主張

「創意工夫」

天皇皇后両陛下をお見かけするたびに感銘を受ける。いついかなるときも変わらぬお姿で、どんな人に対しても両陛下の平等で笑顔を絶やさないお姿に尊敬の念を禁じ得ない。両陛下 は日本の伝統、文化の象徴であるのもうなずける。その発露は国民をすべからく信用し、それぞれの立つ位置で日本を支えているというお考えからだろう。
話は変わるが、私は最近ある経営者の良からぬ姿を見た。まるで社員を幼児か子供のような扱いをしている発想だ。もちろん、社長たるもの厳しさがなくてはならない。しかし、過剰すぎるのもどうかと思う。たしかに、この会社では、社員が社長の意見を求めない
とすべてが前に進まないのだ。
先日、ライフコーポレーションの清水信次氏がトップ懇談会でスピーチをされた。そのなかで印象に残った言葉がある。それは、「社員にはあまりとやかく言わないようにしている。トップダウン
で命令しすぎると社員に自発性がなくなる。清水氏がいまの社長に対して、もし会社が潰れたら私が責任をとるから、自分の思うようにやりなさいと命じている」。そうしたら、見る見るうちに会社の
業績が伸びたという。老婆心ながら注意するときは、こうやった方がうまくいくんじゃないかと、頭ごなしに言うのではなく気づかせることに配慮したという。つまり、社員が自分の創意工夫、判断と
責任で行動するようになることだ。これは取りも直さず部下を信用すればこそできる業である。
企業経営には、製造面、技術面、販売面、資金面における専門的な知識も必要であるが、経営の基礎は人であると、よく言われる。先日、ある経営者と会ったとき「あなたの会社は何をつくっているのですか」と尋ねたら、「私の会社は人をつくる会社でありますが、そのついでに○○を販売させていただいています」との返事。私は一瞬驚いたが、この一言が氏の経営理念であり、この考えで指導者としての生き方を貫き、社長業の大半を賭けてきたのだ。つまりは、人の育成のあとに、金がついてくるという考え方だ。
言われたことしかせず、事なかれ主義、無責任な社員であっては会社は発展しない。まず社員を信用して力を引き出すことがこれからの会社経営に求められるのではなかろうか。