木曜コラム

山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     財務省権力と世論

わが国の政治状況は、民主党政権になって雪崩を打つように悪化し始めた。国の進路が不透明な中、中小企業の多くは借金まみれで自転車操業を余儀なくされ、あたかも大海にさ迷う小船のようだ。日本の危機は国の支配者たちによる大局観を失った理念と政策の衰退である。

中でも税収や歳入を増大することに知恵が回らず、赤字国債の発行と増税の乱発で国民の富を絞り取ることしか知恵がない。たとえば、企業の資金繰りを例えれば、高利貸しから親戚、知人に到るまでカネを借りまくって最後は倒産という場合もある。しかし行政は歳出の不足分をすべて増税と赤字国債で賄えるので、民間企業のような身を切る苦しみがない。

いま、日本経済は落ちるところまで落ち、成長が停止したままだ。多くの企業は資金不足に陥り、現在の消費税率5%すら払えない状況が続いている。ある雑誌の統計によると、半数近い企業が普通に消費税を払っていないと聞く。なのに野田政権が増税政策を強引に通そうとするのは日本経済や企業を衰退させる意図があるとしか思えない。日本経済は負の連鎖の真っ只中にいるが、国民は政治にあきらめの感を禁じ得ない。

すべての税収不足は国民負担に

わが国企業の90%以上は中小企業である。いまや悪戦苦闘の中でビジネス展開をしているが、こうなったのは政治が未来に向けた産業構造の転換をやっていないからだ。すべてがその場限りの場当たり的措置で経済改革は充分なしえていない。それゆえ経済規模は想像以上に縮小しつつあり、そのうえ金融引き締めどころか国民と企業から根刮ぎカネを巻き上げるあこぎな手口だ。

野田政権は社会保障を充実させるため、消費税増税はブレずに実施すると宣言した。世の中

に現場目線という見方、考え方があるが、これ
がなければ政治も経済も機能しない。税金を払う立場に立って考えるのが現場目線というものだ。現場目線に欠けた施策なら、結局は日本経済がますます再生不能な状況に追い込まれるだけで改善の兆しは見られない。

財務省はサラリーマンであれ、中小企業であれ、税金を取れる相手から絞り取ろうとしている。野田政権は「社会保障と税の一体化」と言い、年金受給者の不安を煽り、消費税増税賛成27%(世論調査)まで誘導した。しかも東日本大震災の財源まで税負担を強いている。国民に向けた税負担の押し付け政策がここにきてじわじわと企業経営を圧迫し始めた。

日銀法を改正し、この危機を脱せよ

民間企業なら歳入と歳出のバランスを保つため歳入に見合う歳出予算を組むのが常識だ。行政の肥大化した歳出を削減しスリム化すると公約して民主党は政権政党になったが、野田政権は財務省の軍門に下った。わが国国民は世界に類例のない民主主義の仮面を被った官僚独裁政権に踊らされてはいまいか。

わが国を支配する官僚らは産業の空洞化と円高を放置している。すべての景気低迷は円高のため貿易の輸出入が不振で企業が海外に進出せざるを得ない。「円高・デフレ」の原因は円の発行が少なく米国や中国も紙幣を充分に刷ることでドル安、元安を維持し雇用を増大させているのだ。わが国財務省は円高をそのままにして企業の海外進出を防ごうとしなかった。

筆者らは3月15日台湾で李登輝元総統に単独インタビューを行った。李氏は「日本政府は日銀を使って経済を良くしなさい」と語り、増税で国民を苦しめる現政権に苦言を呈した。(このインタビューの模様は4月11日午後9時からBS11チャンネル「インサイドアウト」で放映予定)。

日本経済を円安にしたいならいっそ日銀が米国債を買い100兆円枠にして国民負担を軽くすべきだというわけである。日本の赤字国債は銀行が買っており、90%以上が国民資産になっている。財務省は赤字国債は国の借金だが、国民にはまだまだ資産があると絞り取る算段だ。しかし、財務省は野田政権に増税しないと国債暴落になると言わせている。しかし、その前に埋蔵金を切り崩したらどうか。

今こそ国の埋蔵金を切り崩せ

財務省の増税案は企業の活力を削ぎ、国民生活を圧迫するとの考えは一般的である。企業の資金繰りが悪化すれば更なる税収不足となり、倒産する企業がますます増えるであろう。そんな中、国は1000兆円近い借金があるが700兆円近い埋蔵金もあると試算されている。内訳は現金預金が9兆円、有価証券19兆円、運用委託金12兆円、貸付金15兆円、未収金14兆円、出資金58兆円その他有形固定資産等々、既に明細は市中に出回っている。

メディアは埋蔵金を指摘しているが、財務省は借金ばかりを強調し、これを返済しなければ年金をはじめ社会保障が破綻すると繰り返し野田政権に言わしめている。これは高齢者や弱者に対する弱みを突いた圧迫と脅しである。官僚らは足りない予算を国民の税金で搾り取る発想しかなく「円高・デフレ」からの完全脱却の道筋は描けていない。財務省には増税派と経済成長派がいて、増税派は国の赤字を増税で賄うとしている。藤井裕久氏は「増税すれば景気は良くなる」と言っている。その一方で経済成長派は財政は経済成長次第だとの考えだ。

行政に逆らえば潰される

財務省が国民に負担を押し付ける最大の要因は、自らの権力や天下り先を失いたくないからだ。彼らは国民経済をよくするために国の財産を減らしたり、天下り先をなくすことは彼らの権益基盤を失うことになるので埋蔵金の拠出はしない。日本社会には上に一本の線があって、下にも一本の線がある。上の線以上に上がろうとすれば引きずり下ろされ、下の線以下に落ちれば引き上げられる仕組みだ。わが国は村社会であり、厳しいルールと規制に守られ、官の作ったルールに従うことが良しとされてきた。

これまで小沢一郎、安倍晋三、鈴木宗男氏ら改革型政治家が官の既得権益に毅然と立ち向かったが、検察や報道機関の圧力で潰された。小沢裁判とは官権力による画策された「政治裁判」であり、次は橋下批判が紙面を賑わすのは時間の問題である。橋下徹大阪市長の憲法改正、教育改革はよいが、行政改革に手をつければ、小沢裁判の二の舞いとなる。それゆえ行政改革は政治生命を賭けた政策だ。

官権力と政治権力の闘いが始まる

わが国はお家騒動ばかりやっているが、外圧は待ったなしでやってくる。かつては米国がグローバルスタンダードを持ち込んで日本国中、猛威を振るい力ずくで日本経済を直撃した。これをフリー、フェア、オープンと言い新自由主義という不馴れな言葉に酔い、米国の意のままに膨大な国富が米国金融に吸い上げられた。

かつてわが国行政は護送船団方式に見る国家のあるべき進路を明確に示して、繁栄と幸福をもたらす社会に貢献した。わが国が経済大国となり、社会が成熟するに伴い、国の権力がすべて財務省に集中。政治も企業も国民も行政に支配される官主導の専制政治、官僚独裁国家となる。しかしながら、ここにきて官の宿敵である政治権力主義者の小沢裁判の無罪が確定すれば官の横暴な権力主義に批判が集まる。それゆえ、官とすればこの裁判は証拠が無くても無理矢理、有罪に持ち込まざるを得ないが、確たる証拠もなく有罪になれば司法権力の暴挙に批判が集まろう。

これまで財務省を頂点として、各省庁、地方行政、政党と政治家、マスメディア、経済界などが予算、補助金、社会保障、税収等にぶら下がりで恩恵を受けるピラミッド社会が形成されてきた。あらゆる機関、団体、公益法人、独立行政法人などは財務省の意向次第で動く社会システムだ。今や腐敗堕落した悪代官の権力を削ぎ落とす希望の星は橋下市長「維新の会」に向けられつつある。

民主党は支持してくれた有権者の期待を裏切り、さらに野田首相は財務省の傀儡政権となり、支配下に甘んじた。財務省傘下となった野田政権の使命は、財務省事務次官・勝栄二郎氏が主宰する「消費税増税」だ。野田氏は勝氏の意向に沿って、大増税ラッシュの期待に応えたいと忠誠を誓っている。

景気回復は日銀を使って金融緩和だ

野田政権が国会審議で民主党内の反対、野党勢力の反対によって早晩行き詰まるとの見方が有力だ。野党が問責決議案、不信任案を提出する可能性を示し、小沢グループの離党、民主党増税反対派議員の行方が不気味だ。野田政権は退陣か分裂かの危機に見舞われよう。

筆者の持論ではまず解散はない。解散すれば「民主党」が事実上消滅することになる。自分たちの政党がなくなるのに解散する馬鹿がどこにいようか。野田氏や勝氏らは窮地からの脱出策として消費税増税をあきらめて、「日銀法の改正」に大転換の可能性もある。民主党と財務省の不評から挽回するに日銀が大きな鍵を握るかも知れない。李登輝氏の提言は台湾建国の体験からくる重みのある意見だとの思いを強くする。

「円高・デフレ」は良い面と悪い面がある。しかし経済を発展させるには「デフレと円高」政策を放置してはならない。これらが解消されれば輸出企業に潤いをもたらし、再び製造業、貿易輸出、雇用が促進され、日本経済が回復する。それには増税より「日銀法の改正」が急務であり、財務省が日銀を活用し企業を活性化すれば、税収が増大し、日本経済は活気を取り戻すであろう。わが国が今成すべき事は増税ではなくて「金融緩和」である。「円高・デフレ」の解消には為替介入ではなく、「円の総量」を増やすことだ。日本は140兆円と言われているが、250兆円位にすると1ドル100円以上になるという試算がある。円を安くすれば株価は上昇し景気は良くなり財政再建が始まる。こんな当たり前のことをなぜ、今迄やらなかったのか。何も増税で国民をいじめることが権力主義ではない。次の標的は「日銀法の改正」だ。

次回は3月29日(木)