木曜コラム

山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     中小企業にチャンス到来

全国百貨店の売上高は前年対比2.2%減である。しかし、大阪、福岡など都市部の店舗の売り上げは前年を上回った。この数年JRと提携し、駅構内に大型百貨店が相次いで開店している。筆者は毎月名古屋駅構内の「高島屋」に立ち寄るが、平日でも店内の客足が途絶えることがなく、売り場はゆったりとして広い。また昨年5月JR大阪駅に「三越伊勢丹」がオープンしたが、大阪全体で15年ぶりに売上げ増を記録した。

一方、昨年3月、福岡のJR博多駅の複合商業施設に「博多阪急」を開店したが、こちらは業績が好調で、前年比売上を12%も上回ったという。ここは立地もよく、一日40万人前後が行き来する福岡最大の商業拠点だ。駅と百貨店は必要不可欠な関係で共存しようとしている。

日本百貨店協会の発表によれば、東日本大震災の影響で、各百貨店は休業、時間短縮で売上減を余儀なくされ、百貨店全体としては14年連続の減収となった。各百貨店はこの厳しい状況を打開するため、かつての大名商売から脱皮し、合併、改革などぎりぎりの生き残り戦略を掲げている。さらに店舗の改装、物流の共通化、商品の一括・大量調達によるコストダウンなどイメージアップと効率化に励んできた。

企業統治の充実が条件

百貨店はもとより、国内でビジネス展開を行う企業は旧来型のビジネスモデルから新しい価値観を創造し、社会貢献できる企業への脱皮が急務だ。百貨店は必死の努力で生き残りをかけ、いま好立地、低コスト、効率化、新需要の創出など顧客中心のビジネス特化に集中している。ここにきて最悪期を脱し、活気を取り戻すような、気配が見え始めている。

これからの百貨店は自らの工夫と努力で顧客に満足感を与える品揃えと安らぎを提供することに尽きよう。たとえば日本橋「高島屋」の地下食料品コーナーは、全国各地から新鮮な食材、食品を揃え、顧客の要求に対応している。また、デパート内のレストランも有名店から料理人が派遣され、ブランドメニューが注文できるなど、これらの強いこだわりに人気は上昇中だ。

ここしばらく、百貨店への顧客離れが深刻だといわれてきた。それゆえ、「大丸、松坂屋」をはじめ、各百貨店はプライドをかなぐり捨てて経営統合を図り、大規模な業界再編で経営基盤を強化している。しかも改装に次ぐ改装で店舗の若返り競争が顕著だ。百貨店の変貌は企業変革のモデルケースとして注目されよう。

海外の顧客に目をつけた飲食

東日本大震災をキッカケに、いま日本各地で国内需要の獲得に向けた最後のしのぎを削っている。これまで時代変化に付いていけず、老舗企業がこの20年で30%以上も倒産したといわれている。しかしながら、200年以上続いている企業の9割以上は食品関連業界だ。一方、飲食業界は変化が激しく、消費低迷市場であり、再編には大きな曲がり角を迎えている。

この厳しい飲食業界にあってグローバル化に適応し、挑戦する企業がある。名古屋栄を本店に置く札幌かに本家(日置達郎社長)だ。日置氏は、板前としてこの業界に入り、修業を重ねるかたわら経営や建築、設計に加えて材木商の免許まで独学で身につけた成功者である。大阪・道頓堀のシンボルである「動くかに」の看板は氏が考案したもので、当時の話題をさらった。

「札幌かに本家」では数年前から東アジア各国の旅行社、観光公社など観光客の誘致を図っている。アジアでは“かに”は高級食材だ。同社では国内売上の増大を海外からの観光客誘致で賄うとチャレンジしている。今や不況業種である飲食業界にあって、「札幌かに本家」はグローバル化という新しい世界に挑戦する業界屈指の稀有な存在だといえよう。仙台店では震災以降、昨年5月ごろからこれまでの売上の1.5倍を記録した。

日本企業の成長を促すには、わが国政府が経済活動の進路を示し、後ろ盾になってくれることが望ましい。そのうえで企業は自らのビジネスが成長するよう努力と工夫を重ねて自立するものだ。ところが需要がないからといって自動車や電化製品に補助金を出して需要喚起を狙うのは本来は邪道であり、税金のムダ遣いとはいえまいか。これらは行政の批判をかわすため、国民に飴をしゃぶらせたり黙らせたりする手段の一つだ、との声もある。

デフレで国内市場より海外に活路を求める日本企業

今日の社会構造をみるにつけ、社会保障制度の行き過ぎがいたるところで目立つのは、歳出のばらまきだ。国が財政赤字を乱発できるのは銀行が赤字国債を買ってくれるからで、結局は銀行に預ける国民のカネである。一方、カネ余りの大企業が円高の強みを生かして外国企業の合併、買収(M&A)を行い、いまでは五兆円を超える額と聞く。企業が海外に投資して国債にカネが振り向けられなくなると、国債の暴落するキッカケになると今から心配する人もいる。

企業は日本の政治に対して不信感を持っている。高い法人税に、増税ラッシュ、円高、デフレ、規制づくしでは国内市場でのビジネスが難しく、海外に拠点をつくるしかない。結果は海外進出企業は海外で成功して好業績を進行中だ。最近は中国に小売業者や飲食店がどんどん進出し始めている。これまでの高い経済成長率で増えた富裕層や中間層の消費を取り込もうというわけだ。

日本政策金融公庫は、海外に進出する企業向けに上限7億5千万円相当の特別貸付制度「海外展開資金」を融資しているが、申し込みが急増している。同じ飲食業でも国内に根を張って海外の観光客を狙う企業がある一方、客の減少が著しい市場に見切りをつける企業も増えてきた。寿司屋、スーパー、ラーメン店などサービス産業は国内で競争が激しく客も少ないので、続々と中国進出の機を伺っている。サービス産業の中国進出に中国政府は大歓迎だ。まもなく中国の繁華街が日本の飲食店で埋まる日がやってこよう。

経済環境の変化に適応せよ

これからのサービス産業は国内にとどまる企業と海外に進出する企業に分かれていくだろう。中国も経済の軸足を輸出偏重から内需拡大に向けていくことが予想される。わが国にとって進出先が新しい需要を創出してくれることは重要である。たとえば新興国や、中国内陸部の貧しい地域を開拓するにはインフラを整備し、産業を興し、経済成長を支援し、最後は内需拡大に持ち込むのがわが国の対外援助の狙い目であった。

わが国企業は発展途上国の成長と共に、カネと技術を投入し、新しい市場をつくってきた。たとえば日本の対中投資による経済援助の見返りに工作機械を始め、工業製品・素材など貿易輸出が伸び、米国を抜いて中国輸出が一番となる。わが国の大手製造業は円高を逆利用して原材料を安く調達し、中国の安い労働力と安い商品を使っては海外では巨大な利益を上げてきた。いま中国の富裕層や中間層が増えて、需要市場に変身しつつあるのは既に述べた通りだ。

中国はなぜ需要市場に変わるのか。これは豊富な労働力と安い賃金で作られた「世界の工場」から次なるステージは「成熟社会」である。つまり、中国経済は発展段階から日本の1.7倍のスピードで「老人社会」に突入している。中国の現状は労働賃金、物価、エネルギー等の上昇、環境汚染等によって製造業は限界を迎えている。つまり、製造業からサービス産業の時代に変わりつつあるのだ。

中国市場の消費が狙い目

これまで当コラムでは中国進出に際して中国人とのビジネスは難しいと述べてきた。中国人は最初から日本人を騙すことを目的に擦り寄ってくるので信用できない人たちだった。これまでは製造業が中心で、借地の問題、投入資金の扱い、規制、公安問題などいくつかのハードルがあった。中国進出には信用できない中国人を信用しすぎる日本の企業家にも責任がある。

しかしながら、製造業と異なり、サービス産業には大きな利点もある。中国人との関係もパートナーではなく、主人と使用人の関係であれば煩わしさがなく、企業経営がやりやすくなる。国内の飲食店は客の需要が減少し経営が細るばかりであるが、消費意欲の高い中国に出店の目が向くのは当たり前のことである。

今、中国経済はバブルの崩壊か機能不全による老化が言われている。この2つは同時進行中だ。それなら、中国経済は沈没かとなれば筆者はそうなるとは思わない。中国には安い人民元がある。日本の製造業は円高で産業の空洞化を招いてきた。中国の製造業は人民元が安ければ潰れない。米国の執拗な圧力にも屈せず、人民元を上げないのは、製造業であれ貿易であれ、元安であれば輸出が為替で持ちこたえる強さがある。そんな中国に期待し、新しい日中ビジネスを模索する時がやって来たようだ。

次回は2月2日(木)