山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     安倍自民党総裁で歴史観は変わるか

2012年11月01日

国家には長い歴史があり、国民に課せられた使命とは、過去と現在を確かなものとして未来に継承していくことであるが、戦後わが民族は戦争を断罪し、過去を否定したばかりか、現在とともに未来も見失いつつある。歴史問題は国家の存亡にかかわる重大な問題であるが、政府にも国民にもまったくその認識がない。

たとえば、平成5(1993)年、当時の河野洋平官房長官が、「従軍慰安婦の慰安所の設置に日本軍が直接的に関与した」とする「河野談話」を発表し、隣国の韓国や中国から捏造された歴史観を日本政府が認めるに至っている。これはわが国の政治・外交における完全なる敗北宣言であった。日本国民とその歴史を侮辱する歴史謝罪がもたらすものは、世界中の軽蔑と賠償責任の再燃でしかない。

民主党政権下で顕著な韓国への従属外交

かつて韓国は日本の植民地であったが、いまではまるで日本が韓国の植民地になってしまったかのような政治姿勢がみられる。とくに民主党政権となって以来、韓国に対する隷属的な姿勢が顕著だ。たとえば、日韓併合100年に際して、複数の民主党議員が韓国青瓦台(大統領府)を訪れ、日本側の対応について伺いを立てたという。以下は同行した民主党議員や関係筋から入手した情報の一部である。

日本側:日韓併合100年に向けてどのような内容の「首相談話」を希望されますか。
韓国側:本来なら村山談話を超えるものなら文句はないが、日本の立場もあるのでお任せするしかない。
日本側:もし村山談話を超えるなら、日本国内で大騒動になる。賠償問題などに強く踏み込めば、今度は中国も黙ってないでしょうね。
韓国側:この際、日韓併合も強制的に行われたとの文言を加えた菅談話が望ましいですね。

日韓併合100年に際して、首相談話を検討し、誘導したのは仙谷由人元官房長官とされている。とくに仙谷氏はこれまで一貫して従軍慰安婦問題について強いこだわりを示してきた。

意図的な歴史歪曲を作り出した韓国の「反日」

日韓併合100年に合わせた菅直人首相談話であるが、菅氏は「韓国の人々の意に反して植民地支配は行われた」と韓国併合の強制性に初めて踏み込んだ。この「菅談話」で一時的に反日ムードは下火になったが、その後、韓国側はこれらを根拠に従軍慰安婦問題を持ち出したり、李明博大統領の非礼な発言と態度で日韓関係がさらなる悪化を辿ることになる。

日韓併合は強制的に行われたものではなく、当時の韓国政府とわが国政府間の合意であったことは明らかだ。弊会本部にもそれを裏付ける資料が大量に保存されている。これらの資料が国に無い訳がない。にもかかわらず「菅談話」で従軍慰安婦の「強制性」に加え、日韓併合にも「強制性」という文言を加えたのは、お笑いだ。これら菅氏の反日的な姿勢が疑問視される昨今であるが、氏はどこの国を代表する首相なのか。

仙谷氏らが強引に「菅談話」を発表させれば、その後、賠償金を日本政府が支給することになる。これは「戦時性的強制被害者問題の解決促進法案」にあるとみられる。これには仙谷氏の親友であるといわれる高木健一弁護士が深く関わっている。氏はインドネシアでも慰安婦問題で運動し悪行の数々を煽るなど札付きの悪徳弁護士といわれている。つまり、日本の首相に謝罪させることで裏で金が動く仕組みを作ってきたが、それには歴史の歪曲と政治的力学が背後にあることが条件だ。韓国の若手評論家・金完燮(キム・ワンソプ)氏は、「韓国の反日感情は意図的な歴史歪曲によるものであり、歴史を歪曲しているのは韓国人である」と述べている。

河野・村山談話に代わる談話で新たな日韓関係へ

安倍晋三自民党総裁は歴史問題をよく勉強しており、専門筋の間でも評価、信頼性が高い。経済・教育・歴史・憲法・皇室・外交問題など国の根幹に関わる問題に氏ならではの思想・哲学・理念による持論がある。安倍氏は軍による強制連行という事実を示す資料や証言、証拠もないのにあったとする虚偽の政府談話は韓国側に間違った誤解を与えると懸念している。

安倍氏は月刊誌のインタビューで再び「首相になるなら靖国神社に参拝したいし、『河野談話』『村山談話』に代わる新たな見直し談話を閣議決定したいとも語っていた。この見直し談話が韓国との重要かつ良好な役割を果たすと信じている。しかしながら、安倍氏らの意向に反して「強制連行の証拠がなくてもあったと韓国側に妥協したことで政治決着した経緯をないがしろにしてもいいのか」とする強硬意見もある。

河野洋平氏らを国会で承認喚問せよ

河野・村山談話による根拠なき慰安婦の強制連行は韓国側に誤った根拠を与えてきた。何ら事実もないのにあったかのように偽りの発言を行うことで韓国側が戦前戦後にはなかった「従軍慰安婦」という新語を作り出し、賠償金を請求する根拠としたのである。そして、わが国の「反日」勢力によって正当化されてきた。いずれにせよ、歴代首相が「両談話」を継承してきたことは周知のとおりである。

産経新聞はこれまでも社説検証で「国会は河野洋平氏らを証人喚問し、談話発表の経緯を究明する必要がある」と論じている。安倍氏らはまずこの問題に決着を図ることが近隣諸国との健全な信頼関係を築く原点だと考えていよう。

韓国の一般女性を軍人が強制連行して強姦するなど、規律の厳格な当時の日本軍には考えられないことであった。軍の便所には「第一条 軍人は忠節を尽くすことを本分とすべし」が一面に張り巡らされていた事実を筆者は目撃した一人だ。兵士らは、もしこれに違反しようものなら鬼より怖い憲兵隊に捕まり、軍法会議にかけられると恐れていた。軍律に厳しい日本軍が、現実に他国の一般女性に対して強制的な手段で迷惑をかけるなど考えられないことだ。

中韓の歴史認識を容認する政府

このような結果を招いたのは日本人が戦後、国に誇りを持てる歴史教育を怠ってきた所以であった。それどころか、相手国の主張する根拠のない歴史観を容認するかのような教育が行われてきたのである。日本政府が根拠なき談話を発表することで韓国はそれを根拠にし、結果、「菅談話」につながった。

わが国が歴史教育を行わなかったために、過去は空白になり、その隙を突いて根拠なき「南京大虐殺」が生み出されたのである。そこでは虐殺の捏造写真が出回ったり、いつの間にか被害者が当初の2千人から30万人に増えるなど、嘘の史実がまかり通ってきた。しかも本来、そうした事件が事実無根であることを世界にアピールすべき外務省が何ら関知せず、放置するばかりでは、全く無責任な存在感だ。

このような状況下にあって6年前、保守派は当時の安倍晋三首相に大いに期待したものである。しかし、安倍氏は靖国神社に行くとも行かないとも言わず、結局在任中靖国神社には参拝しなかった。しかも、「河野談話」の見直しにも言及しなかった。それゆえ保守派から「変節」とも受け取られた経緯があったことは否めない。

対中韓関係を見直し、親日国家との関係強化に努めよ

安倍氏は短い在任期間中に歴代首相が成し遂げられなかった多くの業績を残したが、わが国の歴史という根幹の部分はついに手つかずのままであった。こちらに理があり正当であることに蓋をして国益を放置するなら外交は成り立たない。今回も歴史問題を放置し、言うだけ番長なら安倍氏は期待外れだ。

戦前、戦後を通じてわが国は中国、韓国の近代化のため、インフラ整備をはじめ、膨大な資金援助を行ってきた。にもかかわらずわが国は感謝されるどころか、彼らは逆に捏造した歴史観を押しつけ、賠償金をせしめようと因縁をつけてくる。中国、韓国は日本が弱いとみると徹底的に執拗に食らいついてくるのは国際間の弱肉強食の原理だ。

時代は大きく変わろうとしている。今回の「反日デモ」を機にわが国は中国、韓国との政治・経済関係を見直す段階にきている。世界には親日国家も数多くある。今後は地理的に近いというだけの「反日国家」からインド、オーストラリア、東アジア成長国など、「親日国家」との安定した関係を構築する過程に入ったのではなかろうか。

次回は11月8日(木)