木曜コラム

山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     米中の国内問題

中国の軍事予算は2011年の1198億ドル(約9兆5千億円)から2015年は2382億ドル(約18兆8400億円)に増額される予定だ。このままいくと3年以内に中国を取り巻くアジア諸国の全軍事予算をはるかに上回る見込みだ。たとえば2013年の米国軍事費は5254億ドル(約41兆5300億円)であるが、2月16日付の人民日報は中国の軍事費はやがて米国を超えると伝えている。

こうした軍拡の中でも、今中国が最も力を入れているのがロシアから買い受けた航空母艦である。これは空母を中心とする機動艦隊で構成され、強力な米海軍を南シナ海に近付けないことが狙いだ。さらに潜水艦の増強に力を入れており、既に60隻以上を実戦配備している。これは米国の原子力ミサイル潜水艦と同じ性能だ。

一方、空軍は、「見えない戦闘機」ステルス戦闘機の量産態勢に入った。地上兵力の主力戦車や水陸両用戦車の実戦配備も既に終わっている。このように中国の軍拡が進みつつある中、米国は財政赤字が急拡大して、軍事費の削減を余儀なくされる等、今や米中の逆転現象が進行中だ。

世界の警察官・米国の没落が招く日本の安全保障の危機

しかしながら、米国は4000機の空軍戦闘機、350隻の艦隊と17万の海兵隊、50万の陸軍部隊他海外駐留の30万人を含めて150万人近い兵士が待機している。米国は軍事的には世界の警察官として機能している一方で巨額の財政赤字と経済不振に喘ぎ、「世界の警察官」から後退せざるを得ない状況もある。日本の平和と安全、繁栄は米国の軍事力に守られてきたが、米国の軍事力が衰退すれば日本の安全保障戦略が抜本的な見直しに迫られよう。

中国は米国の軍事力が後退したと見れば、尖閣諸島や台湾をはじめ、他国の領土を一挙に既成事実化する可能性がある。今後シーレーン確保のため、南シナ海から米海軍を追い出し封鎖するのが中国の最大目標である。

米国の財政赤字と中国の軍拡によって米中の軍事的均衡が10年以内に崩れるとの見方もある。米軍海兵隊は沖縄からグアムに引き揚げ、空軍戦闘部隊もグアム、ハワイ、アラスカに移転した。しかも横須賀にある空母「ジョージ・ワシントン」も近々退役する。米国は日本が有事の際は全世界の米軍基地から24時間以内に紛争地域に集結する。それまでは自衛隊が専守防衛で国土を守るが、駆けつけた時は間に合わないという事態も起こり得よう。

自国防衛に関心の薄い日本国民と国家

わが国の米軍基地から海兵隊、空母、戦闘機などが退役すれば、結局は自衛隊が日本を守らざるを得なくなろう。しかし日本政府と国民が自国の安全に無関心な中でどうして国土を守ることができようか。中国が今の調子で軍拡、経済成長が続くと、10年20年後には米国を抜く可能性も高いと見られているが、中国もたくさんの国内事情を抱えている。一方、米国が日本や東アジアを失えば巨大な権益を喪失すると共に中国との衝突は避けられない。

自称「世界の警察官」である米国は世界を相手に戦争ばかりをしてきた国である。中国は建国以来、本格的な戦争を一度もしたことがない。ベトナムや朝鮮戦争に参入したが、本格的な戦争はしていない。その中国が台湾向けの巡航ミサイル1200発を配備、米国本土を攻撃できる射程1000キロ以上のミサイルを保有している。

一方、米軍は自国の財政赤字のため技術開発の資金がなく、自衛隊に売却する予定のF-35ステルスも日本に納入できない有様だ。オバマ政権は、社会福祉費の増大に力を入れるあまり、財政赤字を増大させ、軍備費にカネが回らず軍事大国からすべり落ちる政策を取り続けている。

東アジア支配を狙う中国

米軍が後退すれば中国の周辺諸国に対する発言力が一層強まることになろう。一方、日本国内では親中勢力が中国に同調する動きもある。彼らが本当の日本国民であるか否かは疑問だ。日本人の戸籍を持った顔をしているが、やることなすこと反日的な動きでわが国を貶めている。

わが国自衛隊は国内外で2つの敵と対峙せねばならない。これまで米国は経済不振で軍事力が弱体化すると共に「世界の警察官」から後退するとの見方を述べてきた。しかし米軍の兵士や兵器が日本から撤退すれば日本の周辺が危険水域になるが大多数の国民が危機意識を実感し共有しよう。

東シナ海での巡回体制強化のために中国は監視船を増強している。アジアが中国の一極支配になれば、日本、韓国、台湾は中国のコントロール下に置かれよう。しかし、中国経済の成長がどこまで続くのか、国内事情はどうなるのか、米国より中国が先に倒れることもある。次は中国の内部事情を分析してみる必要がある。

中国は本当に世界の軍事大国になれるか

米国のみならず、中国にも深刻な事情がある。この数年、中国は世界の大国であるかのように喧伝されてきた。しかし、現実は「張り子の虎」のようなもので、ひと皮めくれば深刻な格差社会に喘いでいる。胡錦濤政権が危惧するのは共産党官僚の腐敗と堕落であり、人民による無法政府への憤りがくすぶっていることだ。また、これまで年10%の経済成長率と大がかりな財政出動が中国経済を支えてきた。しかし無謀な元の増刷による代価をどうやって払うつもりなのか、まもなく大きなツケが突然やってこよう。

中国の財政赤字は年々ふくれあがっているが、国有銀行の不良債権と国債発行額を合わせれば、いつパンクしてもおかしくない。それに加えて、高級幹部らの汚職だ。14日閉幕した中国の人民代表大会の後、温家宝首相は記者会見で政治改革が進んでいないと嘆いた。温氏は「文革の悲劇が繰り返される恐れがある」「党員と幹部は緊迫感を持つべきだ」と訴えている。温氏は中国人民の不満が爆発寸前にあることを知っての発言だ。

温氏の発言は党や政府に集中する権益を大多数の幹部が汚職や賄賂をほしいままにしていると警告した。さらに、中国経済の発展とともに不公平な富の分配で中国共産党の足下が揺らぎ始めたとのいらだちを募らせている。このままでは文革の二の舞いになると強調した。中国は今こそ改革すべきだというが、改革とは暴力行為であり、毛沢東の文革は改革という名のもとに3000万人が虐殺されている。

軍の権力が江沢民から胡錦濤へ

重慶市のトップ薄煕来・市党委員会書記(62)が解任された。薄氏は中国共産党の次世代指導者の一人であり、習近平次期主席と同じ太子党グループに所属する大物だ。時を同じくして解放軍総後勤部の副部長・谷俊山中将も軍規違反として解職された。これらの汚職まみれの大幹部を摘発したのは劉少奇元国家主席の息子で劉源大将であった。

劉源大将は胡錦濤主席が手塩にかけて育てた子分であり、軍では重要な存在である。その後、軍頭たちは劉氏に倣って「全軍は胡錦濤主席の権威を守り指揮に従う」と忠誠を誓った。江沢民前国家主席らの支持を受け、権勢をほしいままにしてきた薄氏が失脚したのは軍の権力が江沢民氏から胡錦濤氏に移った直後の事件である。

これまで軍の権力者は江沢民氏の影響が大きく、胡錦濤氏は何も言えず忍耐あるのみだった。今後習近平政権は胡錦濤氏が軍を握ることで一目置かざるを得ない。しかし「習体制」は中国の権力を担うにふさわしい「見識」と「能力」を持つ指導者として期待している。これまで「胡・温体制」は他国を威嚇し国際ルールを無視して中国覇権主義を貫いてきた。しかし筆者は「習体制」になると他国との協調、国内矛盾の改良に重点を置かないと中国は持たない段階に入ったと思っている。

米中は新しい時代に向かっている

現今中国内部の実状、環境破壊はますます深刻だ。8億人が汚染された水を飲み、9億人がなんらかの慢性病を患っている。政府への大小デモは年間10万件を超え、都市部だけで5千万人の失業者があふれている。世界第2位の経済大国がこんな悲惨な状態にあるのは中国の政治と経済システムにすべての原因がある。

これまで、「米中の国内問題」に関して、現実的な問題点を指摘してきた。このように腐敗と堕落した米中の社会構造を容認してきた国民に最大の責任がある。米国は一握りの富裕層のためにマネーを商品化しマネービジネスを破綻させるなど全世界に損失を与えた。中国も支配層が競って贈収賄に明け暮れた。このような政治家と富裕層を一掃しないと米中の貧困層は地獄の苦しみから脱出できないであろう。

中東に吹き荒れた変革の嵐は、国民が立ち上がることで政治が劇的に変化したものだ。政治が変わらなければ人々の暮らしはいつまでも地獄の底だ。米中間で共有する深刻な事態とは格差社会である。貧困層にとって苦しみのある社会制度なら選挙で政治を変えることもできるのが民主主義だ。今後米中が政治と経済を変革させるには無能な政治家と特定の富裕層を退場させるシステムの改良が大きな課題ではなかろうか。

次回は4月5日(木)