「アジア会議」2020年6月23日 講師/古森 義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員・麗澤大学特別教授・Japan Forward 特別顧問

2020年06月23日
  

「コロナウイルスは世界をどう変えるか」

 新型コロナウイルスにより米国はベトナム戦争、朝鮮戦争以上の死者数を出し、物理的にも未曾有の被害を被った。ここまで米国の被害が拡大したのは、トランプ政権が当初ウイルスを過小評価していたこと、移民が多いことから来る国民の持つ開放性や中国との交流の大きさが背景にある。米中関係が悪化する状況下でも米国の中国人留学数は35万人と圧倒的に多い。

 感染者数が増加するにつれ、トランプ大統領は中国への発言をエスカレートさせ、「断交」「完全切り離し」との表現も飛び出した。トランプ政権は中国への対決姿勢を強め、武漢ウイルスの出所の調査やWHO(世界保健機構)と中国政府の関係の調査をはじめ、米国企業の対中サプライチェーンの減少、中国製品への依存減少など具体的な政策を打ち出しているほか、各省庁での対中抑止政策も強化している。

 コロナ収束後の世界はグローバリゼーションの後退、主権国家の役割を再認識することになるだろう。感染封じ込めのため、EUでは次々と国境封鎖に踏み切り、共同体としての土台が揺らいでいる。米国内では引き続き対中警戒を強めることになろう。最も新型コロナウイルスにうまく対応したのは台湾、ベトナム、モンゴル、香港、マカオ。共通するのは早い時期に中国からの人的流入を止めたことだ。

 今回のウイルスが中国の武漢から起こっていることは明白だが、日本では中国について論じられることがほとんどない。米中関係が悪化するなか、日本がどう両国と付き合っていくか、真剣に議論することが必要だ。

 古森氏はこのほか、州知事が大きな権限を持つ米国の連邦制や、黒人デモの背景にある反トランプの動きについて解説したほか、現在の中国の日本を圧倒する軍事力についても言及。「日米同盟を維持することが将来ますます重要になっていくなか、抑止力という意味でも日本独自の防衛の増強も真剣に検討していくべき」と述べた。そのほか、質疑応答でも次期大統領選の行方や米欧対決など、さまざまな質問が及び、活発なやりとりが行われた。