木曜コラム

山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     大増税の解決策

公共投資こそが日本経済を活性化させる

当欄ではこれまで必要以上に増税問題を取り上げてきた。いま、わが国政府の増税論は枝葉末節の議論ばかりで、問題の本質がまるで聞こえてこない。わが国政府は行政改革を一切やらず無駄遣いを放置したままである。にも拘わらず国の税収が足りないからと、苦しむ企業や個人からさらなる税金を徴収しようとしているが、あまりにも無責任で安易な方法だ。

かつてわが国と同じ局面にあって、マレーシアのマハティール元首相は、年金と健康保険を担保に国債を発行し、内需拡大策をとるなどして不良債権を処理した。税収を生み出すのは国民の活力であり、若者に夢と希望ある社会を創造することだった。マハティール氏は、「1997年7月の経済危機以降、マレーシア経済は外国人によって支配されてきた。わが国の通貨と株が引き下げられたために、企業は重大な局面に立たされ、まともな利益を上げることができなかった。病める企業から法人税収入を徴収できず、わが政府は望むべき政策を遂行するための運転資金さえこと欠く始末であった」と語る。マハティール氏は、「政治とは国民と企業が元気になるお手伝いをするのが政治家の仕事であって、増税なんかとんでもない」と考えてきた。氏の凄いところは、国民や企業が困る増税は止めて、税収不足を補うために徹底的な行政改革を断行したのである。

橋本政権時代の失敗に学べ

しかしながら、わが国財政赤字の解決策は増税ですべてを賄おうとしている。この増税策は雇用や消費など経済活力を著しく損なう「愚策」であるのは明白だ。東日本大震災の復興資金や税収の不足を増税ですべて片づけようとしているが、実態経済や国民生活が悪くなるばかりか、さらなる税収不足という悪循環を招くことはかつて経験済みだ。

というのは橋本龍太郎政権当時の大失敗は消費税の引き上げと社会保険負担増(9兆円)であり大増税で国民に負担を強いたからだ。その結果不景気となり税収が著しく減少したものだ。つまり、デフレが進行しているときに緊縮財政をとれば、企業の売上と利益が激減するのは当たり前だ。国民所得が減少すれば企業の売上と利益が激減するなど税収不足を招くのは周知のとおりだ。

円高・デフレ現象が加速すると、企業は生産拠点を海外へ移し、産業の空洞化が深刻になる。増税政策の失敗で橋本元総理は「1997年度の増税は国民に多大の迷惑をかけた」と謝罪した。財務省は橋本増税政策の失敗に学び教訓とすべきだが、同じ轍を踏もうとするのは政治・行政の無能化の再現だ。

世界一の金持ち国家が緊縮財政を行う愚

実際、わが国は世界最大の金融資産を持つ国であるが、全く政策に反映されていないのはなぜか。米国は日本が金持ちであるからこそTPPやグローバル化などで内政干渉してくる。米国の狙いは金持ち日本に米国企業が参入することであり、TPPを通じて東アジア経済圏を米国が支配することだ・

これまで、一部識者らが唱えている日本は世界最大の金融資産国だとの立証は以下の通りだ。政府公表データ(2008)によると、社会保障基金254兆、内外投融資136兆、外貨準備高90兆を合わせて480兆円の金融資産を保有している。しかしながら、これら金融資産は国内経済に投資されず、多くは米国債の購入に投資されてきたのであった。
こんな金持ち大国ニッポンであるが、米国債ばかり買っているのはなぜか。たとえば、我々が納めている年金保険料と健康保険料を担保に日銀が資金を用立てるとか、投資減税や法人税減税をやれば税収が増大しよう。さらに雇用増大をもたらし政府の赤字国債発行額が年々下がるのは明らかだ。

財政赤字を垂れ流すしか能がないのか

本当に日本の財政赤字はこのままでは借金が増える一方だ。日本銀行には100兆円以上の預金があるといわれている。さらに米国債を買う資金があるなら、国債を担保にして資金を国内に回せばよい。日本企業を緊縮財政で不景気にするより、日本銀行が日本の有り余る金融資産を担保に資金を市中に投資すれば財政赤字解消の早道だ。

税収を増やすには日本経済の名目GDPを成長させることだ。現在のような増税政策をとっているようでは税収不足の激減は年々進行しよう。今日の経済停滞は税収不足による財政赤字であり、赤字国債の発行を増やすしか能のない政府では、わが国は救われないのだ。

行政は権力と権益を濫用する国家のガンだ

この財政赤字の解消に加えて、歳出予算の無駄遣いである。わが国経済が深刻な不況を招き、国民は節約、民間企業は人件費削減で耐えてきたが、行政は無駄遣いをやめようとせず、行政改革は進まない。

ましてや、安倍晋三、小沢一郎氏ら政治家が行革にメスを入れようとすれば、金とスキャンダルで社会的に抹殺する。今回の小沢裁判も検察が不正の事実と証拠がないということで二回も無罪となったものを、今度は民間の審査会をつくって裁判のやりとりを見て裁判官が判決するとは国家権力の濫用による何でもありの世界だ。。

国家権力を持つ官僚らは自らの権益を守るために仕事をする集団であって、いまでは国家国民を守る使命と義務を放棄したとの世論の声が大きくなってきた。増税で国民を苦しめ、自分たちは官舎を一等地にどんどん建設するとは国民感情を逆なでする傲慢なお役人たちだ。

まず公益事業で経済を活性化せよ

わが国経済の停滞はまるで“枯れた田んぼ”の土のようである。日本の農業は田畑に水をやり、雨、風から守りながら穂を実らせてきた。田んぼに水をやらなければ穂は実らず、不作となる。田んぼの活力の源泉とは、水をやり、穂を育てる農民であった。増税で国民の活力を削ぐ、財務省とは悪のお代官様だ。

つまり、わが国経済の田んぼが水不足で枯れているのに、そのまま放置して米をもっと寄こせとは時代劇に見る悪代官の再現だ。わが国経済の復興には投資という水が不可欠だ。投資は経済を動かす原動力そのものだ。わが国の金庫には国民から集めた有り余る資金が眠っている。その資金を活用しなければ経済は循環しないものである。

いま、かつて経済成長期に建設されたインフラの耐用期限が迫っている。古くなった橋や建物を造り直す公共投資が迫られており、今こそ国を挙げての大規模な公共工事を実施すべきだ。さらに新産業の創出であり原子力に代わるエネルギー関連投資など、国家再生の公共投資は必要不可欠だ。つまり、政府の公共投資を復活すれば消費が増大し、雇用が増え、産業の空洞化を防げるのである。

米国クリントン政権にみる積極財政プラン

積極的な財政投資が功を奏した例が1993年から行われた米国クリントン政権による財政改革だ。クリントン政権は財政赤字を削減するには積極的な財政支出しかないと判断した。クリントン氏は第一期目の経済戦略をまず政府支出の削減に焦点を絞った上で、雇用増大のために公共投資を最大優先課題とする。まず政府職員の3.5万人の首切りを皮切りに政府支出を大幅に削減し、その分を投資に振り向けるのであった。

大統領就任2年後には景気が回復し、税収が増加。さらに1998年には税収入が増加して赤字財政から黒字に転換したのは周知のとおりだ。つまり、景気を回復するには積極的な投資が必要であり、公共投資や地域開発を活発に進めるクリントン時代に学べ、と言いたい。

国民の不安心理につけ込むな

米国の経済専門家がある講演で語った内容が印象的だ。「日本は世界の笑いものだ。有り余る資金を運用せず、米国の国債ばかり買う。その国債は売るに売れないもので、売ればさらに円高になる。毎年財政赤字は拡大し、政府支出が増えていくのに、すべてのツケを国民に押し付けようとするのは自殺行為だ。その結果、若者に職がなく、夢を失い、気力、活力のない日本人が街に溢れている」。

これらはすべて政治家の資質と政権の無策、官僚らの権益死守と無駄遣いにある。彼らが若者に未来を失わせているとする自覚どころか認識すら持ち合わせていない。繰り返すが、わが国はカネが有り余っている世界一の大金持ちの国なのだ。

わが国は財制危機などではなく、政官による政策ミスが今日の惨状を招いている。名目GDPが増えないのも、投資をしないからであり、緊縮政策の延長は、財政悪化を招くしかないのだ。一番の問題は国民が年金不安を持つ心理につけ込む大増税策だ。その増税を容認する国民が増えているということだ。

次回は12月1日(木)