山本善心の週刊「木曜コラム」  今週のテーマ     日台の新しい船出

2010年03月25日

3月12日、時局心話會一行45名は「海外研修会」のため台湾に向かった。今回は「日本と台湾の歴史と未来」が主なテーマである。講師は12日に李登輝元総統、13日は台湾最大の新聞社「自由時報」の呉阿明董事長という豪華な顔ぶれだ。
李登輝氏の講演内容は“苦境を打破し、未来を展望”―台湾は如何にしてこの世界の変化に対応すべきか―であった。李閣下はこの講演のために27頁にわたる原稿を用意されるという熱の入れように参加者一同熱いものを感じる。後半1時間以上は参加者の質問に一つひとつ丁寧に答えられ、最後は筆者とのやり取りもあり、他では見られないドラマチックで迫力ある講演会は3時間に及んだ。

翌13日は、当年89歳を迎えられた呉阿明氏が元気溌剌と「日本の植民地時代」の生き証人として当時の様子を話された。国内では学べない生々しい証言に参加者の興奮は収まらなかった。台湾は戦前におけるわが日本の歴史観を正す一コマを握っている。

覆る自虐史観

今回の訪台で30代、40代前半の若い経営者たちは強烈な影響を受けたことは確かだ。彼らは戦後の自虐史観に基づく歴史教育を受けた世代である。学校や社会で学んだ歴史観と実際にその時代に生きた人の証言との違いに唖然とし、初めて知る事実に驚きと怒りをあらわにする人もいた。次世代を担う若い指導者たちが正しい歴史観を持てるよう伝承することはわが国の未来を決するとの思いが募る。

これまで中国はわが国の先人たちが侵略戦争を行い、近隣諸国に苦痛と痛みを与えて来たと主張している。しかし歴史的事実は全くの正反対だ。当時のわが国政府は自衛のため中国や台湾、韓国の近代化に資本と技術を投入した。

李登輝氏の講演内容にもあった八田與一氏は台湾で巨大ダム工事と耕作法を教示し、これらの農地改革は多くの台湾人民に食の恵みをもたらした。台湾の未開発地域を開拓した後藤新平氏の功績は、その後台湾発展の礎となる。先の戦争でわが国政府のとった近隣諸国政策は富国強兵策であり、欧米に対抗できる近代化の構築に他ならない。わが国先人たちの偉業にあらためて敬意を表するとともにその労苦に感謝の念を禁じえない。

弊会では、発足以来30余年、海外でのシンポジウムや講演会をその都度開催してきた。「海外研修会」は国内で行われる定期的な勉強会で身に付けた教養の土台を確認する重要な場のひとつである。企業が世界化する中、経営者は政治、文化、歴史、思想、科学という実業と直接関係がない教養なくして健全な大局観を持つことは至難である。

わが国の衰退は、国と国民を代表するリーダーたちによる大局観を失った教養の衰退と同義である。こうした傾向に危機感を募らせた経営者たちが本物の話を聞きたい、正しい情報を取り入れたいとの思いが、今回の価値ある研修会につながった。今や時代は大きな転換点に立っている。

洗脳され続けた戦後世代

戦後わが国の歴史観は自虐的な史観に立つ教育が常態化し、小中学校では純真で真っ白な子供たちを「日本は隣国の中国や韓国に悪いことばかりして苦しめてきた」と真っ赤に染めた。教員らの間で秘かに使われていた内部資料は日本=罪悪論で統一され、これらを主導した代表的な組織のひとつが日教組であることは周知のとおりである。

中国や韓国はかつてわが国が行った戦争を悪と断罪し、さらにわが国政治のリーダーたちも謝罪と反省を繰り返してきたものだ。それらにすっかり洗脳された外務大臣が誕生し、尚更始末が悪い。今回の台湾研修会ではそれらのすべてを覆すに十分な内容であった。

戦争とは領土を巡る争いであり、話し合いによる決着がつかなければ武力を行使するしかない。領土問題ではわが国政治と外交は紛争が起こる前に全神経を集中して対処すべきだ。戦争になれば多くの民間人が巻き添えになるが、戦争で起きた悲惨な結果に対して国際法で罰せられることはない。

南京30万人大虐殺のウソ

更に言えば、当時行われた中国・南京陥落の際に日本軍人が30万人の中国人を殺したとまことしやかに語られてきた。しかし南京陥落当初は市内に約4万人の中国人しかおらず、陥落の3ヵ月後には避難していた25万人以上の中国人元居住者が続々と南京市内に戻ってきたという。では南京で殺された30万人の中国人は何処から連れて来られたというのか。科学的にも非現実的である。

仮に30万人もが虐殺されたとしたら日本に投下された二発の原爆に匹敵するほどの世界的大惨事だが、当時現地に外国人カメラマンも多数在住していたにも拘わらずその目撃証言は一切なく、証拠写真が一枚も残っていないのはおかしい。

南京大虐殺30万人説は東京裁判で一人の中国人による証言がきっかけで、わが国ではあたかも真実であるかのように喧伝されてきたというのが真相だ。中国で使われていた虐殺現場の写真は東中野修道・亜細亜大学教授らの手によって捏造写真であることが解明されている。南京陥落当時市街に転がっていた死体は戦争で撃ち殺された日中の兵士たちであった。

植民地政策が育んだ絆

中韓発の捏造されたでたらめな反日歴史観を、わが国ではそのまま、自分たちの手で次世代の子供たちに教育を施してきた。こうした教育を黙認して来た日本政府の罪は重い。筆者は台湾の植民地時代に関して研究者の資料や議論を重ねて検証してきたが、わが国の植民地政策はいずれも現地で前例のない模範的な成長をもたらした。なぜ、李登輝元総統が親日的なのか。これはわが国植民地政策に対する評価であり、台湾の近代化をもたらした功績と偉業に対する感謝の念に他ならない。

3月13日台北市で「李登輝民主協会」の創立大会が台北市で開催された。李氏は同大会で「台湾民主政治の成熟、強化、本土化に努めるべきだ」と語り、同協会は日米欧など民主主義国家との交流を化して努めるべきだとの設立理念を強調された。これは昨今の台湾政治・経済に極めて重要な政策と理念である。理事長は日本でも知られている台湾経済界のボス蔡焜燦氏である。筆者は李氏から紹介を受けた。蔡氏は企業経営の観点から台湾の未来を考える憂国の士である。日本から安倍晋三元首相からも祝辞が寄せられていた。

求められる日台の軍事的強化

現今、中国の軍拡によって再びわが国にかつてのような危機存亡の時代がやって来た。中国は尖閣諸島や沖縄諸島を虎視眈々と狙い、東ガス田の開発をわが国の領域内で操業中であり、戦争の火ダネを広げつつあるといっても過言ではない。

今や台湾が中国ミサイルの標的となり、軍事的圧力と危機に瀕している。台湾はわが国と同じ“自由と民主主義、法治と人権”を尊重し価値観を共有する関係にあり、日台は米国の後ろ盾のもとに中国との軍事バランスを構築すべきだ。

中国は他国の援助と協力によって経済発展を遂げたが、その資金を軍備増強に使い周辺諸国に脅威を与えている。いまや中国の軍事的標的は日米台だ。これまでわが国は中国経済に対してODA、借款、民間企業の進出などで惜しみなく資本と技術を提供し近代化に貢献した。しかし、中国が軍拡を続ける一方で日米台は軍事予算の削減など軍縮に向かい、その格差は年々拡大している。このままでは中国の軍拡は加速し、日台両国が中国の支配下、従属国家に余儀なくされよう。

日台交流強化に向けて

今、わが国にとって台湾は重要な地域になりつつあるが、国交がないため、両国の交流には多くの障害が存在する。両国間には任意団体や懇親会が多数存在しているが活動には限界があり、他国も台湾の政治問題については中国に気兼ねして何も言えないのが実状だ。それゆえ、わが国と米国は台湾の現状維持が望ましいと言及するにとどめている。それならば、有事に際していかに防衛義務を果たすか、その戦略を民間主導で政治家の動きやすい環境をつくればよい。政治は民が動かなければ何も前に進まない時代だ。

台湾は国際社会で孤立を余儀なくされているが、内外にアピールできる戦略が求められている。国や社会にインパクトを与えられるのは政治の力だ。筆者はこれまで台湾で様々なイベントや交流会を行ってきたが、ここに来て機が熟したとの感がある。これまでの経験に基づいて李登輝元総統の指導を心して仰ぎながら日台が強固な理念と政策を確立することができ、アジア全体の平和と安定につながるとの熱い思いが込み上げる。

次回は4月1日(木)に発行いたします。