「政民東京會議」11月8日 講師/バシール・モハバット 前駐日アフガニスタン・イスラム共和国大使館、特命全権大使

2022年11月08日
  
  「(アフガニスタンの現状と日本との関係について)&タリバンの影響及びウクライナ問題をふまえた両国の過去、現在、未来」
 

 アジア大陸の中央に位置し、イランやパキスタンなどに囲まれたアフガニスタンは、5千年の歴史のなかでアレクサンダー大王、チンギスハン、大英帝国、旧ソ連など多くの国から侵略を受けてきた。しかし、アフガニスタン人は、自分たちの文化や宗教を守りたいという強い愛国心のために屈することはなかった。19世紀末に英国の保護領となり、1950年〰70年代はとくに平和な時代で、男女平等の思想の下、若い女性も最先端のファッションを楽しんでいた。1979年の旧ソ連の侵略によって89年までの10年間に200〰300万人ものアフガニスタン人が亡くなり、1千万人の難民が生まれ、国は疲弊した。いまも旧ソ連軍の爪痕は街中に残っている。

 その後、タリバンが急速に勢力を拡大し、2001年のアメリカ同時多発テロ事件を受け、米軍を中心とした多国籍軍はタリバン政権を攻撃。この20年で多くの国からの支援を受けてアフガニスタンは目覚ましく回復、発展を遂げた。とくに日本からは20年間に7500億円規模の巨額の援助を受け、感謝している。仏教はアフガニスタンから日本へ伝来し、日本とは2千年もの交流がある。文化面では常滑市などの技術支援によって瀬戸物文化を復興することができた。2021年以来タリバン勢力が復活したが、アフガニスタンは必ずよくなる。

 在住46年になるというモハバット前駐日大使は流暢な日本語で、アフガニスタンの地理的な特徴と周辺国との関係性について解説。とくに、季節や地域によって様々な表情を見せる豊かな自然や鉱物資源、明るく純粋な国民性から来るおもてなし文化などアフガニスタンの魅力についてエネルギッシュに語った。

 アフガニスタンの資源がパキスタンに流出し、中国に鉱山資源を搾取されている現状などについても述べた。

 モハバット前駐日大使は、「アフガニスタンの安定なくして世界情勢の安定はない」「タリバン政権に求めるのは、民主主義、女性の権利、言論の自由が保障された普通の国」とし、「世界はタリバン政権を認めておらず、この20年の間に若者が目覚めた。朝の来ない夜はない。アフガニスタンにも必ず安定した民主的な政府ができる」と述べた。このほか、アフガニスタンの灌漑事業に尽力した中村哲医師について「自分が女性だったら何度も結婚したい」など氏の魅力について熱く語った。