10月25日「アジア安保会議」講師/鈴木 英司 元日中青年交流協会理事長

2023年10月25日
  
「不拘束から見る中国の人権状況と今後の日中関係」

2016年7月に北京空港で公安調査庁の代理人というスパイ容疑で国家安全部に突然拘束され、7ヵ月間にわたって『居住監視』を受けた。弁護士に会えたのは2ヵ月半後で、有罪を認めて謝罪すれば罪が軽減されるといわれたが、拒否した結果、非公開の裁判で6年の実刑が確定した。逮捕されれば100%起訴、有罪となり、中国は法治国家として機能していない。居住監視は冤罪の温床、人権の抑圧だ。習近平政権下では独裁的志向が強まり、必要以上に国家の安全を重視するようになった。反スパイ法が制定され、当局のさじ加減で理由なしに出入国の制限、逮捕もできるようになり、国家安全部の権力は増す一方だ。

私が逮捕されたのは、日中友好では知られた存在であり、わが国の公安調査庁と中国の情報のパイプを断ち切る目的があったのだろう。その後、日中友好に尽力してきた活動家や中国を専門とする学者の訪中は激減した。日本の言論人への圧力とも言える。そして何より、中国は日本政府の出方を見ているのだ。その証左に何かあればすぐに抗議する米国やロシアのスパイは誰も捕まっていない。わが国も、外務省などが中国の反スパイ法への対応を真剣に考えるべきだ。

6年余の服役を経て帰国した鈴木氏は、記者クラブで発言するまで接触してこなかった外務省、現在まで接触してこない公安調査庁に不信感を抱きつつ、「無罪で不当な拘束であり、名誉のために発信するのは義務と考えている」と主張。中国国内でスパイ行為に関する通報を国民に奨励していることに言及し、日本人駐在員を念頭に「いつ告発されるかわからない状況」として国会での早急な議論と、中国に主張し、圧力をかけていくことの重要性を強く訴えた。現在、拘束中の製薬会社社員については、「製薬、機密事項ともなれば拘束は長引くのではないか」との見通しを述べた。さらに、3期目に投入した習近平政権で執行部から中国共産主義青年団が排除されたことについて強い危機感を示した。そのうえで、「隣国である以上、中国とうまく付き合っていくことは不可欠。民間交流も大事だが、安心して交流を続けるためにも政府が中国と対峙するために長期的な戦略を練ることが重要だ」と述べた。