木曜コラム

 山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     増税政権の正体を問う

いま、東日本大震災の復興に向けた増税論がかまびすしい。野田佳彦首相は就任以来、消費税増税を公言してきたが、党内外からの強い反対に押し切られた形で一時棚上げとなった。財務省らは約44兆円の歳入不足を埋めるのに消費税を30%まで上げざるをえないとの声が漏れ伝わる。

野田氏らは財務省主導の増税路線を継承したが、財源は国民負担にしたことで大きなツケを残した。復興増税の総額は、藤村修官房長官が、「11.2兆円と法案に明記する」と言い、前原誠司政策調査会長は、9.2兆円でよいと強調したが、結局は前原案に落ち着いた」。政府案ではあと2兆円を捻出するためメトロ、日本郵政株など政府資産の売却を示したが、財務省らは難色を示して立ち消えとなる。

東日本大震災の復興財源にあてる臨時増税は、法人減税の凍結(3年)2.4兆円、所得税増税(11年)7.5兆円、所得控除見直し(5年)0.7兆円を基本財源としている。それ以外に、個人住民税、たばこ税の増税、JT株売却(1兆円)などが検討されてきたが、これも財務省の反発が強く、お蔵入りだ。

復興の青写真なく試算だけが独り歩きする怪

これまで、復興増税の議論ばかりが先行しているが、その負担者は国民だ。これはやってはいけない禁じ手だ。日銀による国債の買い上げか、お札の印刷で賄うことも検討されるべきであろう。復興再生費用はどのくらいになるのか、勝手な意見が飛び交っているが、いまだに復興に向けた青写真すらなく、具体案に欠けるのが実状である。結局、財務省はまず予算ありきでその復興予算は増税による国民負担だ。

例えば、消費税増税を実施すればすべてが解決

する。単純計算すれば消費税を1%上げれば年間2.5兆円の税収増になり、4%上げれば復興増税が賄える。しかし実際にこれを実行すれば消費は冷え込み、さらなる不況を呼び、デフレスパイラルが拡大する。これは橋本龍太郎政権で実証済みだ。

しかし、財務省は「影響は一過性であり、橋本政権時代は3カ月で沈静化した」というが、デフレ不況はここから始まった。そのうち国民も消費税増税に適応してくれるだろうとの思いが伺える。それに加えて、米国から日本の消費税増税案に賛成とのお墨付きをもらった。

「天下り根絶、法人税率20%引き下げ」の公約はどこへ消えた

しかしながら、復興増税の内訳を見ると、行政側の無駄遣いのカットや公務員給与の削減など、行政負担がまるで見当たらない。民主党は野党時代から、政策の目玉に①天下り根絶、②国家公務員の給与を20%引き下げると公約。当時の民主党政策立案者は鳩山政権時代の幹事長・小沢一郎氏であった。

小沢氏らはこれまでにない大胆かつ現実的な大手術を行い、徹底的に改革を行う秘策があるといっていた。本来言い出しっぺの小沢氏に行革をやらせるべきであったが、財務省と菅・仙谷コンビは政策実行より小沢潰しに大半の時間を費やしている。

実のところ、国家権力を持つ行政は仕事と組織を背景に実務と経験を握っている。2010年秋の臨時国会でも、国家公務員給与法改正案をめぐり人事院勧告以上の引き下げを検討したが、菅政権はこれら給与の引き下げを見送った。巨大な権力を持つ財務省を相手に戦っても勝てないと培った時点で菅政権のカウントダウンが始まった。

公務員改革はできもしない夢物語

なぜ、民主党政権の公約である公務員給与の削減が進まないのか。さらに言えば民主党の有力支持団体である公務員労組や労組衆議院グループが反対であるためだ。公務員の人件費カットは民主党の自殺行為に等しい。元々、公務員給与の削減は夢物語であって、実行性に乏しい案件に他ならない。

一方、マスメディアが国家公務員給与の削減を取り上げなかったのはなぜか。実際、この増税騒動で、多くの国民は公務員給与の削減はどうなったのかと疑問に思っている。つまり官僚、政治家の収入は全く削減されていないのだ。

いまのままでは余程のことがない限り、民主党政権は今期限りで終わる。民主党は次の選挙で増税と小沢問題、沖縄基地、公約違反など何も実現できなかったツケを払うことになろう。平沢勝栄氏によると、民主党与謝野馨経済財政相は「この政権は全共闘時代の新左翼が集まった政権だと思っている」と、渋谷駅前の街頭演説で述べている。

国民の不満を小沢氏の「政治とカネ」に巧みにすり替え

一方、この世で一番の悪党は国民の税金を無駄遣いし、既得権益を弄ぶ霞ヶ関勢力であるとは国民の誰もがそう思いつつある。しかし、彼らは巧みな戦略と戦術を用いて国民の怒りを小沢潰しにすり替えた。たとえば「政治とカネ」で泥まみれになったのは小沢一郎だ。小沢氏は霞ヶ関に向けられた行政の無駄遣いに対する国民の批判と怒りを代弁する政治家だ。

産経新聞の世論調査によると小沢氏が議員を辞めるべきが81%以上に達している。これは霞ヶ関の完全勝利である。既得権益と真っ向から戦った安倍晋三政権に対しても彼らはあらゆる媒体を使って安倍潰しを図った。いまや財務省は権力闘争にうつつを抜かす総本山である。もし、財政の悪化で予算すら組めないというなら、米中韓のようにお札を大量に刷ればよい。円をたくさん刷れば円安になり、ゆるやかなインフレになるとは先に述べた通りだ。

進まぬ公務員改革

この20年間わが国にとって重要な課題は公務員制度改革である。民主党の政策やマニフェストにも「人件費20%削減」「天下り禁止」を断固として実行に移すと明記した。それを信じ、有権者の圧倒的多数が民主党政権に投票したのである。

現在、4700もある独立行政法人などに官僚OBの2万7千人が天下り、毎年総額13兆円前後の税金が垂れ流されていると聞く。これらの法人は民営化すべきと言ってきた野党時代の民主党だが、政権交代してみれば財務省の圧力ですっかり骨抜きにされてしまった。残念ながら彼らの既得権益は民主党政権になって逆に解禁されてしまったのは既に述べた通りであるが、今は官僚のやりたい放題だ。それどころか天下り先の肥大化はどうにも止まらない。

一度は民営化するとされた法人も元の鞘に収まりつつあり、まさしく改革からの逆行現象が顕著だ。しかも税収入の巣窟といわれる特別会計の内訳はまさに無駄遣いの垂れ流しだ。

民間の現実を無視した消費税増税

国税庁によると、民間の平均年間給与は約412万円であるが、国家公務員は814万円であり、官民格差は約2倍である。民間はこの厳しい15年間にあらゆるリストラを行い、給与削減を行うなど辛うじて息を繋いできた。「デフレの長期化と円高」で日本企業は世界からの経済圧力を受けながらも、知恵と工夫で切り抜けている。

このままいけば日本国内は需要の喪失、雇用減、企業利益と給与の減少などで消費がさらに縮小せざるを得ない。まさに人体でいえば血が抜き取られ、国民は夢遊病者さながらのふらつくさまを連想するのは筆者だけであろうか。

民間がそんな状況にあることを政官は無視し、増税政策を着々と実行に移そうとしている。ある民主党長老議員は、消費税増税で景気が悪くなった橋本政権時代のことを“消費への反動は3カ月で終わった”と財務省と同じ意見を喧伝しているが、まさに現場知らずも甚だしい。

まずは東北再生の青写真を作れ

いまや、政治が語られるのは枝葉末節の議論ばかりだ。それよりもまず、これから震災後の東北が再生され、世界化に適応できる産業がどのように育成されるのかなど、具体的かつ前向きなビジョンを国民に示すべきではなかろうか。

一方日本経済は「デフレと円高」を放置したままで企業は海外に移るしか生き残れない。そのうえ、国民負担の増税路線では経済の土台が崩れ落ちていこう。しかも行政改革はせず、そのまま温存するとはもっての他ではないか。

民主党政権も財務官僚も大切なことを忘れている。このところ、増税と小沢潰ししか聞こえてこないのは残念だ。政治と官僚は国家百年の大計を国民に示し、わが国民のリーダーシップを発揮してもらいたい。しかし民主党にはそんな意識も発想もない事なかれ政権とのあきらめが漂う昨今である。問題は次の選挙でどの政党を選ぶかしか改革は期待できないであろう。

次回は10月27日(木)