「アジア会議」2020年10月30日 講師/山田 惠資 時事通信解説委員

2020年10月30日
  

  「菅政権は何を目指すのか」

 政権には明確なビジョンを大きく掲げ、国民へ理解を求めるものと、ビジョンより、国民優先で国民と対話するスタイルの政権とがあるが、菅政権は戦後のわが国の多くの政権がそうであったように後者といえるだろう。安倍前政権が憲法改正、北方領土問題解決というすぐには解決できないテーマを掲げていたのとは対照的だ。ただ、憲法改正、北方領土問題では支持率を維持できないため、株価を上げるために打ち出されたのがアベノミクスであった。ビジョンがないのが菅政権の強みでもあり、“国民のために働く内閣”というのが菅政権の本質。その分携帯料金値下げなど目の前の政策で一つひとつすぐに結果を出さねばならないという側面もある。

 安倍前首相は半年前の報道番組で、憲法改正の議論が進まないことについて問われると「次の総理が成し遂げる」と暗に続投の意志がないことを表明していた。その時点では憲法改正を行うためには岸田氏を後継者と考えており、当時の菅官房長官とは緊張感があった。菅氏が幹事長になれなかったのがその証左だ。昨年の参院選で岸田氏が幹事長になっていればその時点で退陣したかもしれなかったが、その後、新型コロナウィルスの対応に追われて体力を消耗し、支持率も低下。持病の悪化は退陣理由には違いないが、辞め方は意図的だったようにみえる。

 山田氏は菅政権誕生の経緯について詳細に解説。「年内は解散総選挙はなく、来年秋の衆院任期満了直前になるのではないか」との見通しを述べた。このほか、日本政府のコロナウィルスへの対応、とくにPCR検査の少なさに対する背景や、菅政権と公明党との関係についても言及。米大統領選の結果判明が遅れる可能性にも触れ、「菅政権の本格的な外交はこの1年は様子見となるだろう」と語った。さらに、バイデン政権が誕生した場合の南北関係、米韓関係など、さまざまなパターンについても分析した。その後の質疑応答でも活発なやり取りが行われた。