「政民東京會議」2022年5月11日 講師/福田 達夫 自由民主党総務会長・衆議院議員

2022年05月11日
  

「時局講演」

 「日本の政治はリーダーシップが取れない。このままでは世界と闘えない」という強い危機感が1990年代の行政改革、政治改革につながった。安倍、菅政権時に“官邸一強”という言葉が生まれ、官邸に権力が集中する事態が批判を集めたが、刻一刻と国際情勢が変化し、早い判断が求められるときに強いリーダーシップを発揮できる環境が整ったことはまずは喜ぶべきではないか。

 今回のロシアのウクライナ侵攻を受け、日本がアジアで最初にロシアへの経済制裁を行ったことは欧米からも高く評価された。日本の行動によって、ロシアのウクライナ侵攻が単なる地域の問題ではなく、世界的な問題であると広く認識されたことは大きな意義がある。

 政治改革の最大の目的は強い政治をつくることであり、2001年からの政治改革の一番の肝は発議権を官邸に付与したことであった。元々政策は各省から上がってきたものを閣議にかけていたが、総理がリーダーシップを振るってやるべきことをやるために官邸に機能を集中させ、総理主導で与党が支える体制になった経緯がある。予算編成の権限もいまでは官邸に移っている。

 ただし、強い官邸には強い霞が関(官僚)、強い政党をつくることとセットでなければならない。官邸がなすべき短期的課題に対処する一方、【新しい資本主義】のような中長期にわたる深い議論に対し、霞が関、政党が補完していくべきだ。

 祖父は第67代内閣総理大臣の福田赳夫、父は第91代内閣総理大臣の福田康夫という政治家一家に育ちながら政治家になることは考えておらず、祖父、父とも政治について話したことがなかったという福田氏。商社勤務を経験し、2012年12月に衆院選で初当選。翌年には祖父が創設した清和政策研究会に入会し、2021年9月に当選3回(当時)で閣僚未経験ながら自民党総務会長に抜擢された。祖父も父も経験したことのない総務会長へのまさかの抜擢に、「何かの間違いではないか」ととまどいつつも、「受けるしかない」と三木武吉時代から党大会に代わって自民党の政策、人事などを決める総務会を束ねる重責への覚悟、決意について語った。

 弊会での講演に際し、中小企業の経営者との話し合いを大切にし、昭和27年に中小企業政策と農政を柱に出馬した祖父について回想するとともに、「日本人全体、社会全体が豊かになるために、地方のよいものを価値に替えていくことが必要」と持論を述べた。また、商社時代に身につけた、時間を意識した仕事の進め方の考えについても言及し、「日程感をつくるのが政治。国レベルの経済問題は年単位で考えてもよいが、経済安全保障にはデイリーベースのビジネス目線も不可欠で、そのうえによりよい世界が構築できる」と総務会長としての決意を語った。

 このほか、参院選に向けて党内で進めている各部会の動きなどについても解説。2007〰2008年時のねじれ国会において日銀総裁人事で苦しんだ経験を振り返り、「世界の動きが激しい現状で日本政治の停滞は許されない。そのためにも参院選で勝利し、安定的な平和な世界をつくるために、日本的な価値観を世界に提示していきたい」「参院選の3年間で骨太の改革を行い、日本を在るべき形にしていくことが不可欠」と熱く語った。

 現在、党内では【新しい資本主義】、また来年度予算に向けた政策づくりを行っているが、まだ「新しい資本主義」の骨子は固っていないのが現状。福田氏はカーボンニュートラル対応や労働市場、教育改革、過度の海外依存体質からの改善など様々な課題に触れつつ、首相に対し、「とにかく具体像を出していただく。1年間国民の声を聞き、君子豹変して、行動に移る。まさにそのタイミングかと思う」と説いた。