木曜コラム

 山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     「一つの中国」論に物申す

日台超党派議員による「日台アジア安全保障会議」の開催は、来年1月に行われる台湾総統選挙後に検討されることになった。両国議員が超党派で安全保障問題を議論する機会はこれまでになかった。かつて橋本龍太郎内閣時代には近隣諸国と日中韓の3カ国で安全保障問題を協議する地域協議体の場が検討されてきた。しかし、そこには当然のごとく、台湾は含まれていない。

日本と台湾は隣国であるにもかかわらず、国交がないばかりか、長きにわたり、政治的交流がなかった。3月18日の日台アジア会議の席上で李登輝元総統は「日台は運命共同体である」と熱く語られた。日台の安全保障は両国の命運を賭けた重要案件であるとの強い思いが伝わる。

わが国の外務省も、中国脅威論の高まりとともに、日台安全保障が重要であることは認識している。しかし、中国を刺激しまいと先送り、事なかれ主義が先行して何もせずの外交だ。台湾の危機と安全保障問題はわが国に直接影響する問題であり、民間人有志と政治家が立ち上がり政治に反映させるべきだ。これらの実現には志と理念を持つ政治家の登場が決め手となろう。

「一つの中国」米中が作り上げたまやかしだ

米国の首都に核ミサイルを撃ち込むと豪語する中国の軍人がいたが、いまや中国は東シナ海のみならず、南シナ海にも米軍が近づけないよう軍備増強を行い、対米強硬姿勢をアピールしている。中国は台湾が言うことを聞かなければ武力に踏み切ると威嚇するなど国際社会は「一つの中国」論に振り回されてきた。

「一つの中国」とは中国が作り上げたフィクションである。米国を始め国際社会は中国のフィクションを理解し尊重すると言ってきた。しかし「台湾独立」はフィクションではない。これは台湾人民が決める真実の選択だ。しかし、米国は台湾住民の声を無視して「台湾独立」に反対している。

台湾と大陸は果たして一つか

筆者は日本と台北を往復するたびに、台湾海峡を隔て二つの国家が存在することを再認識する。一つは共産主義国家の中国であり、もう一つは自由と民主主義国家を標榜する台湾である。この二つの国は経済的には強い結びつきを持つが、政治的には相容れない存在となっている。

これまで中台両国は「台湾と大陸は一つ」と主張。蒋介石は、台湾に逃げ延び中華民国を建国した。彼らは「大陸反攻」をキャッチフレーズに台湾全土に戒厳令を布いて台湾人民を統率する。台湾の国民党政権は武力を背景に絶対的な権力を握ったが、台湾人にとって迷惑な話だ。

しかし、台湾が大きく変革できたのは、台湾人の李登輝氏が台湾国民党政権の主席となり、建国以来初の直接投票によって総統に選出され、民主政治が行われて以来だ。李登輝氏は「二国論」を唱え、「特別な国と国の関係」と言った。その結果、1999年以降、「一つの中国」は台湾の外交用語に使われていない。

台湾への関わりを曖昧にし、中国に媚びる米国

台湾が民主化を目指す1978年、カーター政権は台湾と断交した。その2年後、米国議会は「台湾関係法」を制定。これには「台湾の将来は平和的に解決されるべき」で「武力行使には反対」とした。しかし「台湾の安全のため、防衛用兵器を米国は提供する」とし、米国は台湾住民の平和と安全を守るため、今後とも台湾の安全に関与するというものだ。

にもかかわらず、一方で米国は台湾との「米台相互防衛条約」を破棄することを決めた。これら米国の行動はおかしいと筆者は考えていた。米国はなぜ台湾の命運に対して曖昧なのか。これではますます中国を増長させ、軍拡に暴走する危惧を禁じ得なかった。

米国の曖昧な発言は中国に媚びへつらう態度に他ならない。台湾の命運を決する独立を米国が「支持しない」のは、米国が対中交渉に台湾を取引材料に使っているからだ。「一つの中国」を容認したかのような米国の態度が中国をしてacknowledge(エクノウリッジ:認識)させていよう。

「一つの中国」は無策の極み

さらに言えば、米国による「一つの中国」は中国を利するだけだ。結果として台湾や米国にとって国益を損なう以外何の意味もない。米国の「一つの中国」発言は無意味と無策の極みとの感を禁じ得ない。一方、台湾は民主化から21年が経ち、表向きは「現状維持」と言いながら、台湾人の大方は本音では台湾独立を願っている。

台湾の変革はあらゆる悪弊を断ち、自由と民主主義、法治と人権を尊重して民主国家を作り上げることだった。しかも蒋介石時代と異なり「大陸反攻」と大陸の権利を放棄する。もともと、国民党は毛沢東に追われて台湾に逃げ延びてきた中国人たちで、「大陸反攻」は自らが台湾で生き延びる大義であった。

中国からすれば、台湾人自らが作り上げた台湾の民主化は目の上のたんこぶであり、中国共産党の脅威だ。台湾が民主化に基盤を置いた政治体制に中国政府は我慢ならない。しかも21年目を迎え、米国をはじめ国際社会と経済、軍事、政治、外交、商業、戦略など、あらゆる分野で台湾は独立国として機能している。

返還で中国化した香港

1984年、中英共同声明によって香港は英国から中国に返還された。中国はこの声明で香港の民主化を保証すると香港人民と約束したが、当時民主化された香港が中国共産主義と共存するには疑問があった。今では香港の首長選挙は許されず、中国政府は香港民主党が政権をとれば立法議会は解散させると言明している。元々約束は守らないのが中国だが、香港人民は同じ中国人でありながらなぜウソを見抜けなかったのか。

香港の民主化に期待した香港人たちは完全に裏切られた。香港の中国化をつぶさに見、現状を一番理解しているのが香港企業と経済交流が多い台湾経済人である。香港経由で対中ビジネスを行っている彼らは香港の中国化を目の当たりにしてきた。

中国は経済を資本主義、政治を共産主義としているが、経済成長と知的成長に伴い、そのエネルギーは民主化へと向かいつつある。民主化は競争社会であり、フリー・フェアー・オープン、グローバル化が原則だ。そこに政治的イデオロギーが入り込む余地がない。それゆえ、中国共産党の先が見えるとしたら、将来民主化に進まざるを得ないであろう。

米の掲げる台湾関係法と「一つの中国」の矛盾

米国は国内法で台湾を中華民国と称し、中国から独立した別の国として対応している。外交面でも中国の台湾に対する主権を認めないとした。しかも既に述べたとおり。台湾の防衛に対して、米国は「台湾関係法」を制定している。これは米国が台湾有事に際して台湾を守るとの姿勢を示すものだ。米国の「一つの中国」を理解し尊重するとの発言は中国を始め国際社会の不信を招いている。

1999年、李登輝氏が中台は「特別な国と国の関係」と言い、二国論を唱えたが、米国は無関心であった。一方では、「一つの中国」を理解し尊重すると繰り返す米国の発言で中国は誤解と錯角が渦巻き暴走する。今や東アジアは中国の軍事的増強が顕著で南シナ海問題や尖閣諸島などトラブルばかりだ。

これまで、世界で「一つの中国」論は成功した事例を聞かない。たとえば、1990年イラクのサダム・フセインは米国の「一つのアラブ」発言を信じてクウェートに侵攻した。1938年英国とフランスはヒトラーの主張するズデーテン地方の領有権を巡り「一つのドイツ」政策で失敗。これは結果として欧州に第二次世界大戦をもたらした。

アジア地域の動向は米国次第

米国の「一つの中国」政策は中国が台湾への武力行使を擁護する発言と取られるacknowledgeに他ならない。米国の発言は中国の軍拡を高めてきたといえよう。今後は米国が錯覚した中国と直接対峙せざるを得まい。

台湾は自由と民主主義の国である。米台は同じ価値観を共有する仲間であり、共存共栄の関係にある。中国も台湾に武力行使すれば経済的打撃を被ることになり、共産主義国家の存亡にかかわる問題だ。いずれにせよ、中国が台湾を力づくで勝ち取ることは党の命運を左右する問題なのである。西側諸国は台湾と価値観を共有する民主主義国家だ。国際社会は民主国家台湾の存在を中国とは特別な国と国の関係と認識すべきである。

民主化台湾はすでに国際社会からみて軍事的、経済的に独立した存在である。今後米国はこれまでの対中弱腰外交から強硬な外交政策を取らざるを得まい。米国が強気な政策と行動に出ればアジア地域も強気になる。つまりアジアは米国次第なのである。「一つの中国」政策が誤った結論に至った以上、この際破棄せよと米国に物申す。

次回は9月8日(木)です。