1月19日「政民東京會議」講師/前原 誠司「教育無償化を実現する会」代表・衆議院議員

2024年01月19日
  

「前原新党が目指すもの」

 日本の国際競争力の下落が止まらない。経済状況、政府・ビジネス効率性、インフラの観点から算出した国際競争力は30年前の一位から昨年は過去最低の35位となった。デジタル化、IT化の遅れが大きな要因であろう。世界時価総額ランキングは1989年には上位20社中、日本企業が14社を占めたが、今年1月現在、200位以内にわずか7社に過ぎず、100位以内に入ったのはトヨタ自動車のみという体たらく。30年前に勢いのあった日本の金融機関は再編を繰り返して勢いをなくし、いまも名前が残るのは野村証券くらいだ。設立10年未満、未上場、評価額10億ドル以上のユニコーン企業の数は、日本は先進国の中でも圧倒的に少ない。

 世界大学ランキングでは、日本も近年わずかに改善傾向にあるが、アジア勢で中国の精華大が12位、北京大が14位と躍進しているのに比べると東大29位、京大55位で存在感が薄い。人材は国力の源泉であり、他国は高等教育への投資を強化している。中国は公的教育支出をこの20年で24倍に増やした。対して、日本では国家予算で増えているのは社会保障と特例国債のみ。世界の労働生産性順位で日本はOECD加盟38カ国中30位とデータ取得可能な1970年以降、最も低くなっている。日本人の資質が低いとは決して思わないが、高等教育と労働生産性には相関性があり、日本は教育予算、人材への投資が少な過ぎるのだ。小泉政権で教育予算を減らしたことは検証すべきだろう。

日本の潜在成長率は賃金停滞を背景に2012年以降低下傾向にある。女性の社会進出と定年後の再雇用で就業者数は微増したが、30年前と比較すれば潜在成長率、生産性の凋落は明白だ。企業は利益以上に配当、内部留保を増やしているが、設備投資は増えておらず、実質賃金は下がり続けている。先進国の中で日本だけが実質賃金が下がっており、いまや日本は「先進国における低賃金国」と言ってよい。このまま賃金が下がり続ければ、優秀な人材は国外に流出し、外国人労働者も日本を選ばなくなる。現に、介護業界の外国人労働者はいまや日本の3倍の賃金の豪州などに流出している。

親の所得格差が子どもの教育格差につながっているのも深刻な問題だ。0〰1歳児を持つ家庭の約8割が子育てにお金がかかることを理由に多子化を断念している。塾はバウチャーを発行し、大学は“実質”無償化にし、異次元の少子化対策と併せて生産性向上をはかるべきだ。高等教育の無償化は予算倍増で実現できる。人材への投資によって労働生産性が向上し、潜在成長率も上がる。教育の無償化は少子化対策、教育格差是正、国際競争力の回復、賃金の上昇につながる「一石四鳥」の政策だ。

本来は安全保障を専門とする前原氏だが、「少子化は静かな有事であり、少子化対策、教育無償化も経済、国力に直結する安全保障だ」と述べた。兵庫県明石市が独自に中学校給食の無償化、高校3年生までの医療費無料化などを行った結果、子育て世代を中心に人口、出生率が増加し、税収も増加したことに言及し、「教育無償化によって社会を変えていきたい」と力を込めた。

その後、質疑応答で対中関係へ質問が及ぶと、「中国はよくも悪くも国家戦略のある国。習近平政権下でイデオロギー色が強くなり、経済が低調になった。不動産市場が低迷し、人口減で労働力の輸出国から輸入国になれば日本はさらに人を集めにくくなる。より対中関係は難しくなり、日米安保だけでは不十分」との見方を示した。このほか、教育無償化に向けて、「当面は教育国債頼りだが、大学ファンド、

外為特会の余剰金の一部を基金化して運用強化していくことも考えられる」と語った。自民党の裏金問題については「検察の対応には期待外れだ。派閥はなくならないだろう」と述べた。岸田政権の低支持率は野党にとってチャンスかと問われると、「野党もまとまっていないのが現状。自民党に代わる強い野党をつくり、政権交代を可能にしたい」と意欲を覗かせた。