山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     少数の反米勢力に振り回される米軍基地問題

2010年04月22日

いま、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題は難航を極めている。迷走の原因は鳩山首相の発言に腰が定まらず、最近では「決定を7月の参院選以降まで先送りしたい」とまで言い出す始末だ。自ら定めた約束期限を二度も安易に撤回するとしたら鳩山政権の求心力は一気に低下し、米国世論の対日不信感が噴出しよう。

かつて反米発言で米国から不信を買い、国際発信力を減退させた韓国盧武鉉政権と、鳩山政権は同じ路線を歩もうとしているのが心配だ。韓国事情に詳しい米国のローレス元国防副次官は、「鳩山首相は日本の盧武鉉だ。これは米国の政府高官らも同じ考えだ」と安倍元首相に語っている。米国が怖いのは反米感情の強い国に対して同盟関係を突然断絶することになんら躊躇しないことだ。既に反日財団理事長のジョージ・パッカード氏は「日米同盟の包括的な再検討が必要だ」と述べている。

鳩山氏は、これまで「友愛」というキャッチフレーズに始まり「東アジア共同体構想」を掲げてきたが、その場限りの言葉とキャッチフレーズで国民にアピールしてきたが、そろそろ限界に来たようだ。メディアからも進退を問う声が強くなる昨今、鳩山氏に辞任の意志を確認したところ、いとも簡単に「私自身の身に鑑みる必要がある」と答えた。

独り歩きする県外・国外移設案

1月24日の名護市長選では県外移設をスローガンとする民主党、社民党、共産党らの推薦で稲嶺進氏(64)が当選。鳩山首相は、「選挙結果を民意として尊重する」と語り、反対勢力を勢いづかせた。これを受け地元メディアは「米軍は普天間から出ていけ」と県外・国外移設の反米キャンペーンを展開し、米国世論を逆撫でする。

しかし実際問題として、米軍基地は沖縄県の財的な主業であり、ひいては県民にとっても不可欠な資金源である。普天間飛行場の県外・国外への移設を説く勢力はほとんどが県外からやって来た極左グループの連中だ。いかにも地元住民の大勢が反対しているかのように見えるが、そうした記事を見て怒り心頭に達した住民らが左翼運動家とにらみ合っているのが実情である。そんな地元住民らの声や意見をメディアはほとんど取り上げていない。住民の中には「鳩山首相の発言を上手く利用する県外からの左翼運動家を締め出せ」との声もある。

鳩山首相は「命がけで行動する」との言葉を連発したが何もしなかった。少数派の社民党や旧社会党グループを始めとする反米勢力と地元メディアが大騒ぎしているにすぎない。地元では基地反対よりも鳩山首相の軽い発言が県民を愚弄しているとの声が強く、「反基地」より「反鳩山」が根にある。

米軍慰留に動き出す県民ら

或る沖縄筋によると、普天間、辺野古の住民らは米軍基地の慰留に積極的であり、米軍駐留を受け入れる声が活発化している。民主党政権は、基地に依存しなくても補助金を出すと喧伝してきたが、いまではその案を信じるものは少ない。当初県民は鳩山・岡田発言に過敏であったが、今では馬鹿呼ばわりしている。

鳩山政権の口先だけの民意尊重のスローガンに辟易し、ついに住民らは動き始めた。既に辺野古では基地受け入れのため、市議会や商工会、各種受け入れ協議会が発足。基幹産業を持たない辺野古では基地移設に伴う補助金やインフラなどの条件次第で住民らの基地受け入れ準備が整っているとの見方もある。

非現実的な政府の県外移設案

これまで米国側は嘉手納統合案で決着を求める岡田外相、辺野古移設を容認する北澤俊美防衛相、県外移設を視野に入れる鳩山首相を始め三者三様の意見に振り回されて来た。しかし米国側は一貫してシュワブ沿岸部に移す移転案か、普天間の継続使用かの二者択一案をわが国に求めている。米軍が鳩山政権の言う県外移設を受け入れないとすれば、この問題は普天間か辺野古に落ち着くしかない。

米国側は、米軍キャンプシュワブ(辺野古)の南方沖浅瀬にV字滑走路を新設する案が最善策としている。この案を辺野古住民の大勢は受け入れつつあり、普天間に集中する米軍の戦力や戦闘機の県外分散を回避したい米国側は戦力を一ヵ所に集中することでより効率的な効果が期待できる。しかも浅瀬だと工費が安く、騒音や危険性を回避できるので好都合だ。

領土紛争や資源問題で、周辺諸国を脅かす中国の行動は深刻な問題だ。これを食い止めるには沖縄の米軍基地が最大の抑止力となる。米国はこの不安定要因に対して素早い対応に乗り出した。わが国は自国防衛を米国に委ね、いまだ憲法第9条の改正もままならず、首相は日本の安全に無関心としか思えない。

沖縄に端を発する政権不信

最近、多くの方々との会話の中で、開口一番「民主党鳩山内閣は左翼リベラルだ」との声を聞く。参院選で民主党が過半数をとれば日教組、自治労等左翼グループが掲げる日本の国体を揺るがす危険な政策が目白押しではないかと危機感を抱いている。

今回の沖縄米軍基地問題ではこうした民主党の左翼イデオロギーグループが中心的役割を果たしている。しかし小沢幹事長らの本音は歴史的転換点の中で、右だの左だのイデオロギーで国家の自国防衛問題を論じるのは危険だと考えている。

米軍基地は国家存亡の砦

沖縄の米軍基地問題は日本国民の平和と安全を守る国家存亡の砦に他ならない。また、沖縄県民にとっても米軍関連の地代収入、補助金雇用、消費など基地経済は生活基盤であった。鳩山首相らの軽い発言で基地問題が二転、三転して来たが、これ以上米軍や住民を弄ぶとすれば許し難いことである。

中国は、尖閣諸島に次いで沖縄が中国固有の領土であると主張し、対日工作はより巧妙化している。さらに中国共産党内の内部資料によって台湾を2012年までに陥落する計画が明らかになった。中国はすでに米国に届くミサイルを開発し、わが国と台湾を標的とする1300基のミサイルを配備している。

ましてや最近のグーグル問題、台湾への武器売却、チベットのダライ・ラマの訪米受け入れなどで米中関係の悪化が一層熾烈になろう。この中国の軍拡を巡って、中国を取り巻く周辺諸国は緊張と厳しさを増している。

中国軍拡に備えるアジア周辺諸国

中国と親しくすることに異論はない。しかし、世界の平和と安全は力のバランスのうえに維持されるものだ。外交とは領土を巡る力の梃入れでいかようにも変化しよう。

米国は世界一の経済大国であり、世界の65%に相当する軍事力を持つ最強国家だ。わが国から米軍が撤退すれば尖閣諸島に中国解放軍がやって来て中国領土となり、沖縄も陥落の視野に入ってくる。わが国の政府や国民にはその自覚すらなく、政治も世論ものんびりムードで中国の軍拡に対する脅威に危機感もない。

わが国の領空権は既に中国に握られ、領海権も潜水艦が中国の65艦に対しわが国は16艦に過ぎず、米軍の第七艦隊や空母がなければ対応できない有様だ。オーストラリア、インド、ベトナム、インドネシアなど周辺諸国は、中国の脅威に備えるため、米国やロシアに潜水艦や戦闘機、海軍基地、滑走路の整備等々軍拡を急ピッチで進めている。

中国台頭に米軍が政策転換

これまで米国は中国との政治・経済関係を重視してきたが、ここに来て中国が米国を脅かし始めた。オバマ大統領は弱腰だとの米国世論も強まり、このままでは支持率低下は免れまい。ついにオバマ氏は強硬な対中姿勢に方向転換を余儀なくされている。

2月下旬、米国防総省からキャスリーン・ヒックス東アジア担当の国防副次官とマイケル・シファー国防次官補が来日した。米国の東アジア戦略方針を鳩山首相に説明し、理解を求めるためだ。米国側の説明によれば、今後大規模な空と海での共同作戦を行う意向で、西太平洋を重点とする米軍の戦略方針の標的は中国だ。反米親中の鳩山首相以下、日本側の関係者は凍りついたと側近らは語っている。

しかし、米軍の沖縄基地は日本の安全保障のためだけではなく、米国の国益とアジア全体の安定を睨んだものだ。米国はアジアの国益を中国だけが独占することを望んでいない。わが国が中国と共存するには米軍の軍事力を借りて軍事的バランスを拮抗させることが、唯一の安全保障体制だと言えよう。

次回は4月28日(水)です。