山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     浮き彫りに成りつつある民主党の正体

2010年07月22日

昨今、地方の民主党関係者らの意見は党執行部に対する苦言・批判に集中している。つまり、菅首相ら執行部が参議院選前に消費税10%を持ちだしたことが最大の敗因であり、消費税を議論する前に民主党が公約した無駄遣いの膿を出し切り、歳出負担を軽くすべきだとの意見が語られた。

今回参議院選で当選した113人の議員に共同通信社がアンケート調査を行ったが、消費税「10%超」4.4%、「10%程度」46.9%、「7%程度」8.8%と「消費税10%」は適当、と考える議員から過半数を超える回答が寄せられていた。これまでの世論調査でも、多くの国民が「消費税10%」は仕方がないと考えており、最近の世論調査でも60%程度の賛成を得ている。

にも拘わらず、参院選で民主党が惨敗し、自民党は復調、みんなの党が躍進したのは、民主党政権による政策の失敗と能力への不信と見てよいのではないか。日本の安全保障と経済不況は民主党政権になって改善されるどころか、ますます悪くなったとの感は否めない。沖縄普天間の鳩山前首相といい、選挙前の菅首相の場当たり発言といい、国家を代表するリーダーとしての資格と能力が問われる事態が相次いでいる。

菅人気の急落

菅首相に対する報道各社の支持率は発足直後の60%台から、わずか一カ月で30%台に急落。これはジェットコースター並みの急降下現象だ。大衆は現場の状況から判断するので、政治や行政による不都合な政策の押し付けを許さない。

菅政権は「消費税10%」という地雷を踏んで大衆の制裁を受けた。この大衆という有権者たちは、政治に対する知恵も情報も不十分だが、自分たちが政治を左右する主人公であり、賢明な政治選択を行っていると考えている。こうした身勝手で日本の未来や責任、そのうえ義務さえ考えようとしない衆愚によって、民主主義政治は翻弄され、ますます現実とかけ離れた国民迎合の政治家が育っていく。かつてドイツのヒットラーをドイツ国民が熱狂的に支持したように。

歳入なきバラマキ政策

菅直人首相は選挙後、突然低姿勢となって、この難局を切り抜けようと懸命だ。特に経済の二番底が言われる昨今、今の状況では政権運営が大変難しくなっている。民主党がマニフェストで公約した「子ども手当」などバラマキ予算だけは実行したが、これはやがて国民にツケが回ってくる最悪のシナリオだ。

責任ある政治とは、バラマキ歳出に見合う歳入を確保するバランス会計を言う。例えば、無駄な天下り団体への支出は年間12兆超とされるが、いまだに削減策が聞こえて来ない。民主党が政権取りの前は天下り廃止がキャッチフレーズであった。いくら事業仕分けをやっても歳入確保の原資にほど遠く、民主党の政治的パフォーマンスは明らかだ。

小沢氏は百戦錬磨の政治家

2003年、自由党解散前、筆者は赤坂で経済専門家らとの懇談会を用意した。当日の話題は日本経済の現状と行方に集中したが、小沢氏の経済分析は専門家をうんと唸らせる鋭いものがあった。政治・外交に対する冷徹な読みも鋭く、現実政治の難問山積に決断と実行ができる数少ない政治家であり、小沢政権が誕生すればわが国の経済改革は可能だとの認識を深くした。

しかし、民主党入りしてから小沢氏は変わったとの声もある。それまでの小沢氏は国家国益を重視する政治家であったが、今では票のためなら何でもありきに見えない。歳入の目途もないのに、年間55兆円の「子ども手当」を赤字国債で賄おうとする政治判断は狂気の沙汰でしかない。

検察、反勢力の小沢叩き

小沢氏の「政治とカネ」問題では、秘書の逮捕以来、何度も捜査が繰り返されてきたが、起訴に相当する十分な証拠は出てこなかった。小沢氏は、カネの問題は自らの政治生命を断つ凶器と考え、普段から一切関わりを持たない主義で通して来た。民主党の大勢も小沢氏の「政治とカネ」については「違法ではない」とし、政治倫理に反するものではないとしている。菅直人首相もこの問題ではこれ以上騒がないでほしいとコメント。これは民主党内でも不利に働くという打算がある。

検察が総力を挙げて捜査した結果、不起訴になったものを今度は民間人11人を加えた検察審査会で執拗に再捜査しようとするのはなぜか。これは検察による小沢潰しの権力乱用である。

筆者は9月の代表選の前、7月末頃に検察審査会が「起訴」のための再捜査を行うであろうと述べてきたが、東京第一検察審査会は7月15日再捜査を求める「不起訴不当」の議決を公表。検察は手を変え品を変え、小沢叩きを繰り返して来たが、これら小沢叩きの本質は行政と政治との権力と権益を巡る陣取り合戦に他ならない。

党執行部のイデオロギー政策

 菅内閣の中心は菅直人、仙谷由人、枝野幸男の三羽烏である。菅首相をはじめとする執行部は政権を担当する能力に欠け、不用意な消費税発言で有権者の怒りをかった。保守系から見れば「彼らは陰湿な左翼の砦」となる。菅首相は市民運動家、仙谷由人氏は旧社会党出身者で、東大在学中は全共闘で活動した左翼活動家だ。いまやこの仙谷氏が民主党政権の中心であり、旧社会党から引き継ぐイデオロギー政策の旗振り役だ。

彼らはわが国の国旗国歌に反対し、安全保障に関心がなく、経済には全く無知であり、外交音痴であるのは周知の通りである。政治家として外交、経済で知恵と経験、資格を持たない人物が権力争いで政権を握ったから大変だ。わが国の外交と経済は崩れ落ちる恐れもある。彼らの本当の目的は外交や経済ではなく、外国人地方参政権、選択的夫婦別姓問題、日教組の政治関与など日本国解体政策にある、と保守は指摘した。

ここに来て、彼らの本性が浮き彫りになってきた。これらの悪しき法案成立を推進するには千葉景子法相の存在が欠かせない。千葉氏は神奈川選挙区で落選し、菅首相に辞意を伝えたが、菅氏や仙谷氏らは慰留するよう説得した。法相下には法制局があり、民主党政権のイデオロギー政策を法案化する重要なポストである。

子供は社会の私有物か

2011年予算の編成作業が間もなくスタートする。歳出総額は92兆円で、税収で賄われるのはわずか37兆円であり、今年も不足分47兆円は赤字国債の発行に依る。すでに国と地方合わせて862兆円の債務があり、これ以上無駄遣いはできない。のみならず、「子ども手当」をはじめ民主党が多額の歳出予算を強引に実行しようとする意図はどこにあるのか。

「子ども手当」は子育て世代の有権者から票を集める手段であるとの見方もあるが、それ以上にこの政策の裏には、旧ソ連や北朝鮮にみる「共産党宣言」で提唱された「家族の廃止」運動が見え隠れする。マルクス、レーニンが行った共産革命は、子供は国家が管理し、国家の私有物であると宣言し、親が教育してはならないと「禁止」したのは周知のことだ。

親が家庭で子供を育てることを禁止し、親子の断絶、家族の絆を崩壊させる政策は共産主義、全体主義国家の基本政策である。わが国ではこれに代わる政策として「保育所」を全国にたくさん作り、両親は働き、子供は社会が教育する。さらに小中学生は日教組が教育するという体制がしっかり作られつつあるようだ。今なぜ「保育所を作れ」のキャンペーンが展開されているのか。恐るべきイデオロギー政策が水面下でうごめいている。

迫る国家溶解の危機

いま、学校では子供たちに対して過去を断罪し、現代を否定する教育が公然と行われ、子供たちの未来をつなぐ夢とロマンが語られていない。子供の教育は親が60%、教育現場が40%との説もある。家庭での教育が切断されたら、子供の全人格はある集団のロボットとなることも容易であり、今子供を両親から分離する政策が堂々とまかり通っている。

民主党政権には健全保守とみられる政治家が過半数を超えていると思う。特に若い層は現政策に否定的であり、マニフェストを評価していない。民主党のマニフェストや政策は、左翼勢力を中心につくられた国家弱体化政策であることに疑問を抱き始めている。今回の民主党の惨敗はわが国の重大な岐路を救う神の裁きではなかろうか。

まもなく、小沢一郎、亀井静香らを中心とする政界再編がやってくる。それもほんの近いうちに、である。わが国の財政破綻の危機も迫っている。日本政治の今日的空洞化とほころびは有権者の衆愚化なしには考えられない。我々大和民族を溶解し、国民の精神を堕落させるイデオロギー政策の実現がそこまで来ている。

次回は7月29日(木)