木曜コラム

山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     安倍政権で日本は劇的に変化する

自民党は9月26日、総裁選で安倍晋三元首相を第25代総裁に再選した。間近に迫る次期衆院選で自民党が勝利すれば、新総裁の安倍首相が誕生する。今回の総裁選では石破茂氏や石原伸晃氏が優勢と伝えられていたが、結果は安倍氏が大逆転勝利となり、番狂わせとなった。なぜ安倍氏は不利な状況の中から再選することができたのか。

たとえば、かつての自民党の末期に似て、民主党政権には親中親韓派議員がはびこり、隷属的な政治姿勢を示してきた。彼らは歴史的問題であれ領土問題であれ、わが「国家国民」より他国を優先する立場を取ってきたので、国民から不信と反発が芽生え始めている。

報道によると、尖閣の領有権をめぐり、民主党の鷲尾英一郎農林水産政務官は「尖閣は中国政府が所有してもいい」と言った。もし中国が尖閣を所有すれば、日本は領土を失い広大な海洋権益を失うことになる。この鷲尾発言は驚くべき亡国論であるが、本人は一部を取り上げて非難されるのは心外と言い訳した。

国内外の反日勢力を敵として

いずれにせよ、「日本の実効統治を否定し、国益を相手国に売り渡してもよいとする神経は理解できない」。しかし、民主党議員の中には尖閣を中国の所有権に移せば「反日デモ」も収まり、日中関係がよくなると考える人もいるらしい。「あんな小さな島に固執せず、中国に譲れば日中戦争を回避し国民の平和と安全を守れる一つの方法だ」というわけだ。彼らは即刻国会議員を辞職すべきで、次の選挙で当選させてはならない。

わが国を取り巻く周辺諸国は「反日姿勢」がエスカレートしている。韓国は竹島を実効支配し、李明博大統領の日本に対する侮辱発言は常軌を逸したものだ。北朝鮮の核開発や拉致問題で解決の糸口すら見えない。台湾は「反日」で有名な国民党の馬英九総統が「尖閣領土」を主張している。中国の海軍軍艦が日本西端の接続水域で確認され、ついに武力の威嚇をみせ始めた。わが国を取り巻く国際環境の変化を目の前にして、国民の意識は自衛隊にしっかりやってもらいたいとの声が醸成されつつある。

日本を取り巻く国際状勢は日々危機的な状況に変わりつつある。それにつれて国民も憲法改正に関心を持ち、安全保障を意識して右傾化するなど風向きが微妙に変わり始めた。こうした中、自民党の総裁選で次は安倍晋三氏が再登板して、いまこそ新しい風が必要だとの意識が働いたのも自然の摂理というものだ。

親米保守と抵抗勢力の闘い

安倍氏が自民党総裁に選ばれたのは、「明確なビジョン」を持つ首相経験者であり、実績に対する期待が高かったからとの見方が有力だといえよう。安倍氏は短い在任期間中に、歴代首相が手をつけなかった案件をこなし、多くの業績を残したことが高く評価された。
たとえば、①教育基本法の改正、②憲法改正法案のための国民投票法の成立、③防衛庁から防衛省への昇格等々である。

特に米国では安倍氏に対する認識と評価が高く、歴史認識、国益優先、対米協調、安全保障体制の確立を始め、対国際テロ闘争に対しては堅固な協力を結集した。つまり、安倍氏の政治・外交の基本理念とは“自由、民主主義、基本的人権、法の支配”など、日本と同じ価値観を共有する国との関係を強化することに他ならない。

安倍氏が首相になれば、こうした理念と政策が再度強く打ち出されよう。しかし、党や官邸、外務省がどこまで一体感を持って安倍氏に協力できるかが分かれ目になる。政権発足後は官庁・マスメディアの一部、リベラル勢力らによる反発と安倍潰しは必至となろう。

安倍氏に期待できる理由

しかし、安倍氏の凄いところは、反対勢力に叩かれようが、抵抗を受けようが、正しいと信ずる案件はスピーディに可決させていくことであった。その中で躊躇した問題の一つに、在任中、靖国神社の参拝ができなかったことがある。それを悔いたゆえに、10月17日、安倍氏は自民党総裁として靖国神社を参拝した。これまで「首相在任中に参拝できなかったのは痛恨の極み」と述べているが、政権奪還前に公約を先取りしたものだ。

9月下旬、筆者はキューバの元首相カストロ氏のご長男ら数人と六本木で会食の折、安倍氏の側近である自民党衆議院議員下村博文氏(安倍内閣時代の副官房長官)と久しく会う機会があった。筆者は「安倍政権になったら日本は劇的に変わるんじゃないですか」と下村氏に言ったら、「私もそう思います」と答えた。

安倍氏の本質を語るには、祖父安倍寛の血を色濃く受け継ぎ影響を受けた経緯を知らずして理解することはできない。安倍寛は昭和の吉田松陰といわれる信念の人で「憂国の士」である。衆議院議員時代は8人の侍の一人と言われ、近衛文麿元首相らの大政翼賛選挙には体を張って反対した武骨の政治家であった。安倍氏は岸信介にも影響を受けたが、むしろ生き方は安倍寛のDNA、遺伝子を強く受け継いだと本人が言っている。

戦後レジームからの脱却

安倍氏が戦後の制度や仕組みを変えると言うのは「戦後レジームからの脱却」だ。これは一言で言うと、これまでの体制を壊すということである。それなら権力を手中に収めてきた権力者たちにとって安倍氏は絶対的な敵であり、いかなる手段を用いても安倍潰しは緊急課題となろう。これは権力を持つ霞が関から安倍政治が主導権を奪い取るということだ。

さらに言えば、安倍氏の狙いは公務員制度改革を目的とする公務員給与の大幅カットだと見られている。これを仮に地方公務員併せて20%カットすると数兆円規模の人件費がカットされるが、それでも民間より高い給与である。この肥大化した行政を放置すればギリシャの二の舞になる。ギリシャは国家公務員の高い人件費や天下り、無駄遣いで財政を破綻に導いた原因であるとは周知のことだ。

いま、わが国とギリシャは同じ道をひたすら走り続けている。一般企業の人件費は年々下がり続けているのに、国家公務員の給与はバブル全盛時代の基準と変わらない。計算の仕方次第では民間企業と比較対比して平均2倍近い所得格差を指摘する試算もある。公務員給与のカットを公約した民主党政権も“言うだけ番長”に終わった。国民にいかなる不満があろうとも、官庁に権力が集中する限り、安倍氏の「戦後レジームからの脱却」は絵に描いた餅だ。

安倍政権の第一は抵抗勢力との闘いだ

しかし、この公務員改革を政策の中心に掲げれば、安倍氏は小沢一郎氏の二の舞になる。「週刊朝日」の橋下徹大阪市長の出自に関する連載記事は橋下潰しのスタートと言われていた。しかし、橋下氏は小沢氏と違って過激に反論し朝日側が折れたかたちで連載打ち切りとなる。今後政治指導者の批判、政権潰し、報道のあり方が問われよう。

その点、小沢一郎氏の場合は橋下氏のケースと違って全く根拠もなければ事実もないのに、検察によって一方的に罪人扱いされてきた。小沢氏の「男は黙って結果を待つ」では、結果の出た時には立ち直れないほど政治力を失ったまでのことだ。小沢氏の事件は民主党内でもこれは検察による小沢潰しと理解する見え透いた事件であった。

安倍政権が誕生すれば、一番の問題は抵抗勢力からの攻撃ではなかろうか。しかし、橋下氏の反撃は安倍、小沢氏らに参考になる事例であった。安倍氏の「戦後レジームからの脱却」を始めとする「理念と哲学」は霞が関を敵に回すことだ。安倍氏は政策を実行するためには閣僚の人選など、スキャンダルにならない慎重な人事の選択と行動が問われよう。

安倍氏のリーダーシップに期待する

政治権力の争いは“やくざ”の抗争事件と似ているという人もいる。“勝つか負けるか”負ければ只の人たちだ。総選挙で負ければ誰からも相手にされない。“やくざ”も止めれば只の人で、彼らからも相手にされなくなるという。安倍政権にとって大きな問題はまず最初に取り組むべきは抵抗勢力との調整であり戦略であり、決して途中で挫折してはならない。

外交においても、わが国の歴史、伝統、領土、国民生活を守るには、外交力と安保体制を徹底的に強固にすることだ。対中融和路線や日韓協調は表層的な儀式であって、外交とはその裏で軍事力と経済力が物を言う世界だ。安倍政治はそれらの期待に応えられる稀有な政治家だと、多くの国民が期待して止まない昨今である。(次回に続く)

次回は11月1日(木)