木曜コラム

山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     日本経済本当の話

本年の当コラムはこれで最後となる。この一年間は円高、デフレ、増税、TPP、女性宮家、尖閣・竹島、東・南シナ海問題等々、難問山積ばかりだ。その中で、増税、円高、デフレに関する国民の知識と情報は誤解と錯覚のうえに成り立っているとの見方もある。筆者は以下のとおり見解をのべたい。

多くの国民は政治の無策無能ぶりにあきらめの感があり、大企業はすでにどんどん海外に脱出して活路を求めている。半面、産業の空洞化が顕著となり失業が増大して、消費の低迷を招いた。一方、グローバル化に取り残された中小企業は「円高、デフレ」で身を削り、生き延びている。

格差社会で二分された若者の風俗

いま、深刻な社会現象は、若者たちに夢とロマンがないことだ。時給800円程度のアルバイトさえ、なかなかありつけず、将来に対して希望も見出せない若者の何と多いことか。

最近ではよれよれのジーンズと冷や飯組の貧しい若者が街をうろついている。我々の時代には、一つの洋服を大切に扱い着用したものだ。たとえばズボンは布団の下に敷いて寝押しして、翌朝は筋のピシっと入ったズボンと清潔な白いワイシャツで通学したものだ。

名古屋で朝8時台の地下鉄を利用したことがあるが、その時は背広、ネクタイ、白いワイシャツの若い人たちもいた。しかし、10時を過ぎると米国風ファッションの若者が続々と地下鉄に乗り込んでくる。若者層は勝ち組と弱者の二つに分断されているような印象を受けた。彼らは時代が移り変わる中で格差社会に区別され、グローバル化の嵐に呑み込まれてきた感は否めない。

国民にとってデフレは救いの神

現今、総じて日本の若者世代の所得が減る中で、日本経済のデフレ化現象は国民負担を軽くする命の綱だ。もしインフレになれば、先に挙げたような若者の生活はさらに困窮を極めることになろう。今はどんな家庭も生活費を切り詰めてギリギリの生活を余儀なくされている。インフレになれば物価が上昇し、生活に大きな負担がのしかかろう。

たとえば、中国のインフレで豚肉の値段が高騰しているが、これは家計を直撃する深刻な事態となり暴動の引き金になった。今中国で起こっているインフレは中国経済の構造的衰退の兆しであり、同時にバブル崩壊が始まった。

わが国も同じく賃金上昇の期待は見込めないが、インフレで食料品や生活費が上昇すれば中国と同じ事態になろう。現今の日本人にとって「円高・デフレ」は救いの神であり、少なくともいま、これらと共存するしかない。インフレになって得をするのは借金の多い企業である。彼らはインフレになれば借金の実質負担が軽減できよう。また、国の財政負担も楽になる。しかし、その一方で国民の生活は一層負担を強いられることになろう。

円高は大企業に影響しない

円高は国民生活にとっては神の恵みと考えてよい。たとえば、円高のおかげで石油が安く輸入できる。1978年のプラザ合意の頃は円は310円前後であったが、今では80円を割り込んでいる。いま原油価格は上昇しているが、実質的には価格は据え置きで安い石油を輸入していたのだった。一方、米国は円安で原油の輸入価格が高いので、月額の電気代、ガソリン代で1000ドル以上という家庭はザラだ。

わが国は、世界の原油価格が高騰したにもかかわらず、30年間安い石油を輸入することができた。円高のおかげで自動車のガソリンや鉄道、電力などのエネルギー資源や、海外から農産物や原材料を安く購入できたのである。デフレを支える円高は国民生活を支えるありがたき守護神だった。

実際のところ、大企業は円高の影響があるのか否か。既に海外の生産工場や日本企業は世界レベルで為替操作を行っている。いま、日本の大企業は史上空前の大黒字だ。大企業はプラザ合意の頃から為替がどちらにぶれても対応できる体制を構築したのだった。一般的な見方として企業は円高で産業の空洞化を招くと言い、貿易輸出が減少すると喧伝してきたが、それは円高・デフレに対応できなかった企業に対する警告だ。

政官の無策に距離をとって独自に円高で稼ぐ大企業

日本の大企業は戦後、護送船団方式で政官財が一体となって奇跡の経済復興を成し遂げた。しかしプラザ合意辺りから米国主導の経済政策が主流となって以降、大企業は政官とは距離をとり始めた。政治の無策無能ぶりを見て、国際競争時代には官頼りでは勝てないと判断したものだ。

自由市場で生き残るには、官の規制は厳しく、企業にとって足かせでしかなかった。とくに高い法人税などは企業の成長と存続にブレーキをかける政策であり、企業は国際企業に方向転換せざるを得なかった。

一方、企業は海外拠点で独立採算制にしたり、収益構造の改革にチャレンジしている。大企業は大きな声では言わないが、海外の営業利益が本体の8割近くに達する企業も多く、国内での営業利益2割をはるかに上回った。日本の上場企業、海外進出企業150社を対象にしたアンケート調査でも営業利益の約3.5倍を海外で稼いでいる企業が増えている。大企業が消費増税には反対していないのも利益を挙げているからだ。問題なのは海外に進出する体力のない中小企業である。しかし、その中小企業も少しずつグローバル化に目覚めていこう。彼らは、単なる危機意識から行動に移り始めている。中小企業の中には独創的な発想と物づくりで、世界市場を狙う企業が増えてきた。

過去最悪の借金予算

それと共にいま問題なのは、増税である。野田政権も財務省もゴリ押しで国民に税負担を押し付けようと強気だ。しかし、賃金が下がり続けている昨今、増税で国民を締め付ければ、さらなる税収不足は免れまい。増税のやり方如何では弱者を再起不能にする政策となり、それが起点で国民負担をさらに圧迫し、経済悪化を招くことは必至だ。今、増税を急げば、日本国に大不況時代の到来を予測するのは国民の総意だ。

金を稼ぎ、税金を払うのは日本国民だ。役人は金を稼がないので、もっと税金を払え、と国民から搾り取るのが仕事だ。その国民から搾り取った税金や貯金を使って運用したのが「かんぽの宿」の大欠損であった。彼らはカネが余れば役人の懐に入るような仕組みをつくるカネ使いの名人だ。国民が稼いだカネを自由に使って、その結果赤字を累積させてきたが、これからは自由なカネを使わせてはいけないとの声が大勢だ。

暮れも押し詰まった12月24日、政府予算案は一般会計が総額90.3兆円で借金(赤字国債)が占める割合は49%となり過去最高を記録した。税収が42.3兆円、借金が44.2兆円である。赤字国債の最大要因は、バラマキ予算にあり、財政拡張に他ならない。日本はどうなるのか。

赤字国債の発行と借金は同じ

2012年度予算で新たに発行する国債(借金)は44.2兆円で国の借金は1000兆円になると新聞の見出しを飾った。しかし、赤字国債を発行しても誰かが国債を買えば、それは国としての借金であっても機関投資家や銀行、国民の資産になる。つまり、政府が勝手に国債を発行しても国民がその裏付けとなる国債を買っているから赤字国債が増大しても円高とデフレの現状維持が保たれてきた。

もう一度言えば、赤字国債とは国の借金であるが、国民にとっては資産となる。そこで財務省は赤字国債なら自由に使えないが、税金を取れば国民の目をごまかして自分たちが自由にカネを使えるのだ。繰り返すが、国債と増税とはまったく同じ国民のカネであって、国債は民間人が買ってくれるから空手形にならない。それなら、国債を民間から買ってもらうより民間人から税金を取り立てた方が手っ取り早いと、財務省が本気で考えても不思議ではない。

いま財務省は財政赤字で“国の借金が増える”“年金も払えなくなる”と国民に不安感を煽って増税路線に走り出した。彼らは日本の消費税率は世界に比べて低いと喧伝している。いずれにせよ、官の行政改革が先にありきと政治が国民に約束したのだから、消費税増税は改革なしで前に進めないのではなかろうか。国民は本音でそう考えている。次は大阪維新の会、みんなの党、小沢グループなどによる増税をめぐる動きに目が離せない。

次回は1月12日(木)