「政民合同會議」2016年4月4日(月) 講師/武貞秀士 拓殖大学大学院特任教授

2016年04月04日
  

「北朝鮮動向を読む」

    国連の北朝鮮への厳しい制裁を巡って対立していた米中だが、中国が米朝平和協定の提案を行うなど、実は水面下で手を握っていることが分かる。北朝鮮は核兵器開発と国民生活向上の並進路線を取りつつ、世界を意識して自国の軍事技術を誇示しようとしている。核弾頭の小型化はほぼ完成しているとみてよい。北の技術を過小評価する向きもあるが、パキスタンやイラクなどとの技術協力ネットワークは侮れない。米国と戦わずして軍事力で韓国を統一することは建国以来の北の国家目標であり、そのために核兵器の開発が不可欠であった。米朝平和協定を締結したいのも米国と友好関係を結びたいのも本音であろう。

 一方、在韓米軍が中国の国境付近へ進出することを阻止したい中国がなんとしても避けたいのが韓国主導の南北統一というシナリオであり、そのためにも北朝鮮を存続させたい。

 北の核兵器技術が今後さらに向上した場合、次期大統領指導下の米国が、朝鮮半島でいまよりも「世界の警察官」としての役割を果たすかどうかは大いに疑問だ。

 日本は、拉致、核、ミサイルという大きな問題を抱え、北への制裁を行いつつ対話の窓口を開けておく必要があるが、この点で安倍政権は一貫している。朝鮮半島の有事の可能性が高くなることを踏まえ、日本は有事に備えておく必要がある。

 武貞氏は、対話と圧力の原則を維持しつつ、対北朝鮮政策の好例として英国の手法、「批判的関与」を挙げた。このほか、慰安婦問題についても言及。「韓国の反日は国家が存立する限り変わらないだろうが、それでもこの問題で合意できたのは画期的」「19世紀以降、時代の勝ち馬に乗る、という政策では韓国の国際政治観は一貫している。日韓併合時には日本、日本が負けると米国へ、最近では中国など、その時どきの強国に追従してきた。近年の韓国の中国に傾斜する外交への迷いが、対日姿勢の変化、対日米関係への強化へと結びついている」と分析した。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。