「アジア会議」2021年2月22日 講師/興梠 一郎 神田外語大学教授

2021年02月22日
  
「いま中国で何が起きているのか?~「習近平体制」を読み解く~」
 
 トランプ政権は、新型コロナウイルスは、中国湖北省の武漢ウイルス研究所から流出した可能性があると主張した。今回、WHO調査団は、中国との共同記者会見では、「ウイルスが研究所から流出した可能性は極めて低い」と結論づけたが、帰国後にすべての仮説は可能性があると言い換えた。当初、中国側に取り込まれたという見方もあるが、2019年12月時点ですでに中国国内に新型コロナウイルスの感染者が1000人以上いたことがわかり、中国がWHOへの新型ウイルスの報告を怠っていた可能性がさらに強まった。コロナウイルスの起源は、このほか実験室の廃棄物の管理の不備から起こった事故が原因という説、ワクチン研究のために行った機能強化実験の過程で起こった可能性などについても指摘されている。前回のSARS同様、情報操作、隠蔽がなされ、科学の領域を超え、政治的圧力が背景にあった疑いは、いまだ払拭されていない。

 米バイデン政権は、ロシアを脅威とみなす一方、中国に対しては、気候変動問題など協力しあえるところは協力したいという姿勢を見せており、中国側は、トランプ政権ほど強硬的にはならないと期待しているようだ。

 尖閣では、中国海警局が領海侵入を繰り返し、日本漁船を追尾し、日本の実効支配を切り崩す構えを見せている。早急な法整備や装備の強化などで対応していく必要がある。経済における日中のデカップリングは容易ではないにしても、技術と軍事がからむ領域は別である。しっかりと区分けする必要がある。

 「中国を特殊に見がちだが、中国の動きは人民日報や地方紙などの公式報道を繋ぎ合わせることで流れをつかむことができる」と興梠氏。中国、米国の報道を様々な角度から分析し、新型コロナウイルスの起源、中国の外交戦略などについて詳細に解説した。その後の質疑応答で中国経済のアキレス腱について質問が及ぶと、地方財政と金融リスクだと指摘。民間企業も政府のコントロール下にあり、市場経済化と逆行しており、アリババへの中国当局の圧力の背景にある利権構造についても言及した。