「政民合同會議」2010年6月8日(火) 講師/安倍晋三 元内閣総理大臣 長谷川幸洋 東京新聞・中日新聞論説委員

2010年06月08日
  

「21世紀のグランドビジョン」

講師/安倍晋三 元内閣総理大臣

 今後政権がどう変わろうと、内政の二大課題、①900兆円の累積債務をどうするか②人口減、少子高齢化の中で年金や介護など社会保障をどう守るのか-は変わらない。近年一番株価の高かった安倍内閣時代、年金の運用は3兆円のプラス=財政基盤の強化になった。海外からの投資を呼び込むためにも経済成長は不可欠だ。アジアでは人口が増えており、海外に目を転ずれば経済成長は可能だ。介護、医療も成長分野ではあるが、税金と保険料が増え、政府が肥大化するばかりで新しい富は生まれない。やはり企業がグローバル社会で海外から利益を得るしかない。

 農業問題も成長分野として期待できる。英独仏の復活に倣って日本は得意分野である米の輸出で勝負すればよい。いままで農水省には輸出担当の部署すらなかった。改革の余地は十分にある、

 外交の最大の課題は一党独裁の国でありながら資本主義経済という中国とどう付き合うか。歴史問題リスクを軽減させる努力をしながら互いに利益を得る経済関係を築くことだ。20年間に20倍に軍事力を増強した中国に対し、軍縮する一方の日本。海洋国家である日本は多くの海域を中国と係争中であり、極東地域の安定を守るためには日米同盟は不可欠だ。反面、自国の安全を「諸外国に任せる」という前提に立った憲法の精神が日本人の精神を蝕んできたことも事実で、戦後レジームからの脱却も急がねばならない。家族愛、地域、日本の国のために貢献するなど自分の損得を超える価値を認めてこそ、日本は日本足り得る。

「激動する政局の行方」

講師/長谷川幸洋 東京新聞・中日新聞論説委員

 小沢・鳩山両氏のW辞任は、鳩山氏が「政治とカネ」でこれ以上民主党のイメージを損なわないために小沢幹事長を道連れにしたというのが真相だ。小沢氏は予想外の政局の争いで負けた。

 参院選で民主党が負けた場合、連立組み換えは必至だが、過半数をとったとしても政策の積み残しが山積し、安定するとは言い難い。官新首相は、1月の通常国会の答弁での立ち往生以来「脱官僚依存」とは一言も言わなくなった。いまや官僚のつくったメモを丸読みし、財務省と二人三脚状態だ。政権の重大問題で最終決断したのは常に小沢氏で、鳩山氏も菅氏も自ら決断したことが一度もない。菅氏は薬害エイズ事件の際は大きな決断をしたが、鳩山政権下で目標を掲げて実現したことはなく、主要閣僚にもそういう経験がない。

 内閣で新しい目標を決め、工程管理を行い、数年かけて実現を目指すというのがふつうの政治の運営の仕方だが、鳩山政権ではこれがまったくできていなかった。鳩山氏は「官僚から政治をとり戻す」といったが、閣僚がばらばらに各自の目標を掲げ、政治自体を喪失してしまった。

 予算編成、普天間など政策課題をこの内閣で決められるのか。民主党は政権をとるのが目標で、彼らのやりたいことは「再分配」「格差是正」「公平な社会をつくること」であったが、再分配をしようにも国には金がない。

 民主党は当初の目標を失う、アイデンティティクライシスが始まるだろう。