山本善心の週刊「木曜コラム」 今週のテーマ     米中G2の行方

2010年03月04日

東アジアは中国の急激な軍拡や北朝鮮の核開発、大量破壊兵器の拡散など、わが国を取り巻く安全保障環境は存亡の危機にあるが、オバマ政権誕生以来日米関係は希薄になる一方だ。ブッシュ前政権と違い、現政権では対日外交のスタッフの姿すら見えず、具体的な対日政策がわが国外務省やマスメディアからも何一つ伝わってこない。

そんなオバマ政権の東アジア政策に関し、中国とのパートナーシップ発言だけが大々的に世界に発信されている。わが国はGDPで一時中国に追い抜かれたが、中国は米国債を大量に売却し、第2位に後退した。しかしこれは台湾への武器売却の反動によるものだ。

オバマ氏がどのように考えようと自由であるが、歴代の米国大統領が日米関係を重視してきたのは同じ価値観を共有するパートナーだからであった。日米が中国を仮想敵国化してきたのは中国が共産主義国家であり、チベット、ウィグルなどの侵略国家であり、現在も軍拡と南シナ海や他国の領土を虎視眈々と狙う覇権国家だからである。

米中二極のG2関係

米国の関係筋によると、ほとんどのジャーナリストや専門家がオバマ大統領は日本に対しては無関心であるとの意見で一致している。その証拠にオバマ政権内部からG2という言葉がしきりに使われている。Gはグループ(GROUP)の略で、G2とは米中二国に限定する国家グループを指す。これは両国の首脳会談で合意に到ったもので、経済関係を中心に核兵器削減をはじめ、テロ問題、中東紛争など世界の主要課題を共に分かち合っていく姿勢を示したものだ。オバマ大統領は選挙中の演説や外交論文でも米中関係の役割と責任について言及しており、米中主導はオバマ外交の基本姿勢である。

しかし、両国の価値観、政治体制、統治方法には大きな溝がある。中国は人権と法治を軽んじる一党独裁国家だ。米中が利益を共有するには、中国がルールを重んじ民主化に近付くことが基本的課題といえよう。

中国の術中に嵌まりつつあるオバマ政権

オバマ大統領は昨年11月に四日間も中国を訪問している。目的は米国債のさらなる購入要請と北朝鮮問題の協力要請とみられている。中国が米国を手懐けるにはこれからも国債を買い続けなくてはならず、それには米国は中国の輸入拡大などバランスが必要だ。

中国側はオバマ大統領の中国滞在中、人民元の切り上げや台湾への武器供与、チベット問題など少数民族の権利に口出ししないことを忠告したとみられる。オバマ氏の演説は強気な発言が多いが、最近では執拗に迫る中国側の脅しのテクニックに萎縮し、中国におもねる姿勢が随所にみられると米紙は批判。対日軍事問題では「今後も米軍の枠組の中で管理し、米軍なしでは戦力を使わせないよう」中国側がオバマ政権に強く要請したともいわれている。

対中外交に弱腰なオバマ政権

こうした風潮を米国世論も不満に感じており、オバマ大統領の弱腰の対中政策に米国のマスメディアは大反発している。その論調の多くは「米中二極G2は決定的に中国が優位に立つ」「米国は中国からさらに借金を重ねようとしている」「対中基本政策である人権、自由、民主化に何も言えないオバマの弱腰外交」「オバマ外交は国益を損じている」等、非難のオンパレードだ。

世界の警察官であり、政治外交に世界一の影響力を持つ米国のへっぴり腰ぶりに、同盟国の間でも「弱いオバマには付いていけない」との声が拡がり始めている。

なぜ、こんな方向に米国が動き出したのか。筆者なりの意見を申し上げると、それはオバマ大統領が外交に素人であるばかりでなく、中国のしたたかな外交政策に全く無知だとの見方もあるが、オバマ氏もしたたかだ。

ダライ・ラマ会談で中国の出方を見る米国

1月18日、オバマ大統領はチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世とワシントンで会談した。オバマ大統領は「チベットの文化的独自性の個性と人権擁護の姿勢を鮮明に打ち出した」と述べている。これに対してダライ・ラマは「最も偉大な民主国家の大統領と会えて非常に光栄だ。民主と自由を先導する米国を常に尊敬してきた」と満足げに語っている。

今回は中国が直接的な対米報復行動に出るかと思われるほど米国の対中刺激政策であった。もし中国の報復行動次第では米国世論は反中に沸き、ダライ・ラマに同情的な欧州諸国の猛反発を招くことは必至である。中国は国益を損じると判断すれば直ちに報復措置を取り止める。中国は攻撃に出ても不利と判断すればすぐ引っ込めるのが得意技だ。今回のオバマ大統領の決断は米政権が毅然とした態度を取れば、中国の恐喝を撃退する有効な手段であることを証明した。

また、オバマ大統領の対中弱腰外交の批判に対し、台湾への武器売却の決断は米国内の強硬派を抑制する効果が見られた。今回の対米恐喝外交は完全なる中国の敗北で終止符を打ち、今では何もなかったかのようだ。

日米同盟が対中抑止に有効

とはいうものの、米中間に利害関係が存続する限りオバマ政権の中国寄り政策は続くだろう。しかし米国が対中2極G2を安定させるにはこれまで通り日米同盟の安定が対中抑止力となる。それには米軍普天間飛行場の移設問題の早期解決が望まれよう。2020年まで東アジアでは紛争が起きないとの見方があるが鳩山政権の米国離れは顕著であり、普天間問題の解決なしに米国の軍事的抑止力がそれまで機能するか、先行きは不透明だ。

中国以外の国々はこれまで通り世界の警察官である米国一極支配、平和のパトロールを望んでいる。米国は他国が永年支配してきた領土に対して「この島は米国固有の領土である」とは言わない。米国は沖縄を返還したり、わが国の平和を軍事力で守ってくれた。

鳩山は盧武鉉と同じ道を辿ろうとしている

東アジアで米国の軍事力が弱まれば海・空は中国の領空、領海となり、事実上東アジア覇権国家が誕生する。東アジアの中国一極支配は他の東アジア諸国にとっても深刻な事態だ。

鳩山政権は安全保障政策で定見を欠き、米国をはじめ東アジア諸国は右往左往するばかりだ。首相は口先で「対等な関係」を強調し、「日米同盟を再検討すべきだ」と気軽に言うが、自国すら守れないわが国が米国と対等な関係とは言えまい。これは韓国の左翼革命政権時代の故・盧武鉉前大統領と同じ政策と考えてよい。韓国の専門筋は、両国の反日勢力は裏で結び付いており、日本の官僚や政治家に化けた外国人工作員や、わが国に帰化した人たちの存在が大きいと指摘している。

今や、韓国の軍事力、情報力、影響力は著しく減退している。在韓米軍は2016年までに韓国から撤退することが決まっている。今では韓国は米偵察衛星からの軍事情報も得られず、国際的な発信力も失っている。米国筋は「鳩山政権はかつての韓国盧武鉉政権と同じで、このままの事態が続くと米軍は日本から撤退せざるを得ない」と語る。

民主党議員の中には旧社会党グループが30名近くいるが、国内外の世論が心配する鳩山首相の周りは反米、親中、平和を信奉するスタッフで固められている。今後、外国人参政権付与問題、夫婦別姓など左翼革命政策が続々と法案化する恐れが見えてきたとの保守系論調が多く見受けられる。

日米は台湾と共通の危機認識を形成すべきだ

中国の軍拡と周辺諸国への圧力は東アジアのバランスを崩しかねない。東アジアの紛争発火点では朝鮮半島とみられてきたが、台湾がやがて浮上してこよう。ますます軍拡を膨張させる中国の軍国主義に対して今後は台湾を加えた日米台連携を強める必要がある。しかし政治も民間も台湾の危機は日本の危機という認識が皆無に等しい、与野党ともに中国に隷属的な姿勢を取り、台湾を無視する姿勢が顕著だ。

中国胡錦濤主席は国内向けには反日姿勢を見せているが、今後10年は日本と台湾との共存共栄が本音だ。中国では2012年には台湾が吸収され、2020年には日本が中国の従属国家になることを前提に工作活動が進行している。

日米連携での課題は安全保障上の脅威となる朝鮮半島と台湾海峡だ。あらゆる危機を想定して米軍と自衛隊が連携して万全の体制を敷き、有事に際して自衛隊は米軍の後方支援を行う。日米安保が万全であれば中国から攻撃を仕掛けてくることはあり得ない。われわれは今後日台の政治家と民間人らによる積極的な政治と経済の交流と議論の場を増やしていくべきである。そうしないと日本の政治は癒着したままで動かないと見る。

次回は3月11日(木)に発行いたします。