木曜コラム

山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     石原新党と第三極の行方

東京都の石原慎太郎都知事は、国民新党の亀井静香代表、立ち上がれ日本の平沼赳夫代表らと3月中に新党を結成することで合意した。石原知事は27日の記者会見で「政治家は必然性があれば一人でもやることをやる。東京より国家が大事だ」と述べている。これまで新党結成の話は亀井氏主導で、二度ほど論じられては立ち消えになったが、どうやら今回は石原氏も本気のようだ。

亀井氏は新党結成で東京選挙区の候補者と自民党や民主党の離反者を当てにしている。さらに、橋下徹大阪市長や大村秀章愛知県知事との連携も視野に入っている。しかし、これはあくまで亀井氏を中心とする新党構想であって橋下氏らが同一行動を取るという保証はない。亀井氏らは、次の衆院選で民主党政権の大敗北を前提に橋下氏らと地方と地方が連携する「都市連合」で、第三極を作ることが目的だ。

石原氏は周囲には、橋下氏らと一緒に行動できるならと乗り気になっている。しかし、「石原新党」は今のところ思いつきに近く、専門筋は疑問を投げかけている。石原氏はかつて政党のリーダーとして中川一郎派を継承したが失敗解散している。

4月解散を狙う石原新党

野田佳彦首相は、政権発足以来5カ月近く、今では消費税増税を看板とするお代官政権になった。民主党は増税国会でピンチに立っており、今年の後半にかけて野党から衆議院解散への圧力が強まるのは確かだ。

このままでは野田首相の支持率低下は止まらず、「社会保障と税の一体改革」は野田首相の生命取りになりかねない。しかし、本人は消費増税に政治生命を賭けると必至の思いだ。

一方、野党自民党は何でも反対の姿勢を貫き、早期解散に追い込む構えだ。それゆえ通常国会も冒頭から空転する気配があり、平成24年度の予算関連法案前後に大きな山場が訪れよう。野党はこれらの法案成立と引き替えに衆院解散を迫るとみられる。あるいは野田首相の退陣が問われよう。

野党は内閣不信任決議案を提出する見込みであり、小沢グループらが同調すれば可決も十分あり得る。これら解散を見越した石原新党は6月以降、新しい党を作るのが狙いだ。しかし、石原新党に風が吹かないときは、人気だけに頼る石原構想は立ち消えになるとの見方もある。

石原、大村、橋下で衆議院選挙協力

次期衆院選で「石原新党」と「維新の会」が選挙協力や政策の協定を行うため、各都市圏に独自候補を擁立する「都市連合」を模索中だ。3氏は2月に名古屋市内で会談する予定で、大都市の自立や道州制、地方分権の実現などが意見交換されよう。3氏の共通する政策は「憲法改正」と「教育維新」であるが、それに加えて行財政改革に大メスを入れることだ。橋下氏らは国政に参加することを前提に既に300人を擁立、200人の当選を目指して準備中だ。

大村氏は国政に出るため東海を各ブロック毎に分け、「東海大志塾」を結成準備中だ。これは橋下氏が塾開設を大村氏に勧めていることが背景にある。大村氏は静岡、愛知、岐阜、三重の東海4県に候補者を擁立する模様だ。今後は「維新の会」と連携する。さらに名古屋市長の河村たかし氏も衆院愛知1~5区を中心に「減税日本」で候補者を擁立する「政治塾」を起ち上げた。

また、みんなの党の渡辺喜美代表は行政改革に関する素案をすでに完成させており、橋下氏らと理念や政策を共有する関係だ。「みんなの党」も「維新の会」と連携すべく関東地区を中心に入念な選挙準備に入る模様だ。

民主党歴代政権は何を成し得たか

次の衆院選における有権者の目は政界再編であり、第三極づくりに注目している。これまで自民党と民主党が税収不足にも拘わらず、歳出予算を増大させてきたのは周知の通りである。財政赤字の発行は小泉純一郎首相の時代は30兆円を死守するとしてきたが、いまでは50兆円近くに達しつつある。しかも社会保障費は年に1兆円ずつ増大するなど、歳出の増大に歯止めがかからず、このままでは今やパンク寸前だ。

こうした現実を直視せずさらなるバラマキをやろうとしたのが鳩山由紀夫、菅直人政権であり、野田政権に引き継がれている。結局民主党はマニフェストで財政赤字を削減すると約束しながら、結局は歳出を肥大化させた責任は重い。しかも政権誕生以前は行政改革をうたい、20.5兆円の歳出削減を公約したが、結局手つかずのままだった。

民主党は行政の無駄遣い、天下り法人の廃止、独立行政法人102のうち4割削減、特別法人17を11に整理、国家公務員の総人件費20%の削減、任期中は、消費増税をやらない等々、国民に心地よい政策を掲げて政権政党になった。ところが、政権公約に手を付けるどころか検討すらされていない。唯一やろうと気合を入れたのは消費増税だけである。

有権者は、自民党や民主党に代わる第三極に行革の期待をかけている。そこに出てきたトップバッターが「石原新党」だ。彼らは既成政党への不満の受け皿となり、政界再編の起爆材になることだ。一方、大村氏や橋下氏らは先述のとおり、独自のマニフェスト(選挙公約)、選挙戦の組織づくりで第三極への体制固めを急いでいる。これが実現すれば民主、自民を抜いて第一党になる可能性が高い。

小沢グループとの連携はあるか 

亀井私案の70~80人規模という構想の中で小沢グループとの連携も視野にある。しかし、石原氏は小沢嫌いで、思想・信条も違うので難しい、それより橋下氏との「都市連合」だ。亀井氏は「石原新党」が政権政党の受け皿となるには、数の力が必要だと理解している。一方、石原氏は知事の仕事や整理の区切りが6月頃になるとのん気な事を言っている。その頃には「石原新党」の出番はないかもしれない。

小沢グループと「維新の会」は共通の政策があるとすれば、行財政改革である。しかし、小沢裁判での強制起訴は小沢氏にとって世論に悪いイメージが定着しており、橋下氏らが最初から取り組むには問題が多い。2月17日の公判で石川知裕元秘書の供述調書を証拠採用するか否かの判決がある。不採用となる可能性が高いので、小沢無罪となれば、小沢勢力は一気に勢いづいてこよう。

小沢グループが生き残るには、橋下氏のパワーを借りて、マニフェストに同調し、選挙協力で提携できるか否かが最大の選択だ。一方、「維新の会」は元官僚の古賀茂明氏などが中心となって国家構想の作成に着手している。「維新の会」は石原氏や小沢グループと連携しながら「教育改革」だけは断固として実現したいと願っている。

評論家の屋山太郎氏は、「中曽根康弘氏は国鉄改革に3年、小泉純一郎氏は郵政改革に4年をかけたが、鳩山由紀夫政権は小沢一郎幹事長とともに無為に過ごした」(1月26日付産経新聞)と語っている。次は橋下氏が4年かけて「教育改革」に取り組んでもらいたいのが、世論の期待だ。

第三極は橋下市長の動向次第か

今後衆院の解散風は止みそうにない。しかし、解散となれば第三極の出方次第では民主党議員の291議席は半分以下になるとの見方がある。刻々と迫る3月末の予算案成立直後に大きな山場があり、9月の民主党の代表選までもう一波乱ありそうだ。しかし、選挙に負けると分かっていながら解散する馬鹿がどこにいるだろうか。

作家の堺屋太一氏は「橋下徹は、消費者側、納税者側に立った珍しい政治家といえるでしょう。官僚や政治家は企業者や業種団体、労働組合など供給者からの発想しかない。税金を使う側からの見方で、彼らとは正反対なんですね」と雑誌で語っていた。

次回の衆院選は理念と政策を実行する内閣が求められよう。「みんなの党」の渡辺代表は「自民党は官僚依存、民主党は労組依存」と言っているが、これも税金を使う側の立場だ。「みんなの党」は消費増税5%に反対し、脱官僚、地域主権、生活重視で、理念と政策は、これも納税者の立場である。しかし、石原氏らは消費増税を容認する側であって、必ずしも彼らとは政策が一致しているわけではない。

次期衆院選は「石原新党」「大阪維新の会」「日本一愛知の会」との「3大都市」連携が目標である。既に述べたとおり、橋下徹、大村秀章氏らは候補者準備を始めている。今後は「石原新党」が早く旗揚げすることだ。世論は第三極に注目し、地方から中央集権の枠組みを壊すことを明確にすれば、国民の大勢が支持することになろう。こうした発言の口火は石原氏が適役だ。

橋下氏が石原新党と同じ政党として組むのは難しい。橋下氏らの「維新の会」は第三極を目指して既に「維新政治塾」の立ち上げを準備中だ。渡辺喜美氏らも「みんなの維新」に名称変更したいと考えている。彼らは石原氏や小沢氏と選挙協力は良いが、一つの政党でやることは難しい。皆んなお山の大将の集まりになるからだ。それより「維新の会」は、解散時期が遅れることで準備期間が整い、中身の濃い体制を確保できよう。「石原新党」の旗揚げは、第三極のアドバルーンを掲げるための単なる先兵隊との見方もある。最後は橋下氏の維新旋風が第三極の台風の目になるとの流れが見えてくる。

次回は2月9日(木)