「政民合同會議」2019年8月7日(水) 講師/野田佳彦 元内閣総理大臣・衆議院議員

2019年08月07日
  

「内外情勢について」

 過去最高税収を記録したバブル期の平成2年以降、歳出と歳入の差は開く一方で、その間赤字国債を発行し続け、累積赤字国債は1000兆円を超えた。公的債務残高対GDP比で主要国の平均100%に対し、わが国は240%と世界でも突出している。小泉政権時には政権をまたいで“プライマリーバランスの黒字化”という目標が掲げられ、20年間にわたってその後の政権も踏襲してきたが、安倍内閣は目標の達成を2025年に先送りし、すでに達成困難との指摘がなされ、令和の財政はさらに悪化する見通しだ。財政審は平成年間の財政運営を「受益の拡大と負担の軽減・先送りを求める圧力に抗いきれなかった時代」と総括したが、令和にはこの反省を生かし、これ以上将来の世代にツケを残す “財政的幼児虐待”に陥ってはならない。
 累積赤字国債の最大の要因は超高齢化に伴い、医療・年金・介護費用が膨らみ、平成30年間で社会保障費が3倍に拡大したためだ。国民皆保険・皆年金の制度が出来た当時の平均寿命は70歳、いまは人生百年時代。人類が120歳を迎える時代もそこまで来ている。健康寿命、勤労寿命、資産寿命を延ばさねば、人生百年時代の人生設計は成り立たず、早急な議論が求められる。
 野田政権では持続可能な国家百年の計として社会保障と税の一体改革に取り組んだ。安易に赤字国債に依存せず、社会保障の安定化、充実をはかるとともに、財政の健全化を同時に達成しようというのが狙いだ。消費税導入、引き上げを目指した政権がいずれも失速した反省を踏まえ、次の選挙の争点としないよう三党合意も行った。しかし、安倍政権は消費税を争点化することで先延ばし、使途変更など政権に有利な動きをつくろうとし、三党合意の精神が継承されていない。まして、負担軽減の為の軽減税率、ポイント還元は天下の愚策であり、消費税の本来のあるべき姿を大きく歪める結果となるだろう。
 日銀の異次元の金融緩和も限界に達し、金融の出口と財政再建の入口の議論を早期に同時に進めていくことが不可欠だ。
 野田前総理は、「平成の税財政を振り返る」として、財政再建に向けた歴代政権の取り組みについて解説。「未来に投資する国にするために、財政再建の道筋をつくるのが責任ある政治だ」と力強く語った。