維持したい米国は日本に利用価値を見出している」と指摘した。