「アジア会議」9月29日 講師/古森 義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員・麗澤大学特別教授

2021年09月29日
  

「アメリカのアジア政策の光と影」

 国内政策を優先させてきたバイデン政権だが、アフガニスタン撤退の失態、豪への原子力潜水艦技術を供与する方針をめぐるフランスとの衝突など、外交政策に大きな綻びが見え始めた。メキシコ国境の壁建設中止で急増する中米からの密入国者への対応や、バイデン大統領自身の質疑応答を受け付けない、事実誤認の発言の数々に統治能力も疑問視され、支持率は低下の一途。政権の雲行きが怪しくなってきた。バイデン政権はトランプ前政権を踏襲して対中政策の強固な部分を保ちながらも、気候変動やコロナ対策、大量兵器拡散防止などに関しては「協調する部分もある」と含みを持たせ、強硬と柔軟の部分が入り交じったまだらな対中政策を進めてきた。

 とくにバイデン政権の軍事軽視は顕著で、中国はこの機に乗じて台湾への積極攻勢、南シナ海での軍事攻勢を強めてきた。社会福祉、インフラ優先は民主党の伝統だが、米国内の世論は中国に厳しく、バイデン政権も中国には厳しい対応を取らざるを得ないだろう。

朝鮮半島問題、北朝鮮の非核問題がバイデン政権が議論を打ち出すことはほとんどなく、いまの北朝鮮は米国に直接の脅威ではないという認識が強いようだ。北朝鮮の短距離、中距離のミサイル発射実験に対してもバイデンの政権の反応は薄い。

 米国の日本に対しての姿勢はトランプ前政権、バイデン政権とも基本的には変わらず、同盟国としての負担増、共同防衛の拡大を求めることが本音だといえる。菅首相は「防衛力強化の決意」を述べたが、実効措置をなにもとっていない。日本が従来通りの対応を続ければ米国内の議会の反発も必至。米国は超党派で日本に中距離弾道ミサイルの配備を期待している。台湾有事の際には日本も戦闘に参加せざるを得ない局面があるだろう。日本にとって国の在り方を問われる局面がすぐそこまで来ている。

 日米を往復しながら精力的に取材活動を続ける古森氏。米国内の対中布陣の顔ぶれ、米英豪のAUKUS(オーカス)成立の背景、米が豪に原子力潜水艦の技術供与をするに至った経緯、カブール陥落、トランプ前大統領の国内での存在感、日本の核保有のシナリオなどについて詳細に解説。その後の質疑応答でも活発なやりとりが行われた。